赤瓦の下に涼と開放感|建築設計工房 paraya|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

オール電化|沖縄電力

お住まい拝見

お住まい拝見

2018年8月10日更新

赤瓦の下に涼と開放感|建築設計工房 paraya

[お住まい拝見・築65年を建て替え]今帰仁村のKさん(59)宅は、築65年以上の実家を建て替えた混構造平屋建て。大きな赤瓦屋根の下は、伝統的な沖縄の住宅のように間口が広く、開放的で風もよく通る。


大きな赤瓦屋根が印象的な外観。雨樋(とい)は、建物とともに経年変化が楽しめるよう、銅製を使用。建て替え前と同じにした軒の高さは、体になじんだ居心地の良さにつながっている

 

LDK+αで集いに対応

Kさん宅
混構造/自由設計/家族3人

フクギ並木が残る集落。葉っぱの隙間から、大きな赤瓦屋根がのぞく。Kさん宅だ。「沖縄の風景に合うのはやはりコレでしょ」とKさんは誇らしげに見上げる。木々の緑、空の青と合わせ、沖縄らしさいっぱいの三原色が鮮やかだ。
室内に入ると、天井の小屋組みが目を引くLDKが広がる。庭に面したアマハジの低い軒とは対照的で、LDKの天井高は約4メートル、広さも約26畳ある。隣接する和室やアマハジと一体化させることもでき、「開放的で気持ちいい」と夫人(52)。模合や法事などで大人数が集まっても対応可能だ。
その全体を見渡せるダイニングが、農場を営む夫婦のお気に入りだ。「庭を眺めてコーヒーを飲むのが至福のひと時」と、いくつもの開口部から抜けていく涼しい風を感じながら、仕事で疲れた体を休める。
北側の掃き出し窓からは隣の両親宅が見え、行き来できる通路もある。夫人は「安心感があるし、突然の雨でも母が洗濯物を取り込んでくれる」と助かっているよう。



LDK。右の和室は、県外で暮らす子どもたちが帰ってきたときの宿泊場所として、閉じて使うこともある。奥の掃き出し窓からは両親宅が見える


広さ約10畳もあるロフトへのはしごを下ろした状態。「大きな収納がたくさんあってありがたい」と夫人

 

農家に役立つ勝手口

3年ほど前まで、セメント瓦が乗った昔ながらの間取りの実家で暮らしていた。築65年を過ぎて老朽化が進んでいたほか、シロアリの被害も出ていたため、建て替えることに。「年齢的にも、今やらなければと思った」とKさんは話す。
設計は、「相談しやすいから」と、旧知の仲である地元出身の建築士に依頼。以前の住まいは天井が低く圧迫感があったため、家族は「天井の高い開放的な空間」を強く求めた。
農家ならではの工夫も。大きな靴箱がある勝手口は、農場から帰ってきたとき、浴室に直行できる。「汚れたままでも気を使わずに済む」とKさん。いろいろな場所から出入りできるのも使い勝手がいいという。
しまい込まれがちな家族の写真アルバムを収めるため、リビングには大きくて深い造作棚。「前より手軽に写真が見れる」と喜ぶ夫人は、「北欧系のインテリアにも挑戦したい」。さまざまな変化とともに、アルバムは少しずつ重さを増していきそうだ。



勝手口。畑作業などで汚れていても、靴を脱いだらすぐに左奥にある浴室に行ける


ここがポイント
広い間口から風・視線抜く


ダイニング側から和室を見る。アマハジに面する開口部は合わせると幅5メートル以上となり、室内から庭へと視線が抜ける


Kさん宅があるのは、昔ながらの沖縄の雰囲気が残る地域。そして、Kさん家族が求めたのは「開放的で風の通る、赤瓦の木造屋根の家」だった。
建築士の島袋勝也さんは「地域性と家族の要望を考慮し、間口の広い伝統的な沖縄住宅を意識。全体的に開け放ち、風や視線が抜けるようにした」と話す。
例えば、屋根は小屋組みの見える木造、躯体は補強コンクリートブロック造にすることで、木の雰囲気を出しつつ柱の少ない大空間を実現。LDKの南側は幅3.7メートルの大開口が可能となり、夏の南風をたっぷりと室内に取り込みながら、室内から庭へと視線が抜けるようになっている。さらに、行き止まりのない回遊できる造りで、風が巡るようにしただけでなく、家事動線の効率化にもつなげた。
LDKや寝室などは最大高さ4メートルの小屋組みが見えるようにして、上部への広がりにも配慮。一方、玄関や廊下などの天井は低めにしてメリハリもつけた。
収納は随所に設置。パントリーやウオークインクローゼットがあるほか、キッチンの上には大きな屋根裏空間を生かした10畳ほどのロフト。「屋根裏だと湿気も少なくカビが起きにくい」。
浴室や物干し場などは西側にまとめた。「西日による居室への熱の影響を和らげる緩衝帯となる。湿気のこもりやすい水回りの乾燥を促す効果も期待できる」。
そのほか、北側には半戸外空間や通路を設け、隣に住む両親とのコミュニケーションを取りやすくした。メンテナンスや点検がしやすいよう、床下は一般的な高さの2倍近い85センチもある。



L字型の広いアマハジ。近所の人と腰掛けてユンタクを楽しんだり、「おすそわけ」が置かれていることもあるという


寝室。高窓から光が入って明るい


石垣はクリア塗料でコーティングしており、汚れが付きにくい


[DATA]

家族構成:夫婦、子ども1人
敷地面積:327.83平方メートル(約99.2坪)
1階床面積:118.93平方メートル(約36坪)
建ぺい率:47.27%(許容60%)
容積率:40.89%(許容200%)
用途地域:未指定地域
躯体構造:補強コンクリートブロック造+木造小屋組み
設計:建築設計工房 paraya 島袋勝也、仲宗根篤
構造:比嘉一級建築設計事務所 比嘉喜仁
施工:嘉数組 嘉数明
電気・設備:北部設備サービス 宮城安信、金城匡裕


[問い合わせ先]

建築設計工房 paraya
0980-56-2955
http://www.paraya-architect.com/



お住まい拝見|暮らし方いろいろ!住まいの事例集!|沖縄

撮影/矢嶋健吾 編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1701号・2018年8月10日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
出嶋佳祐

これまでに書いた記事:38

編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

TOPへ戻る