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2023年8月4日更新

【5】モルタルって何?|柔軟性備え 補修にも役立つ[マンション修繕のススメ]

文・あかみね かつじ/一級建築施工管理技士
県内のマンションの外壁はモルタルを使ったものが多く、上からペンキを塗って仕上げるのが一般的。そのためモルタルは、ひび割れや爆裂などの補修にも使われる。そこで今回は、モルタルの特徴やセメント・コンクリートとの違いについて紹介する。

 


外壁によく使われる

沖縄県は台風がよく通過する地域で、強風などによる被害を抑えるため、建物には耐久性の高い材料が使われます。その一つがモルタル。マンションをはじめ、県内にある建物の外壁の多くに使われています。

そのため、外壁補修などの際もモルタルを使った「モルタル補修」で傷や損傷を修復します。特にコンクリートやモルタル部分にできたひび割れ・欠損の修復に適しています。


ペースト状でデザイン自由

そもそもモルタルとは何か? 「セメントやコンクリートとは違うの?」という疑問もよく聞きます。

簡単に説明すると、まず、基本の素材となるものがセメントです。粉末状で、そのままでは建築材料として使うことができません。

そんなセメントに、砂、砂利、水などを混ぜたものがコンクリート。セメントと水が反応して硬化し、強固で耐久性があるため、建物の基礎や柱、梁などの構造部分に使われます。

モルタルは、セメントと砂を混ぜたものに水を加えペースト状にしたもの。コンクリートよりも柔軟でデザイン性に優れており、ひび割れ・爆裂をはじめとした補修や、タイルの固定などに使われます。硬化すると強度が出るほか、耐火性もあります。


防水性の低さは塗装でカバー

一方でモルタルには防水性が低いという特徴もあります。そこで大切なのが塗装。外壁などに使われているモルタルも、表面を塗装することで防水性を高めています。

しかし、経年で塗装が劣化すると、その下のモルタルに雨などの水分が浸透。内部に入り込んで漏水が発生したり、鉄筋がさびてコンクリートのひび割れや欠損につながるなど、構造自体の強度が低下する恐れがあります。

また、モルタルの壁によくあるのが「浮き」。モルタルとコンクリートとの間で付着力が低下することで発生します=下図。見た目には分かりづらいため、打診棒などでの確認が必要ですが、これも放置すると雨水が内部に入る可能性があります。

建物の寿命を伸ばすためにも、塗装の塗り替えや、浮き・ひび割れなどをモルタルで補修することが大切。これらは建物の外観を美しく保つだけでなく、構造の耐久性を向上させるのに重要な役割を果たすとも言えます。





 

モルタル補修の一例
モルタルの浮き補修

打診棒で壁などの表面をたたき、通常とは異なる軽い音がすると内部が空洞になっているということ。浮きの範囲が狭い場合など補修が比較的簡単な場合は、表面をはがして=下写真①=モルタルで埋め戻し=②、塗装で仕上げる=③。左官仕上げだと、周囲と違和感なく仕上げることができる。




浮きの範囲が広く、深い場合には「アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法」=下図=を採用。これは、浮きが発生している場所にドリルで穴を開けて、エポキシ樹脂を注入し、アンカーピンを挿入する工法。エポキシ樹脂が硬化することで、アンカーピンと周囲のコンクリートが結合する。




階段手すり補修

劣化したコンクリートを撤去し=写真④、型枠を作ってモルタルで埋め戻した後=⑤、塗装で仕上げる=⑥。






 ひとことアドバイス 

・モルタルは乾燥で収縮するため、築2~3年でも細かいヒビは発生する。すぐに修理が必要なわけではないが、ヒビが広がるのを防ぐためにも築8年ほどを目安に補修や塗り替えなどのメンテナンスを。


あかみね・かつじ/TNOコンセプト(株)・本気でペイント事業部営業部長、一級建築施工管理技士
電話=0800・2000・486

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1961号・2023年8月4日紙面から掲載

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