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2025年2月7日更新

[お住まい拝見]持たない暮らし満喫|(株)琉球住樂

海を望む高台に、「ニオイも空気感もいい理想の木造」を建てた30代のTさん。引っ越し時の荷物は、家族5人で軽トラック1台分。厳選した物とシンプルな空間で、自然と触れ合い伸び伸び暮らす。

屋根までまっすぐ伸びる大黒柱が印象的な、1階のLDK。壁際に造作してもらったカウンターは、子どもたちの成長に応じて、高さを変えることができる。吹き抜けで開放感を高めた

スッキリQOL高く

Tさん宅
 木造/自由設計/家族5人 

遠くに海を望む八重瀬町の高台。「景色が良く、朝日が見えるのが最高。西日は裏山が遮ってくれるから過ごしやすい」と話すTさん。木造2階建ての長期優良住宅。「3人の子どもが巣立ち、いずれ夫婦で暮らすことを考え、室内の造りはシンプルにしました」。
 

1階の和室とフリースペース。壁に収められている引き戸を閉めれば、それぞれ個室になる。フリースペースの奥に設けた納戸に、家族全員分の服と布団が収まっている
 

1階はLDKと水回りに、寝室と客間を兼ねた和室とフリースペースがある。2階はオープンスペースで、将来は家具で仕切って子どもたちの部屋にする計画だ。室内は物がほとんどなく、モデルルームのようにすっきり! 元々、荷物は少ないほう。「子どもが生まれてから、テレビやソファなど一通りそろえましたが、空間が狭くなり住みづらさを感じていたので、引っ越しを機に手放しました」。

持ち込む荷物の量と寸法に合わせて、玄関とキッチン、洋間の収納を造作。「脱衣室は、布団が丸洗いできるサイズの洗濯乾燥機が置ける幅で、設計してもらった」と夫人。キッチンは、夫婦が好きなネイビーをアクセントにしつらえた。

 

壁のタイルと収納扉を、夫婦の好きなネイビーで統一したキッチン。玄関、1階の居室、庭まで目が届く
 


玄関。壁も踏み台も曲線を生かし、柔らかな雰囲気

1階の洗面所と脱衣室。脱衣室の幅は布団が丸洗いできるサイズの洗濯乾燥機を基準に決めた


週末は、プロジェクターで好きな映画を壁に投影し、家族でムービーナイトを楽しむ。「常に物の見直しをしているので、さらに物が減って洗練された感じ。QOL(生活の質)はむしろ高まっています」とTさん。


開墾から楽しむ

子どもが生まれ、「アパートでは周りに気を遣って、元気に遊ばせられない」と、家づくりを決めた。職場の先輩の紹介で見学させてもらった木造住宅に憧れ、手掛けた建築士事務所に設計を依頼した。

「家づくりのスタートは、土地の開墾でした」と笑うTさん。元々、夫人の親族が所有していた敷地は、木がうっそうと茂っていた。「物価高騰にウッドショックも重なり、予算を考えると自分たちでできることはやろう、と決めました」。建築士の勧めでチェーンソーを購入。使い方を教わり、木を一本一本切り倒した。「大変だったけど、すごく楽しかった。経験値が上がった。ゆくゆくは、自給自足したい」。

今では子どもたちや親族も一緒になって、庭づくり、畑作りを楽しむ。夫人は「子どもたちは、家の中でも外でも伸び伸び。親族との交流が増え、楽しみも安心感も増しました」と笑顔を見せた。



 

ここがポイント

造作収納で利便性アップ

南東側の外観。焼杉の外壁は家族も一緒に焼き目を入れた。ガルバリウム鋼板の屋根には太陽光パネルを設置。庭はTさんの手作り


Tさん宅の敷地は、東側を前面道路に接する旗竿地。地面が分からないほど樹木が茂っていたため、造成費用がかさむことが予想された。設計を手掛けた伊良皆盛栄さんはまず、Tさんに自分で樹木を伐採することを提案した。建物は省エネ性が高く、次世代まで住み続けられるZEH(ゼッチ)仕様の長期優良住宅。「申請手続きや基準に適合しているかの確認などに時間がかかるため、その期間を生かして伐採を進めてもらった。建築費、資材が高騰する中、どうコストを抑え、小スペースで快適に過ごせるかを重視しました」と伊良皆さん。
 

2階のオープンスペース。将来は家具などで仕切って、3人の子どもたちの部屋として使う予定。吹き抜けを通して1階で過ごす家族の気配や声も感じられる


東の遠方に望む海が見えるよう、住宅は駐車場より約1・2メートル高い位置に配置。前方に隣家がなく、視界の開けた北東側の1階にリビングを設けた。リビングとキッチンの上部に据えた、2階の居室はオープンスペース。玄関ホールとダイニングを吹き抜けにし、開放感と空気の循環を高めた。
 

1階フリースペース奥の納戸。1.5畳に家族分の服と布団を収める

 

玄関収納はランドセルやアウター、水筒なども置けるように棚組み。ルンバの基地にもなっている

Tさん一家のミニマルなライフスタイルをより快適にするため、収納は何をどこで使うのか、収める物の種類と量、大きさを細かく聞き取って造作した。リビングの壁に設けたカウンターは、子どもの成長に合わせて天板の高さを変えられるように工夫。「キッチンとダイニングの仕切り壁は、上部に分電盤などを収め、下部は収納にしています」。スキマスペースも無駄なく活用する。
 

[DATA]

家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:539.78平方メートル(約163.28坪)
1階床面積:72.85平方メートル(約22.03坪)
2階床面積:26.49平方メートル(約8.01坪)
建ぺい率:15.98%(許容なし)
容 積 率 :18.41%(許容なし)
用途地域:都市計画区域外
躯体構造:木造
設計施工:(株)琉球住樂 伊良皆盛栄
造作家具:(株)琉球住樂 伊良皆沙彩
             伊良皆杏奈
電  気:(有)山城商工
水  道:(有)海西工業
外部大工:金城工業 棟梁・金城清正
内  装:真内装 棟梁・伊佐真二
鋼製建具:(株)エクセルシャノン
木製建具:(有)照屋木工

問い合わせ
(株)琉球住樂
電話=098・852・6936
https://10raku.co.jp/


撮影/比嘉秀明 文/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2040号・2025年02月07日紙面から掲載

この記事のキュレーター

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比嘉千賀子

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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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