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2022年4月29日更新

[建築系学科がある工業高校]専門性を磨ける授業|鉄筋|木工|左官|製図|測量

建築業界の人材不足を解消しようと、ここ数年県内あちこちの工業高校で「建築科」が新設されている。設計や施工などの技術・知識も学べる建築系学科の特徴や、同学科を有する5校(名護商工、美里工業、浦添工業、沖縄工業、南部工業)の特色を紹介する。

建築系学科がある工業高校


建築業界の人材不足を解消しようと、ここ数年県内あちこちの工業高校で「建築科」が新設されている。設計や施工などの技術・知識も学べる建築系学科の特徴や、同学科を有する5校(名護商工、美里工業、浦添工業、沖縄工業、南部工業)の特色を紹介する。

[専門性を磨ける授業]

○鉄筋

○木工

○左官

○製図

○測量



工業高校のここがイイ!|実践的な授業で高い就職率

専門性身に付け手に職

工業高校の建築科は、将来の建設・建築業界で活躍する人材を育てることが主な目的。建物の設計をする「建築士」、計画通りに工事が進むよう現場を管理する「現場監督」、大工・左官職人・型枠工といった「職人」などになるため、建設・建築に関わる専門的な知識や技術を学べるのが大きな特徴だ。

県内では現在、五つの工業高校に建築系の学科があるが、授業内容に違いは少ない。座学では、国語や数学、英語などのほか、工業技術の基礎や建築構造、建築法規などの知識を学ぶ。のこぎりや電動工具などを扱う「木材加工」、手書きやパソコンで建物の設計図を作る「製図」のほか、「左官」「測量」「溶接」「鉄筋・型枠」などの技術を学ぶ実習もある。これらの専門科目の割合は、学年が上がるごとに増えていき、実習内容も徐々に難易度が上がっていく。ある工業高校の先生は「何かに特化した知識を学ぶ大学に比べ、幅広い分野の基礎を学べる。特に実習の充実ぶりは工業高校の建築科ならでは」。

ただ、浦添工業のインテリア科は、専門科目に建築法規や構造などがなく、代わりにカラーコーディネートやインテリア計画といったインテリアに関する授業がある。

 

製図の授業の様子。どの学校も授業内容に大きな違いはない
 


卒業後は、就職する人もいれば進学する人もいる。就職でいえば、建設に関する知識や技術を学んだ若い人材ということで、建設会社などから求人があり就職率は高い。「大学卒業後だと採用倍率が高くなるような大手の会社から声がかかることもあるので、メリットを考えて高校卒業後の就職を選ぶ人もいる」

一方で、進学にもメリットがあるという。各学校ごとに大学の推薦枠があり、「普通科はほとんどの生徒が進学するので、推薦枠の倍率も高くなる。工業高校は、就職する生徒も多いので推薦枠に通りやすい」

ほかにも建築科で学ぶメリットとして、先生から「建設業は、暮らしに必要な仕事なので、なくなることがない。特に沖縄は観光で重要なホテルや基地の跡地利用など、建設に関わる人材の需要は今後も続く」「進路が全く違う方向になったとしても、住まいは生活に必要なもの。一戸建てでもマンションでもアパートでも、いつかはきっと役に立つ」などの声があった。


資格取得のサポートも手厚い

どの学校も、建設業界で働く上で役立つさまざまな資格取得に向けて取り組んでいる。取得できる資格の一例を挙げると「2級建築施工管理技士補」「福祉住環境コーディネーター」「建築CAD検定」「建築大工技能士」などがある。

それらの資格を取得できるよう、先生だけでなく、さまざまな業界のサポートもある。その一つが(一社)県建設業協会。例えば、資格取得に向けた講座などを開く「日建学院」と連携し、施工管理などに必要な「2級建築施工管理技士補」の資格取得を支援する。日建学院が一般向けに開いている講座をアカデミック版として提供し、その受講料の一部を同協会が負担する。



資格試験に合格した学生ら。試験を受けるための費用や、対策講座の受講料などを、県建設業協会などがサポートしてくれるので資格が取りやすい



同協会総務部長の久高唯和さんは「高校生の時に資格を取得することによって自信がついたり、就職に有利になったりする。建設業に進むきっかけになってくれたら」と話す。

そのため、現場でのコスト管理などに役立つ「建設業経理事務士」の検定料の一部や、ショベルカーなどを扱うのに必要な「小型車両系建設機械特別教育」の受講料の一部も同協会で負担。学生や保護者の負担軽減につなげている。

また、1・2年生を対象に建設現場の見学会も実施。建築中の建物やトンネルなどの現場を体感することで、実際の雰囲気や魅力、安全に対する意識などを伝えている。

ほかにも、さまざまな団体が担い手を育てるため、工業高校をサポート。プロが学校に来て、知識や技術を教えたりもしている。

久高さんは「業界では、『給料が高い』『休暇がとれる』『希望がもてる』という新3Kが進んでいる。ドローンを使ったり、重機をリモートで操作するなど、働き方も変わってきており、女性の技術者も増えている。建設業の魅力を伝えながら、将来の沖縄の技術者育成に向けてサポートを続けていきたい」と力を込めた。

関連記事
○名護商工(名護市)
○美里工業(沖縄市)
○浦添工業(浦添市)
○沖縄工業(那覇市)
○南部工業(八重瀬町)

 


撮影・取材/東江菜穂、出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1895号・2022年4月29日紙面から掲載

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