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2015年4月10日更新

家中が遊び場に 25坪をフル活用|アトリエ・ダグ・アーキテクト

沖縄本島中部、古い住宅街の角地に建つ4人家族のGさん宅は、大小さまざまな空間が緩やかにつながり、家中に家族の声が届く。ダイニングを中心にその日の気分で遊び場、寝床も変わる。延べ床面積約25坪をフルに活用。おおらかな暮らしを楽しんでいる。

ムダなく家族にぴったり

Gさん宅(家族4人 自由設計 RC造)


1階、リビング。広がりをもたらしているのが、大きく開いた北東側にある「障子の光壁」。天井まである障子からこぼれる光が優しい陰影をもたらす。「毎朝、障子を開けるのが楽しみ」とGさん夫妻。

共有スペースを多く
玄関を入ると、コンクリート打ち放しの壁とあめ色の木に包まれたLDKが広がる。北東側にウッドデッキのスペース、4畳ほどの和室が続き、北西側に水回りが並ぶシンプルな構成だ。
「どの部屋も家族で過ごせる自由度の高い造りに」との夫妻の希望から、間仕切り壁は最小限。上階のロフトも吹き抜けでオープンにつながる。収納やテーブルも造り付けで、どの部屋もすっきり。「ムダなスペースがなくて、家族4人の暮らしにちょうどいい。中も外もグルリ回れて動きやすいので、家事のストレスが減りました」と夫人。
生活の中心は、ダイニングにある長テーブルの周り。毎日の食事を家族で囲み、食後には作業をする夫妻の横で子どもたちが宿題を広げる。「リビングにソファを置く予定でしたが、ここでも十分くつろげる。この分だとソファは必要なさそう」とGさん。人が集まる機会も多いが「階段やデッキスペースなどあちこちに座れるから客人も気兼ねなく迎えられる」のだそう。

幅70センチでいろんな遊び
子どもの成長を機に家づくりをスタート。2年がかりで希望の土地を見つけ、設計は、Gさんの友人である建築士に依頼した。
想定以上に基礎の費用がかかったため、当初希望していた平屋建てから2層構成にプランを変更するなど調整はあったが、家づくりがとにかく楽しかったという。
「私たちの希望したことを丁寧にプランに反映してくれた。住み始めて1カ月で、しっくり家族の暮らしになじんだほど住み心地も満点」と夫人。Gさんも「ロフトの畳間は、僕が小学生のころに通った映画館の2階の和室がモデル。寝転がると気持ちよくて、あぁ良かったなと思う」とうれしそう。
一方で「家の中に遊び場が増えて、子どもたちのやんちゃぶりが上がった」とも。リビングの大きな窓側に設けた幅70センチのキャットウオークのようなスペースが、子どもたちのお気に入りの場所。おやつを食べたり、寝転がって空を眺めたり、手すりやはしごにぶら下がってみたり、いろんな楽しみを見つけているよう。
「これからは家族で庭の緑を増やしたい。できれば林になるくらいまで」。家族の楽しみは尽きない。 


1階キッチンの隣にある木の風合いが優しいダイニング。家族が1日の大半を過ごす場所だ。中央の長テーブルや収納もすべて造り付け


大きな開口に設けた、幅70センチの細長い空間が、子どもたちのお気に入りの場所。「誤って落ちたとしても危ないことを知る練習になるかなと思っていたら、意外に用心深いみたい」と笑うGさん


ここがポイント
五感に心地いい和室 

 執筆・下地恒(アトリエ・ダグ・アーキテクト) 
当初、Gさんは平屋建てを希望されていましたが、地盤調査で軟弱地盤だったことが判明。さらに基礎や杭工事など建築費高騰のあおりを受けたことから、2階建てで床面積を抑え予算内に収めるよう提案しました。
空間構成の大方針は、単純な家型の箱の中に必要な機能とスペースをきちんと詰めながらも、大らかさが感じられる空間であること。そこで小さな空間を逆手にとり「回遊する動線」を考えて、動線に行き止まりのない家を目指しました。
もう一つ大きなポイントが、2階の和室です。Gさんと僕が育った宮古島には、変わった映画館がありました。2階席がすべて畳敷きで、そこに座って大きなスクリーンを1日中眺めていた。そこはまるで木の上の家の秘密基地のようで居心地が良く、五感をフル稼働させて過ごした事を覚えています。
同級生だった家主さんとの打ち合わせの最中、沸々とその記憶がよみがえってきて、「2階を大きな一つの空間にして、すべて畳敷きにしましょう。そこで皆ゴロゴロしたら…」と話をしました。理解深き家主さんは「それ面白そうね」と話し、心地いい空間が実現しました。
さほど大きくない住宅で、この和室は大きな存在感を醸し出しています。吹き抜けに面して設けた5メートル近くある座卓テーブルは、子どもたちの勉強の場、お父さんの書斎、お母さんの裁縫の場になります。さらに、プロジェクターの映像を吹き抜けのある大きな障子戸(スクリーン)に映し込めば、映画館の特別席にもなる。まさに秘密基地なのです。
まだ実現されていないという「畳敷きでくつろぎながらのプチ上映会」。ぜひ試してもらいたいです。


2階ロフトの和室も家族のお気に入りの場所。日によって、家族の寝室になったり趣味室になったり、多目的に使えるので便利。「ゴロゴロするのが一番気持ちいい場所」とGさん


1階にある茶室風の和室。入り口の高さを抑え、隠れ家のようなひっそりとした空間に。「子どもが成長したらここと納戸を子ども部屋に」と夫人


下地 恒(アトリエ・ダグ・アーキテクト)

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:216.33㎡(約65坪)
1階床面積:62.67㎡(約18.96坪) 2階床面積:21.65㎡(約6.55坪)
建ぺい率:35.44%(許容70%) 容積率:38.98%(許容200%)
用途地域:無指定
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計:アトリエ・ダグ・アーキテクト 下地 恒
施 工:與那城組 與那城 清
電 気:シロマ電気 城間 武次
水 道:国設備工業 国頭 正行
キッチン:(有)MOV   照屋 涼子

[設計・問い合わせ先]
アトリエ・ダグ・アーキテクト
098-836-8813
http://www5.plala.or.jp/dug/

写 真/高野生優・フォトアートたかの撮影
編 集/週刊タイムス住宅新聞編集部

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1527号・2015年4月10日紙面から掲載

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