お住まい拝見
2025年11月21日更新
[お住まい拝見]騒音が激しい米軍基地に隣接…なのに室内は「信じられない」ほど静か 沖縄の3階建て2世帯住宅|(株)クレールアーキラボ
[2世帯住宅 友人も集いにぎやか]
北側に米軍基地があるDさん宅。戦闘機が飛び交う環境下でも高い防音処理により、静穏な住環境で母親と暮らす。不安だった騒音問題を払拭し、ゲストルームも備えた住宅には国外からも多くの親族・友人が遊びにきて、にぎやかな声が弾む。

Dさん宅はコンクリート打ち放しで、3階建て+屋上テラスも備える。左側の米軍基地から騒々しい音がとどろく環境だが、「建築士らと念入りに打ち合わせて理想的な住まいになりました」とDさん一家。目隠しの植栽・レンガ、コの字型の3階テラスは木目が浮かび上がるなど特徴的な外観となっている
基地横でも静穏な家
コンクリ質感こだわり
Dさん宅
RC造/自由設計/家族3人

1階LDKはDさん一家の団らんの場。天井をすっきりと見せるため、照明は間接照明を取り付け、やわらかい明かりが室内を照らす
イタリア出身で香港などを経て、沖縄に新居を構えたDさん夫妻。3階建て+屋上テラスの住宅にDさんの母親とともに暮らしている。
住宅北側には、戦闘機の大きさがほぼ等身大で確認できるほど、米軍基地が隣接。上空を戦闘機が飛び交うのは日常茶飯事だが、「騒音が全く気にならず、静かな空間で過ごせています」と満足げ。近くに暮らす親族が訪れた際には「本当に信じられない」と驚くほどの静けさだ。Dさん夫妻は「人生で一戸建てに暮らすのは初めて。静けさに加え、こだわったコンクリート打ち放しのエレガントな質感や快適な広さもお気に入り。より人間らしく生活を送れています」とうれしそうに話す。

2階・母親の寝室。水回りへ直接行き来できる。引き戸と天井の高さをそろえ、空間に統一感を持たせた
家造りは土地柄ゆえに難航したが、この敷地を購入したのは「親族と海の存在」が理由だった。「これまでは家族との時間は少なかったが、入居後は1階LDKで妻や母、親族と食卓を囲んだり、海外に暮らす友人が泊まりにきたり。生活が一変しました」とDさん。長期滞在ができるようゲストルームを2階の母親、3階のDさん夫妻の生活エリアそれぞれに設けている。「屋上テラスから海を眺めることもできる。季節も涼しくなってきたので、屋上でパーティーを楽しみたい」。

屋上テラスからは米軍基地や西海岸の景色が視界いっぱいに広がる。鉄骨にテントを張り、造作したコンクリートのキッチンや木ベンチなどでバーベキューを楽しむこともできる
部屋をカスタマイズ
確かな防音性に加えて、初となる一戸建ての家造りだったが、「英語が話せるスタッフの方々に恵まれた」とDさんは振り返る。洗練されたコンクリート建築が目に留まり、それを手がけた建築事務所に依頼。「防音性・デザインのほか、生活様式・文化の違いについてやりとりを通して、すり合わせできた」。
日本様式だとDさん一家が思う要素の一つに、部屋の用途や収納などを固定しないことがある。必要な用品・道具を買って、「自分たちで自由にカスタマイズしています」。
騒々しい周辺環境とは裏腹に、落ち着いた空間で家族の絆を強める暮らしは続く。
ここがポイント
配管の穴減らし防音策につなげ

T-4の高性能防音サッシで騒音を遮りつつ、ソファに腰かけながら大開口越しに広がる職人技あふれる庭が見渡せる
Dさん宅の設計で最重要課題となったのは「防音対策」だ。(株)クレールアーキラボの建築士・畠山武史さんは騒音の影響を最も受ける窓を二重とし、高い防音性の仕様に計画。「窓サッシは『T-4(騒音を40デシベル以上シャットアウト)』の防音性能のものを採用しています」。さらに外壁を通常よりも厚くし、配管用などのスリーブ(構造体に空ける穴)の数を最小限にしたことで、「米軍基地に隣接する環境下でも、静かな住まいで過ごせるようにしました」。
騒音対策に限らず、インテリア、造園、外観デザインのプランも手がけ、「一つの建築物として統一感のある雰囲気に仕上げました」と畠山さん。

バランス良くデザインされた1階中庭。植栽と景石を1組とし、三角形を描くように三つ配置した。最も背の高い木がライチの木(写真右奥)
コンクリート打ち放しの外観は仕上げを変えながら、中庭の目隠しにレンガを採用。外構・中庭に植栽を施し、「外からのプライバシーは守り、室内からは広がる緑を楽しめます」。Dさん一家の要望から中庭はライチの木を中心に、バランスを考えた石組みで奥行きと立体感を演出。室内は一家の好みに合わせて、キッチンカウンターは造作し、ソファなどのインテリアをバランス良く配置した。

広々としたLDKは明暗のグラデーションが生まれ、一つの空間にも関わらず多彩な表情を見せる。キッチンカウンターやダイニングテーブルは造作し、使い勝手とデザインを両立
また、世帯間の独立性を保つ空間構成も欠かせなかった。1階は家族が集うLDK、2、3階はそれぞれの居住スペースとし、一段一段浮いたようなスケルトン階段でつないだ。「階層で生活エリアを分けつつも、気配は感じられるようにしました」。

スケルトン階段。細く黒いアイアンの手すりが軽やかにのび、建築要素もインテリアに取り込んでいる

西洋スタイルの水回り。タイルを基調に高級感あふれる仕上げとし、洗面台などは造り付けた
[DATA]
家族構成:夫婦、母
敷地面積:224.84平方メートル(約68.01坪)
1階床面積:102.47平方メートル(約30.99坪)
2階床面積:63.20平方メートル(約19.11坪)
3階床面積:63.20平方メートル(約19.11坪)
建ぺい率:52.01%(許容70%)
容 積 率 :87.11%(許容200%)
用途地域:第一種住居地域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設 計:(株)クレールアーキラボ 畠山武史、比嘉志緒里
通 訳:(株)クレールアーキラボ 照屋綾子、中村ヒューバー海
構 造:一級建築士事務所コバヤシ401.Design room(株)
施 工:(有)仲真組
電 気:東洋電気工事(株)
水 道:(有)ライフ工業
植 栽:(株)クレールアーキラボ造園事業部・KISETSU
インテリア:(株)クレールアーキラボ 佐次田久子
◆問い合わせ
(株)クレールアーキラボ
電話=098・955・1823
https://www.clairarchilab.com
撮影/比嘉秀明 文/市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2081号・2025年11月21日紙面から掲載
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2081号・2025年11月21日紙面から掲載














