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2023年10月13日更新

段差なくせるが生かす方法も|今ある家をバージョンアップ[36]

文・森岡瑞穂/リノベーション協議会沖縄支部会員、(株)アートアンドクラフト

case36「床の段差はない方がいい?」

既存住宅のリノベーションで理想の住まいをかなえようとすると、どうしても段差ができてしまうことがあります。床の段差についての基礎知識とその段差を生かすリノベーション事例を紹介します。
 

◆相談&課題
リノベーションをすると段差ができてしまうと言われました。何か良い方法はありませんか?


段差ができる三つの理由

段差ができる理由は大きく三つあります。まず「床下に給排水管を通すため」。特に排水管は、水圧ではなく、勾配によって水を流すので、壁の中や床下を通す必要があります。床下に十分な空間がなければ、排水管に勾配をつけるために表面に段差ができるのです。

次に「床仕上げ材の厚みの違い」。フローリング、タイル、ビニールタイルなど、それぞれ厚みが違います。そのため、仕上げ材の切り替え部分に小さな段差ができます。

三つ目が「遮音性能」。多くのマンションの管理規約では、フローリングを施工する際に遮音性能の基準が定められています。基準を満たした既製品もある一方、足触りの良い無(む)垢(く)フローリングなどには遮音性能がありません。その場合、遮音性能をもつ床組みの上に施工するため、段差につながります。

床をめくった状態。排水管など、いろいろな管が床下を通っている
床をめくった状態。排水管など、いろいろな管が床下を通っている
 
①あえて段差を残し、ステージのようにしたキッチン。フローリングの下には排水管などが通っている。段差は、見えない仕切りとして空間を分ける役割もある

② 大きな段差を設けて、空間にメリハリをつけた事例。数段上り下りすることで気持ちの切り替えもできる②大きな段差を設けて、空間にメリハリをつけた事例。数段上り下りすることで気持ちの切り替えもできる


床の段差をなくすには?

床の段差をなくす簡単な解決方法は「全てを一番高いところに合わせる」こと。ただし段差が大きければ、その分、床が上がることになるため、天井が低くなってしまいます。また、高さを全て合わせるには、材料費と手間がかかるのでコストアップします。

では、どうすればいいか。それは発想を転換し、高低差をプランに取り込んで、段差をうまく活用すること。そうすることで他にない空間づくりが可能です。

例えば、あえて段差を残しキッチンをステージのようにすることで空間を分ける役割を持たせたり=写真①、大きな段差で空間にメリハリをつけ段差下は収納スペースとして有効活用したりもできます=②。


危険を防ぐ三つのポイント

段差を活用する際、大切なのは「危ない段差」にしないこと。ポイントは三つです。

まずは「高さ」。段差は7センチ以下がつまずきやすいと言われています。小さな段差をつくるなら、思い切って15センチほどの大きな段差にしましょう。段差横に手すり代わりになる棚などを設ければ、大きな段差でもデザインを壊さずに上り下りしやすくなります=②。

次に「仕上げ材」。床の高さが違うのに色や素材が同じだと、段差の存在に気付かないことも。段差部分は色や素材をはっきり変えて視認性を確保することが大切です=①②。

最後に「場所」。扉を出てすぐに段差があると踏み外してしまいます。扉の向こう側には、一歩踏み出せるほどのスペースを確保した上で段差をつくりましょう=②。

リノベでも段差はなくせますが、住まいは特定の人が使うもの。その人が段差を視認しやすく使いやすければいいのです。天井高やコスト、プランなど優先順位を整理して、柔軟に判断しましょう。




執筆者
もりおか・みずほ
自身の希望で(株)アートアンドクラフト大阪本社より沖縄事務所に赴任。沖縄で嫁入りし、リノベーションした住宅で暮らす。電話=098・975・8090


■リノベーション協議会とは 消費者が安心して既存住宅を選べる市場をつくり、既存住宅の流通を活性化させることを目的とした団体。全国800社弱の企業などが参画している。
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1971号・2023年10月13日紙面から掲載

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