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2015年1月9日更新

吹き抜けや連窓で 都心でも伸び伸び|羽地仁建築研究所

建築士である羽地仁さんの自宅は、那覇市銘苅の住宅地にある。46坪の敷地に事務所と二世帯住宅を建てた。コンセプトは「狭い敷地の中でも空間を豊かに感じさせる家」。中庭や屋上テラス、リビングから和室まで続く「連窓」が内と外をゆるやかにつなぎ、三世代が伸び伸び暮らしている。

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空間を豊かに活用 

羽地仁さん宅(家族5人 自由設計 RC造)


3階、羽地さん世帯のリビングから和室を見る。4階まで届く吹き抜けと3階の幅7メートルに及ぶ「連窓」の効果で伸びやか

屋上テラスでのんびり
羽地さん宅は4階建て。1階は自身の事務所で、2階が親世帯、3・4階が羽地さん世帯だ。
羽地さん世帯の玄関は3階。道路に面した西側には、LDKと和室などパブリックスペースを配置。扉を挟んだ東側に水回りや物干し場をまとめ、公私の空間をきっちり分けた。
印象的なのが、リビング・ダイニングから和室まで続く西側一面の連窓。外の景色が、パノラマ写真のようにワイドに広がる。LDKは、連窓とリビング上部の吹き抜けが相まって縦にも横にも伸びやか。夫人は「とても明るいし、風通しも良い。夏場はクーラー要らずでした」と採光・通風ともに満足している様子。
羽地さんも、「連窓にはカーテンではなく、バーティカルブラインド(縦型のブラインド)を設置した。光の入り具合が調整できるから、西日も気にならない」と話す。
4階には寝室と屋上テラスがある。約12坪もある屋上テラスは子どもたちの格好の遊び場だ。12歳の長女と7歳の次女の仲よし姉妹は、「縄跳びをしたり、自転車に乗ったりしてる。日なたぼっこしながらゲームをするときもある」と顔を合わせてニッコリ。
テラスは大人にとっても癒やしの場所。羽地さんは軒下に設けたベンチに腰掛け、「ビルの合間を走るモノレールや夜景を眺めています。さながら『都会のオアシス』といった感じ」と笑う。

世代問わず心地よく
以前はアパート暮らしをしていたが、「両親と一緒に暮らしたい」と家造りを決意。子どもたちが転校せずにすむよう、同じ銘苅に土地を購入。1年前に家を建てた。
「三世代で暮らすことから、老若男女問わず居心地よく感じられる空間にもこだわった」と言う。羽地さん世帯の3階、親世帯ともに、LDKから和室、中庭まで床の高さをそろえてバリアフリーにした。
さらに床材や壁材、サッシなども一つ一つ吟味。壁は白、建具は黒、家具や床は茶色とシックなトーンでまとめた。「トータルで見たときに飽きが来ず、時代に左右されない空間になるよう厳選した」と話す。
今後は、「駐車場周りにも緑を増やし、地域に住まいを溶け込ませたい」と語った。


羽地さん世帯の4階寝室から、3階のリビング・ダイニング、玄関を見下ろす。右奥の中庭は、リビングの床の高さとそろえてデッキを敷き、居室と一体感を持たせた


4階の屋上テラスは家族みんなのお気に入りの場所。友人を呼んでバーべキューをすることもあるそう。「軒とベンチの距離が近いから、守られているようで落ち着く」と羽地さん


外観。1階は自身の事務所。「事務所は面積を抑え、家族とお客さんの分、5台の駐車スペースを確保した」と話す
 

ここがポイント
4階はロフト風に 中庭も居室の延長

46坪の敷地の中に、事務所と二世帯住宅を建てるにあたって羽地仁一級建築士は「狭い空間を、いかに豊かに感じさせるか」を意識した。
ポイントは、「縦空間の活用」と「居室と外をつなぐ」こと。
3階のリビング・ダイニング上部の吹き抜けは、開放感を演出するだけでなく、階をつなぐ役割も担う。「4階の寝室は、リビングに面して窓を設けることで、ロフトのような位置づけにした。階は違っても距離は近く、家族の気配を分断しない」と説明する。
リビングから和室まで7メートル連なる連窓も設けることで、横にも広がりが生まれた。
リビング・ダイニングに隣接する中庭は、床の高さを室内とそろえ、かつ全面をガラス張りにすることで外と内をゆるやかにつなぐ。「建ぺい率の関係で居室にすることはできなかったが、リビングの延長として使えるし、採光や通風にも重宝している」と話す。
連窓や吹き抜けの窓は、道路に面した西向き。「道路以外の隣地には将来、建物が建つ可能性が高い。あえて西の接道側に開いた」。西日と外からの視線を遮るため、吹き抜けの窓の外にはルーバーを設けた。
階段や建具にも、空間を伸びやかに感じさせる工夫を凝らしている。階段は踏み面の大きさを互い違いにし、通常の階段の半分の面積で収めた。片方には安全に昇降できるスペースを残しつつ、「見た目にもリズムを出した」と語る。
玄関ドアや居室の扉は天井まで抜くことで圧迫感を軽減。細かな配慮で、床面積以上の広さ感じる住まいをかなえた。


4階の寝室。夫人は、「ルーバーが西日を遮ってくれています」と話す。吹き抜けに面した左手の窓からは3階を見下ろすことができる。羽地さんは「上に居ても下に居ても家族の気配が感じられる」と話す


階段は、面積を抑えるために踏み面を互い違いの大きさにしている


2階、親世帯のリビング。羽地さん世帯の3階と同じ間取り、同じ面積だが、天井が低く落ちついた印象


3階、物干し場から廊下を見る。水回りや子ども室の扉、玄関ドアはオーダーメード。天井まで届く造りにしたのは、狭い空間で圧迫感を和らげる狙いも

[DATA]
家族構成:母、夫婦、子ども2人
敷地面積:152.03㎡(約46坪)
1階床面積:76.19㎡(約23.04坪) 2階床面積:78.90㎡(約23.86坪)
3階床面積:78.90㎡(約23.86坪) 4階床面積:21.97㎡(約6.64坪)
建ぺい率:59.06%(許容60%) 容積率:147.94%(許容200%)
用途地域:第二種住居地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造ラーメン構造
設 計:羽地仁建築研究所
羽地仁、平良和礼(当時)
構造設計:構造企画呉屋
施 工:(株)比嘉組
電 気:(有)新栄電機
水 道:石橋工業(株)
造 園:(有)五光園
キッチン:(有)モブ

[設計・問い合わせ先]
羽地仁建築研究所
098-894-5092
http://www.h‐haneji.com
写 真/高野生優・フォトアートたかの撮影
編 集/東江菜穂

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1514号・2015年1月9日紙面から掲載

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この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

これまでに書いた記事:350

編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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