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2025年11月7日更新

築35年、沖縄のコンドミニアムをリノベーション 国内外を行き来するインテリアデザイナー、琉球風水の理論で空間づくり|こだわリノベ

東京・沖縄・英国を行き来する、インテリアデザイナーのレイチェルさん(70)。約13坪のセカンドハウスを自らプランニングしてリノベーション。「壁紙がインテリアの主役。居心地最高の琉球リゾートができた」と喜ぶ。

癒やしの琉球リゾート
 築35年、コンドミニアムでシニアライフ 
こだわリノベ
 セカンドハウス   全面改修 
 
寝室からリビングにまたがる幅約4メートルの壁を彩る、木枠に囲まれた壁紙が、一枚の絵画のようでひときわ目を引く。リノベ前の壁は真っ白で、手前は和室だった=下写真。朝日が昇り、コーラルピンクに染まる空。「壁紙に描かれた太陽の位置と同じ方角から、実際に日が昇るんです」と楽しげなレイチェルさん。壁紙に描かれたヤシと、棚に飾った植物を組み合わせる演出も楽しい

ノベーション前

 改築前の悩みと希望 
和室が旅館的な雰囲気を助長。設備は老朽化し、動線も不便。インテリアの色・スタイルを自分好みにしたい。

「世界で一番!」
 
玄関を出ると、正面はヤンバルの緑。ベランダからは東シナ海を一望できる。自然がすぐそばに感じられるこの立地が気に入って購入したコンドミニアムホテルの一室が、レイチェルさんのセカンドハウスだ。沖縄、東京、イギリスを拠点にインテリアデザインを手掛け、仕事や旅行で国内外を行き来してきたレイチェルさん。自らプランしたこの空間を「世界で一番、居心地が良い」と笑顔で語る。

リノベのコンセプトは、恩納村リゾートホテルスタイルが始まり。大好きな沖縄を感じる色や素材をインテリアに取り入れ、自然と調和する、自分らしいリゾート空間を目指した。

インテリアの主役は壁一面を彩る絵画のような壁紙。朝日を受け、コーラルピンクに染まる空とヤシの木が描かれている。「コーラルピンクは、私が恩納村に感じるイメージカラー。何を見て暮らすかが、暮らしの心地よさを高めるカギ。この壁紙との出合いでコンセプトは恩納村に留まらず、オリエンタルな世界観へと進化した」と笑う。

居室は、和室をなくしてフローリングに。ベッドは窓際から部屋の中心に移し、落ち着いて眠れる環境を整えた。水回りは使い勝手とデザイン性、玄関からの視線を考慮して、配置と設備を変更。「間取りにもインテリアにも、学んでいる琉球風水の考え方を生かしています」
 
リノベーション前
元々はベランダに面した奥の空間にソファとベッドがあり、リビングと寝室を兼ねていた

開放的でありながら、生活感を感じさせない寝室とリビング。「寝室とリビングの間をカーテンやパーティションで仕切るか、最後まで悩んだ」とレイチェルさん。ベッド頭部側の壁も、アート壁紙を木枠で囲み絵画的に活用。リビングとの境にアーチ状のフロアスタンドを置いて、緩やかに空間を仕切っている


リビングは、シャンデリアでエレガントに。ライトグレーのソファの背後の棚には、英国での暮らしと同じように燭台(しょくだい)を飾り、鉢植えで緑を添える


心豊かな暮らし

10年前、旅行で初めて訪れた沖縄。「肌が合う、ここに住みたい」と、8年前にリゾートコンドミニアムを購入した。当初は一戸建てを建てるまでの仮住まいと考え、施工を伴わないインテリアコーディネートでの模様替えでしのいでいた。しかし、理想の土地に出合えず新築を断念。リノベを決めた。

居室面積約13坪。広くはないが、「生活もお掃除も楽。幸せを感じるインテリアに囲まれ、安心して心豊かに過ごせる。シニアライフにおすすめ」と笑った。
 
リノベーション前
リビングから寝室、書斎を見る。リノベ前は、玄関まで一直線に視線が抜け、落ち着かなかった=上写真。新たに設けたアーチの垂れ壁のおかげで、玄関がうまく目隠しされ、プライベート感が高まった。クローゼットの扉には、リゾートの雰囲気と通気性を考えラタンを使用。天然素材の風合いと、クラシカルなたたずまいのチェストやチェアをうまくマッチさせている



 レイチェルさん宅 リノベのカギ 
「快適な動線計画。インテリアはアート壁紙を起点にトーンを統一」

至福の氣の流れ

沖縄の自然・文化と英国の暮らしを融合した、オリエンタルなリゾート空間を創り出すため、レイチェルさんが用いたのは琉球風水の理論。自宅を美しく快適にデザインしたいと、5年前から学ぶ。

間取りは、氣の流れと陰陽調和で心地よさを高めた。最大の課題は、水回りの視線と動線(氣の流れ)。玄関からトイレのドアや室内が丸見え。氣の流れが速く、落ち着かなかった。そこで「水回りの配置を変更。居室との間にはアーチの垂れ壁を設け、氣の流れを穏やかにしました」。またキッチンは、食事=エネルギー(氣)を作り出す場所。そこが玄関からすぐ見える位置にあると、財が漏れ、家族も不仲になると風水では考えられている。そのため「コンロは玄関から見えない位置を探し出し、配置しました」。

陰陽の調和については、寝室(陰)を、日差しが明るい窓側(陽)から光が穏やかで落ち着く(陰)中心部に移動し、バランスを調えた。「ベッド頭部側の壁紙とフロアスタンドでリビングと緩やかに区分け。開放的でも生活感を感じさせないようデザインしました」

インテリアはアート壁紙を起点に、ファッションで多用するパーソナルカラーを取り入れ、色の陰陽(寒暖、明暗、濃淡、清濁)で全体の調和を図った。「色のアンダートーン(ほんのり隠れているベースカラー)の調和を重視し、大きな壁や家具の色は、自分の肌色に合うブルーベースの色を使いました」。


玄関と水回り。コンロは玄関から見えない位置に収めた。キッチンの奥に洗面と浴室があり、玄関から出入り口が見えないよう仕切り壁を伸ばした​
リノベーション前
キッチン。トイレの扉が視界に入り、料理をする気になれなかった。現在は洗面
抹茶グリーンの壁紙が映える洗面室があるのは部屋の東側。風水の五行で東は木の氣をつかさどり、グリーンや木製の建材と相性が良い。造作の洗面台はチュラルな木扉を組み合わせた。写真左手の白い扉の奥が浴室

 
リノベーション前
玄関。既存の靴箱を取り払い、壁には琉球石灰岩を用いて沖縄らしさを表現。アーチの垂れ壁を新設したことで、リビングにも視線が届きづらくなった
 
リノベーション前
ユニットバスは老朽化もあり少し暗めな印象。玄関を入るとすぐに出入り口が見えた
空間の広さに合わせて施工できるフリーユニットバスを使用。壁のタイルは模様が右上に流れるように配置した


[DATA]
躯体構造:RC造
築 年 数 :35年
居室面積:41.77平方メートル(約12.63坪)
工  期:ユニットバス3カ月、居室6カ月
デザイン・インテリアスタイリング:Marcai Design Ltd 黒石レイチェル
施  工:ユニットバス/(株)小笠原
     居室/(株)HUTURE
壁  紙:WHO 野原グループ(株)
風水指導:東道里璃


[問い合わせ先]
Marcai Design Ltd
reychel@marcai.com
撮影/比嘉秀明 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2079号・2025年11月7日紙面から掲載

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