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2023年7月28日更新
[専門技術者育てる工業高校②]沖縄工業土木科(那覇市)|県外志向が多め 科集会で情報共有
ものづくりの知識と技術を磨ける工業高校には、さまざまな学科がある。今回は、インフラ整備の技術者を目指す「土木科」、配管や空調に関わる「設備科」、家具や内装を学ぶ「インテリア科」を取り上げる。それぞれの科がある5校に授業内容や進路状況を聞いた。
県外志向が多め 科集会で情報共有
沖縄工業高校(土木科)は
◆県外志向の生徒が多く、進学も就職も、半数以上が県外を目指す。
◆ものづくりコンテスト九州大会の測量部門で、県勢初の最優秀賞。
◆今年度から全学年の土木科が交流する「科集会」がスタート。勉強や進路など、先輩からいろいろな情報をもらいやすい。
※定員は40人。オープンスクールは9月26日(火)を予定。
昨年の進路状況/就職先は沖電開発㈱、㈱國場組、㈱太名嘉組、沖縄総合事務局、那覇市役所、大成ロテック㈱(東京)、㈱不動テトラ(同)、東亜建設工業㈱(同)、㈱甲斐組(神奈川)など。進学先は琉球大学、沖縄国際大学、法政大学、西日本工業大学など。
沖縄工業高校の土木科について、知念豪俊先生は「『地図に残る仕事がしたい』など、意思を持って入学してくる生徒が多い。今年、十数年ぶりに入学した女子生徒2人も一緒です」と話す。
授業内容は美来工科と同じ。「インフラ建設の現場作業の方法も学ぶが、目指すのはそれを計画・設計・管理する人材。そのため、測量と土木施工を両輪としながら、土の種類や質を学ぶ『土質実験』=上写真=や、河川を計画する時の水の流れや水圧などを学ぶ『水理実験』=下=といった研究をする授業もある」。
卒業後は2割が進学、8割が就職するが、そのほとんどが土木の道に進む。さらに「より大きなプロジェクトに参加したい」「県外で技術を磨きたい」などの理由から、半数以上が県外を目指すという。求人は県内外からあり、「沖縄工業には6学科あるが、学校に来る求人の2~3割が土木科に対するもの」と知念先生。
水理実験の様子。水を流して流れ方や勢いを確認することで、川の形状を検討する
測量で九州1位 全国大会へ
資格取得に力を入れており、「2級土木施工管理技士補」は毎年30人ほどが合格。より難関な「測量士補」に関しては、昨年度9人が合格しており、これは学科創設以来、最多だという。
そのうちの一人、桃原諒さん=右写真=は、ものづくりコンテスト沖縄大会の測量部門にチームで出場し、2年連続の最優秀賞を受賞。さらに、7月8・9日に開かれた九州大会でも県勢初の最優秀賞に輝き、11月には全国大会に出場する。
また、今年度からは、学年の枠を超えて土木科全体で交流する「科集会」がスタート。知念先生は「資格試験や進路など先輩から後輩へアドバイスする姿もあった。今後も続けたい」と話した。
わが校のココがイイ!
土木科3年(左から)
桃原諒さん、儀間悠斗さん、喜屋武幸太さん
◆沖縄工業の土木科を選んだ理由
(喜屋武)テレビの特集で、土木が社会のインフラを支えていることを知り、土木に憧れるようになった。高い就職率と進学率、長い歴史にひかれて入学した。
(儀間)最初は建築科と迷った。でも土木科なら、より幅広いものに関わることができ、造ったものが地図などに残っていくと知り、魅力を感じたから。
◆大変なこと、面白いこと
(儀間)覚えることは多いけど、専門分野を学べるので将来的に武器になる。溶接の実習は、穴を開けるなど失敗が多い分、できると達成感がある。
(桃原)たくさんの資格を取れるのがいい。測量も最初は難しかったけど、感覚をつかめてくると楽しいし、誤差がゼロになったときはすごくうれしい。
◆将来の夢
(桃原)大学で土木をもっと深く勉強してから、何十年もかけて造るような大きな構造物の監督をしたい。
(喜屋武)長く残り続けるトンネルや橋などの大きな現場を担当したい。孫ができたときに「ここ、俺が造ったんだぜ」と自慢できるようになりたい。
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撮影・取材/東江菜穂、出嶋佳祐、市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1960号・2023年7月28日紙面から掲載