強さと心地良さ両立|(株)デザインネットワーク|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

お住まい拝見

お住まい拝見

2019年1月18日更新

強さと心地良さ両立|(株)デザインネットワーク

[お住まい拝見・外RC造・内木造 自然感じ長く住む]RC造の箱に木造を入れた“スケルトンインフィル”の家は、「木のぬくもりが感じられ、台風でも安心」と満足そうなNさん(31)。室内は光と風に満ち、子どもたちが走り回る。


畳間側からリビングダイニングを見る。写真左に躯体の鉄筋コンクリートの壁が見えるが、室内の梁、階段などは木造で、ぬくもりある空間に。大きな掃き出し窓から通りの様子が伺える


家族とともに変わる家

Nさん宅
鉄筋コンクリート造/自由設計/家族4人

住宅地内の小さな公園から延びる車の通らない緑道に接するNさん宅。北側に緑道、南側に車道があり、東西には住宅が建つ。「土地探しの時から建築士に相談していて、建築を始めてからは単身赴任で離島にいたけれど、安心して家づくりを進められた」とNさんは話す。

外観はいたってシンプルな鉄筋コンクリート造だが、中に入ると、伸びやかな吹き抜けがある杉材で組まれた空間が広がる。まるで鉄筋コンクリートの箱に木造住宅がすっぽりと収まったかのようで、「木造だと台風が心配」というNさんの不安を拭い去り、県外出身の夫人(31)が慣れ親しんだ木造の家のぬくもりがそこにある。


外観からは中が木造の家とは想像できない。南北に大きな開口部を設けて風の通り道に。風が抜ける花ブロックは縦横交互に積まれ室内の目隠しにもなっている

リビングダイニングから南側テラスにつながる掃き出し窓からは、花ブロックを透かして通りの様子が見え隠れする。差し込む日差しがフローリングにキラキラと輝き、「カーテンを閉めるのは寝る時だけ。入り日が強いと思ったことはない」。また、入ってきた風は室内全体を通って吹き抜け、「夏でも過ごしやすい」。木・光・風で「自然が感じられる家になった」と夫婦はうれしそう。


2階南側から1階を見下ろす。どこにいても家中が見える。吹き抜けになっているリビングダイニングの照明は、梁(はり)からつき出す形にして、交換しやすく、風で揺れないよう配慮した

走り回れる“児童館”
間仕切り壁がほとんどなく間取りはシンプル。生活の中心になる部屋は1階にまとめ、西側にキッチン、洗面脱衣室、浴室が一直線に並ぶ。極め付けは、個室がないこと。畳間が家族みんなの寝室だ。

吹き抜けを見上げると、間仕切りが一切ない開けた2階がまる見え。大きな窓からは空も見える。部屋に沿って“コの字”に走り回る4歳と2歳の子どもたちを見て「児童館みたいでしょ」と笑う夫人はとても満足げ。室内だから雨の日も遊べ、服や部屋を「汚されずにすむ」。

夫人の両親が来た時などには一部をカーテンで緩やかに区切って寝室としても使う。子どもたちに部屋が必要になったら、家具などで仕切って部屋を作る予定だそうで、「家族の成長に合わせて変化する家。もうすぐ子どもが生まれて家族が増えるし、変わっていく家を見るのは楽しみ」とNさんはほほ笑んだ。



ここがポイント
木造で改装容易に家の外にも気配り
設計を手掛けたデザインネットワークの一級建築士・島田潤さんは、「沖縄の気候風土と家族のライフスタイルの変化を考えるとこの形になった」と話す。躯体は台風に強い鉄筋コンクリート造、室内は心地よく改装しやすい木造と、造りを分離したスケルトンインフィルの家は、安心して長く住める家を実現した。

地の利を生かし、南側と北側は壁を極力作らず、大開口に。光と風がふんだんに取り込まれ、木の空間と相まってより自然を感じられる空間になった。南側の庇は約180センチと深めに取ることで、照りの強い夏の日差しが室内に入り過ぎないように調整するなど細かな配慮も。

「子どもが走り回れる家に」との夫婦の希望もあり、間仕切りは最低限に。扉は引き戸にして、戸袋に収めれば広々としたワンルームになる。「子どもたちはまだ幼く、家族が増える可能性もある。必要な時に部屋を作れる場所があれば」と、建築時点では個室は設けず、2階まで配管を立ち上げ、将来、トイレなどが設置できるようにした。

南北のテラスは庭のように使えるだけでなく、「道路との緩衝空間に」。夜は花ブロックから部屋の明かりがもれ、道を歩く人たちの足元をやわらかく照らす。「街への配慮も大切」と語った。


リビングダイニングからキッチンを見る。料理をしていても2階で走る子どもたちの足音が聞こえてきそうだ。造り付け収納は取っ手を付ける代わりに板を切り抜くことで、表面は凹凸のないフラットな仕上がりに


寝室として使う畳間は、2階床板があらわしに。「2階の床スラブが省けた分、建物全体の高さが低くなり、コストを抑えられる」と島田さん(写真提供・デザインネットワーク)


「室内でも乾きやすい」という洗面脱衣室は西側に配され、風通しよく広々。子どもたちが思春期になった時のことも考え、引き戸で仕切れるようにした


2階は間仕切りが一切ないワンフロア。おもちゃも木製。南側の一部にカーテンレールが引かれている。屋上、天井裏と西面には断熱材を施した


[DATA]
家 族 構 成:夫婦2人、子ども2人
敷 地 面 積:169.52平方メートル(約51.28坪)
1階床面積:71.01平方メートル(約21.48坪)
2階床面積:40.73平方メートル(約12.32坪)
建 ぺ い 率:50.58%(許容60%)
容 積 率:65.91%(許容200%)
用 途 地 域:第一種中高層住居専用地域
躯 体 構 造:鉄筋コンクリート造
設         計:(株)デザインネットワーク 島田潤、新垣雄生
構   造:(有)建築構造研究所
施     工:(株)ナイソ
電   気:克電気工事
水   道:(有)海西工業


[問い合わせ先]
(株)デザインネットワーク
098-858-2008
http://www.dn-okinawa.com


撮影/比嘉秀明 編集/川本莉菜子・徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1724号・2019年1月18日紙面から掲載

お住まい拝見

タグから記事を探す

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2115

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る