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2022年11月11日更新
[沖縄]「首里城へ還(かえ)す」 学生の思い世界へ②|専修学校I.D.A
2019年に消失した首里城だが、多くの人の支援を受けて再建が始まった。ことし10月31日~11月3日に行われた「世界のウチナーンチュ大会」では、焼失を免れた女官居室の木材を使った正殿模型と木工製品がお披露目された。県建築士会の呼び掛けで、県内の学生が手掛けた。貴重な材を活用した再建への思いや、収益を「首里城へ還(かえ)そう」と取り組む活動を取材した。
焼失を免れた首里城の木材で木工製品
専修学校I.D.A 「もくもくアニマル」。首里城の装飾などに描かれていたネコ、リス、キリンと、縁起が良いとされる瑞雲をミックス。6パターン作り、カプセルトイにした
歴史を調べ試作重ねて
収益の7割 復興に寄付世界のウチナーンチュ大会の会場で人気だった8種の木工製品は、専修学校I・D・Aの学生19人が企画、製作、パッケージデザインまで行ったもの。若い感性と自由な発想で、老若男女を引きつけていた。
「もくもくアニマル」は城内の装飾や、琉球王朝時代の絵図に描かれた動物をモチーフにしたカプセルトイ。屋根と瓦をデザインしたキーホルダー&キーハンガー「ただいま首里城」も面白い。
学生たちは「首里城を身近に感じさせる」「若者にも受けるアイテム」「世界と沖縄をつなげるモノ」などのコンセプトを掲げ、半年をかけて商品化した。収益の7割を首里城に寄付する。
「ただいま首里城」などを製作した豊里一晟さん(1年)は「首里城らしさを残しつつ生活に溶けこませるのって、実はなかなか大変だった。班のメンバーで議論を重ねた」と話す。同班の石原昌輝さん(1年)は「例えば、このキーホルダーは大きいと携帯しづらいし、小さいと瓦のデザインが目立たない。何度も試作してサイズを調整した」と苦労を語る。
瓦のキーホルダーと屋根のキーフックのセット「ただいま首里城」。コンセプトは、首里城を身近に感じさせること
首里城に関連する数字を入れた「ナンバープレートキーホルダー」
ウチナーンチュ大会で完売
「もくもくアニマル」などを製作した西村歩翔さん(2年)の班は「おそろいで持てて、つながりを感じられるようなアイテムを考えた」。2個セットのお守り「モクが守る」や、水滴をイメージした「龍樋のキーホルダー」も柄違いで4種製作した。
首里城の歴史・文化を伝えることにもこだわった。ナンバープレートキーホルダーに書かれている数字は首里城に関係する西暦。「19-25」は正殿が国宝に指定された年にかけたもの、「20-00」は首里城跡などが世界遺産に登録された年にちなむものだ。
大会中、同商品の販売ブースは大にぎわいで、たちまち完売した。「自分たちが作った商品が世界に散らばったと思うとうれしい」と西村さんは話した。
製作前に首里城公園へ足を運び、世界のウチナーンチュ大会のシンボルマークをデザインした知念仁志さんによる歴史・文化のレクチャーを受けた
木工製品の製作過程
①木材の確認
材料は、焼失を免れた「女官居室」の木材。状態やサイズをチェック。②県建築士会へのプレゼン
各班三~四つの商品を考え、同事業の主催である県建築士会へプレゼン。「9割くらいはOKが出た」と学生
③製作
製品はもちろん、パッケージデザインまで学生たちが考え、製作した
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1923号・2022年11月11日紙面から掲載