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2022年11月11日更新
[沖縄]「首里城へ還(かえ)す」 学生の思い世界へ①|沖縄職業能力開発大学校、琉球大学
2019年に消失した首里城だが、多くの人の支援を受けて再建が始まった。ことし10月31日~11月3日に行われた「世界のウチナーンチュ大会」では、焼失を免れた女官居室の木材を使った正殿模型と木工製品がお披露目された。県建築士会の呼び掛けで、県内の学生が手掛けた。貴重な材を活用した再建への思いや、収益を「首里城へ還(かえ)そう」と取り組む活動を取材した。
焼失を免れた首里城の木材で正殿模型
沖縄職業能力開発大学校、琉球大学
首里城正殿10分の1スケールの軸組み模型。高さ約2メートル、幅約3メートル、奥行き約2・3メートルと、かなり大きい
釘使わず複雑さに苦労
見えない場所に技あり釘を使わずに組み上げた、10分の1サイズの正殿軸組み模型。沖縄職業能力開発大学校(能開大)と琉球大学の学生、延べ16人が約1年半かけて製作した。
最初から参加している琉大4年の我如古和樹さんは「正直、首里城は〝観光地〟という認識しかなかった。模型をつくるために図面を読み解きながら、こんなに複雑な建築物だったのか! と驚いた」と話す。
本物の正殿は華美な装飾に目が行きがちだが、この軸組み模型ではびっしりと立つ丸柱に、規則正しく交差する貫などを見ることができる。「十字に交差しているように見える貫だけど、一方は凹ませている。こういう見えない部分の加工に苦労した」と琉大3年の天願美優さん。
正殿の美しさを支える隠れた技を体感。「多くの人に伝えたい」と力を込める。
丸柱は鉋(かんな)をかけて加工。丸柱のほぞ穴の中を、貫が十字に交差しているように見えるが「一方を凹形に加工している」と天願さん。表からは見えない手仕事が美しい首里城をつくっている
柱、貫など部材千本以上
模型に用いた柱、梁、貫、桁などの部材は千本以上。能開大の松田瑠姫さんは「先生がいないと機械が使えないので、半分は手作業で加工した」と話す。機械を使えば時短になるが、危ないことも。首里城公園内の女官居室に使われていた木材のため、内部に釘が埋没していて、機械の刃が欠けるというアクシデントも何度かあった。
また「しっかり寸法を測って加工しても、湿度の影響や原因不明で組めないということも多々あった。机上の数字だけではうまくいかない。一つ一つの仕口(木材同士の接合部)を何度も調整して、少しずつ形にしていった」と城間音羽さん。
基本的には授業後や休みを利用して作業を進めた。苦労の末、10月31日~11月3日に開かれた「世界のウチナーンチュ大会」会場での展示にこぎつけた。「完成ではないが、見てもらえてうれしい。4日以降は那覇空港の国際線エリアに展示される。完成度を上げるのでぜひ見てほしい」と松田さんは話した。
軸組み模型を制作した(後列右から)琉球大学の我如古和樹さん(4年)、米山真皓さん(4年)、伊波慶洋さん(卒)、天願美優さん(3年)、(前列右から)沖縄職業能力開発大学校の大井秀斗さん、阿波連泰雅さん、城間音羽さん、松田瑠姫さん(全員2年)
軸組模型の製作過程
①他の木材を使って試作 歴史資料から、柱などの寸法を調べて木材を切り出すための資料を作成した。その後、女官居室の木材を使う前に他の木材で試作②部材制作
柱、梁、貫、桁などの部材を資料をもとに1本1本加工していく
③組み立て
組みながら、仕口の調整を繰り返す
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1923号・2022年11月11日紙面から掲載