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2024年10月18日更新

[お住まい拝見]昼夜で移ろう風景 堪能|アトリエセグエ

[高さ約4メートルの大開口から望む]Yさん宅は東と西に大開口を設け、豊かな緑を借景として取り込む。片流れ天井のLDKにある大開口は高さ約4メートルで、多彩な景色を切り取る。夫婦は「風で揺れ動く緑や夕焼けなど一日一日違った風景を眺めるのが楽しい」と笑う。

LDKの天井は南から北にかけて傾斜し、最大高さ約4メートル。西側一面の大開口からサトウキビ畑などに視線が抜けて、より開放的だ。南側に設けた高窓から自然光を取り込みつつ、通風と排熱を促し、室内環境を整えている


片流れ屋根で開放感

Yさん宅
 RC造/自由設計/家族4人 

片流れ屋根が特徴的なYさん宅。南側に隣家が建つ以外、3方向にはサトウキビ畑や原生林が広がる。

室内に足を踏み入れると、目を奪われるのがLDKの西側一面にある大開口。最大高さ約4メートルの勾配天井まで伸び、多彩な風景を切り取る。夫人は「太陽の光が燦燦(さんさん)と緑に降り注ぐ風景から夕暮れ、そして夜空。移ろう景色が本当に奇麗なんです」とうれしそうに話す。南側に設けた高窓から自然光が天井に反射し、柔らかい光を取り込む。照明を極力少なくしたため、室内は昼夜で一変。Yさんも「自然の動きに合わせて、生活している感じ。月明かりが照らす雰囲気も趣があって、お気に入り」と笑う。

家づくりは「何十年後も楽しんで暮らせる家」を求め、スタート。土地はYさんの両親から譲り受け、友人だった建築士に設計を依頼した。夫婦は「気心知れた間柄だから砕けた言葉でやりとり。欲しかった勉強スペースや収納は段差を生かして、つくることができました」と話す。


コンクリート打ち放しの壁と木で仕上げたLDK。床材は赤褐色の無垢(むく)材を使い、キッチンの棚などは造作した。また、間仕切り壁の上部にガラスをはめたことで、東側の大開口にも視線が抜ける。夫人は「部屋から部屋へと光がもれ、程よい明かりが心地いい」と話す


横並びで仕事に工作


家族4人が横並びできる勉強スペース=下写真=はオーダーしたキッチンの東側に置き、主寝室に続く階段の段差を巧みに利用。料理を支度しながらでも子どもの様子が分かる。夫婦は「子どもたちは絵や模型など工作に夢中。隣で自分たちは仕事したり、時に一緒に勉強したりして過ごしています」と笑う。
 

高低差を利用した勉強スペース。Yさんは「子どもたちの机に向かう時間が増え、宿題や工作などに一生懸命」と笑う


主寝室=下写真=はLDKよりも高くした分、「東側の眺めも良好」。床下に収納を設け、空間を余すことなく使っている。また、家族間の距離感も重視。LDKの北側に子ども室、廊下を挟んだ南側に小上がりの和室などをまとめ、「心地のいい居場所をそれぞれが見つけて過ごせたら」と夫婦は話した。



夫婦の寝室。床を道路より2メートル高くし、プライバシーを確保。スキップフロアとし、床下はウオークインクローゼットなど収納スペースとなっている


子ども室。北側の景色も楽しめるよう、横幅のある窓を設けた

小上がりの和室は腰かけて洗濯物を畳むことも。客間のほか、親子で始めたバイオリンの練習の場として使っている



ここがポイント
室内に高低差つけ
外部の視線も配慮

 


日が暮れると、LDKは日中とは違う雰囲気に。高窓から差し込む光も青々で、床材やテーブルなどの見え方も変わり、まるでおしゃれなバーのよう


夕暮れの外観。コンクリートの外壁は杉の模様が映るよう仕上げ、片流れ屋根と相まって、スタイリッシュな表情を見せる(写真は建築士提供)

Yさん宅は周囲に緑豊かな自然が広がる一方で、防風林や建物に囲まれていないため、厳しい日差しに長時間さらされる。アトリエセグエの建築士・比嘉俊一さんは太陽の熱や台風の暴風雨など自然の猛威から守り、風景を取り込んだ開放的な空間を目指した。カギとなったのは「屋根の形状」と「高低差を生かした空間構成」。

LDKを中心に東側に主寝室、北側に子ども室を置き、東と西それぞれに大開口を設けた。覆うように片流れ屋根をかけ=上写真、日差しを遮るよう軒の長さを調整。南側には和室や水回りをまとめて緩衝帯とし、熱をLDKと個室に伝えないようにした。比嘉さんは「風は東西の大開口のほかに、子ども室と和室の窓、LDKの高窓と四方に抜け、室温の上昇を防ぐ」と説明する。またLDKと主寝室、子ども室の各壁上部にはガラスをはめた。「完全に壁で仕切らず、抜け感を演出。高さのある室内、緑の借景と相まって、より開放感を感じられる」

【断面図】


外からの視線にも配慮した。道路に面した主寝室の床は敷地から約2メートル(LDKから約1メートル)上げた=断面図。「高低差をつけたことで外からの視線をカット。東側の緑を取り込みつつ、高い位置から西側の風景も眺められるようにした」と比嘉さん。

玄関アプローチ。床は石調のタイルで仕上げ、コンクリートのベンチを設置。向かい合う収納棚は木で造作した
 

[DATA]
家族構成:夫婦2人+子ども2人
敷地面積:423.22平方メートル(128.02坪)
1階床面積:122.15平方メートル(約36.95坪)
建ぺい率:28.87%(許容200%)
容積率:37.55%(許容60%)
用途地域:指定なし
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式
設計:(株)アトリエセグエ 比嘉俊一
構造:(株)黒岩構造事ム所
施工:琉幸建設(株)
電気:(有)南光電気設備
水道:(株)トップライン
キッチン:MOV

問い合わせ
アトリエセグエ
電話=090・8406・8504
https://seguearchitects.jp/


撮影/桑村ヒロシ 文/市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2024号・2024年10月18日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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