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2020年7月17日更新

検査済証のないビル 優良物件へ!|今ある家をバージョンアップ[3]

建物は取り壊すにも費用がかかり、そのまま所有していても固定資産税などの支出を生むばかり。次世代に引き継ぐにも負の財産になり得ます。今回ご紹介するのは、オーナーが約7年前に取得したビル。リノベーションでの収益化を計画するも「完了検査を受けていない」ことが大きな壁として立ちはだかりました。

「築古ビルの上層階」⇒「収益生む賃貸オフィスに」

◆相談&課題
築古の鉄骨造5階建てビルの上層階。
完了検査受けていないがリノベ可能?

◆リノベのプロが提案!
申請の必要がない範囲で修繕・用途変更。
エリアに合った貸事務所で周辺と差別化。

建物は取り壊すにも費用がかかり、そのまま所有していても固定資産税などの支出を生むばかり。次世代に引き継ぐにも負の財産になり得ます。今回ご紹介するのは、オーナーが約7年前に取得したビル。リノベーションでの収益化を計画するも「完了検査(※1)を受けていない」ことが大きな壁として立ちはだかりました。
*1)確認申請通りに建物が完成していることを確認する検査。合格すると検査済証が発行される。

大規模改修は完了検査済みが前提

建物の大規模修繕や用途の変更には、役所への申請が必要となる場合があり、その申請は完了検査を受けていることが前提となります。

建築当時(または建築後に確認申請が必要な増改築等)に完了検査を受けていない建物でも、法適合状況調査の上、確認申請をして増改築等を行えば、改めて完了検査を受け、検査済証の取得も可能です。ただし建物図面等がない場合は復元図の用意、また時には破壊を伴う証明行為が必要になるなど、費用も時間もかかり、一筋縄ではいかないものです。

実は多い! 検査済証のない建物

完了検査を受けていない建物は、実はたくさんあります。古いほど多く、国土交通省がまとめた資料によると、1998(平成10)年度の完了検査率はなんと38%。


▲完了検査率の推移
(国土交通省「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」参照)


この状況を打開すべく私たちがたどり着いた答えは、「確認申請が不要な範囲での工事や用途変更を行う」というもの。主要構造部(壁・柱・床・梁など)を半分以上変更しない工事や、建築基準法第6条第1項一号(※2)に該当しない用途変更には、確認申請が必要ないのです。もちろん確認申請が不要でも、建築基準法には適合させる必要があります。そこでマーケティングを行い、法的制約をクリアしつつ投資対効果が最大限になる貸事務所として計画を進めました。
*2)200㎡を超えて、住宅や事務所以外の用途に供される建物の多くがこれに該当し、用途変更には確認申請が必要。

「個性」で競争力を高める!

ただ内装を更新するだけの普通の貸事務所では、次々と現れる新築物件と価格面での競争となり、持続的な収益にはつながりません。そこで、周辺物件との差別化を図るため「個性」で競争力を高めるリノベーションをご提案。エリア分析の結果、フリーランスやクリエーターをメインターゲットに貸室は小さく区画割りし、採光が取れない部分は共用の打ち合わせスペースにするなど、テナントにとって使い勝手の良い機能を備えた設計で、物件の魅力を向上させました。また、内装は引き算を基本に、可能な限り足さないデザインを心がけることで費用を抑えました。このような企画設計がエリアのニーズにマッチし、賃貸募集ではスムーズな入居者決定に役立ちました。

完了検査を受けていないからといって、使っていない空間を放置しておくのはもったいない。工夫次第で収益を生む優良資産にすることは可能です。




リノベーション後の共用部



リノベーション後の貸室




執筆者
もりおか・みずほ
大阪の堺で育った関西人。立命館大学卒業後、Arts&Craftsへ入社。住宅系資格を有するが資格には頼らない仕事ぶりで、毎日奮闘中。沖縄で嫁入りし、地元精通ももう間近! リノベーションした自宅に住む。


Arts&Craftsの強み
1994年設立、日本におけるリノベーションの黎明(れいめい)期から活動。個人住宅のリノベから空室が目立つビルやアパートの再生コンサルティングまで手掛ける。沖縄事務所は老朽化したホテルを再生し運営もするSPICE MOTEL内。
北中城村喜舎場1066 
098-975-8090
https://www.a-crafts.co.jp

リノベーション協議会とは 消費者が安心して既存住宅を選べる市場をつくり、既存住宅の流通を活性化させることを目的に、2009年7月に発足したリノベーション業界団体。全国1000社弱の企業等が参画し、優良なリノベーションの統一規格「適合リノベーション住宅(R住宅)」を定め、普及推進している。その年のリノベNo.1を表彰する「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」も年々注目が集まっている。https://www.renovation.or.jp

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1802号・2020年7月17日紙面から掲載

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