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2024年8月16日更新

[お住まい拝見]いにしえの造り現代的に|コバヤシ401.Design room

[玄関なく 木の大窓が入り口]
平屋でシンプルな箱形のGさん宅は沖縄の古民家さながら玄関はなく、南側に設けた4枚引きの木の大窓から出入りする。大窓を開ければ軒の深いアマハジテラスとLDKが一体となり開放的。風も視線も抜けて、夫婦は窓から緑を眺め、のびのびと暮らす。

南側から見た外観は4枚引きの木の大窓が印象的。軒の深いアマハジテラス(中央)からLDKだけではなく、左右にある夫婦それぞれの個室(アシャギ)にも行き来できる。Gさんは「窓を開ければ、風は通り抜けるし、外と室内が一体となり開放的。友人らを招いて食事や談笑を楽しんだ」と話す


緑地帯を臨む木の大窓

Gさん宅
RC造/自由設計/家族2人 

道路からの入り口が狭く奥まった敷地に建つGさん宅はシンプルな箱形の平屋。間取りは「開放感」を重視し、LDKの南北に隣接する軒の深いアマハジテラスから直接、室内に入るスタイルを採用した。室内外が緩やかにつながり、風が通り抜けていく造りは洗練された沖縄の古民家のよう。
 

LDK。横幅6メートルの大窓が緑地帯の景色を切り取る。視界を良くするため、Gさんは木サッシだけではなく、網戸に張る網の色や太さまでこだわった
 

4枚引きの木の大窓は左右の一方に寄せたり、中央を開けたりと自由に開閉できる。テラスの両脇にあるそれぞれの個室への行き来も楽
 

LDKだけ天井高を2.7メートルにし、縦にも広がりを持たせた。南北に隣接するアマハジテラスと室内の一部は同じ床材を使用。小林さんは「内外がより曖昧になる効果を狙った」と話す


室内で一段と目を引くのがリビング南側の全面に取り付けられた木の大窓。「見た目のかっこよさにひかれ、オーダー。眺めがよくなるように工夫した」とGさん。例えば、木サッシは横桟(ざん)(窓など建具の横方向に組まれる材)をなくし、ロ型の外枠だけに。そのため、大窓を開けずとも深いアマハジ空間のテラスと庭、その向こうにある緑地帯が視界いっぱいに望める。夫婦は「テラスの軒が長いため、室内が日陰に。のんびりと緑地帯を眺めるのが気持ちいい」とうれしそう。木の大窓に向かい合う小上がりの和室が絶好のビューポイントとなっている=上写真
 

Gさんの個室(上)と夫人の個室(下)。平日はテレワークで仕事をして、休日にはそれぞれの趣味を楽しむアトリエに変わる。Gさんは「暮らし始めて太陽の動きを意識するようになった。日の動きに合わせて生活リズムが整い、自然と規則正しい生活が送れている」と話す

 

仕事はかどる離れ


設計は「機能性もデザインも全てがステキだった」と夫人が見学会で一目ぼれした建築士に依頼した。家造りはコロナ禍の真っただ中にスタート。夫婦は「共働きの私たちのため、テレワークがしやすい提案も助かった」と話す。

個室兼仕事部屋は南側のテラスの両脇に設け、LDKからは一度テラスに出ないと行き来できない。「LDKとは対照的におこもり感のある空間に加え、外に出る動きで気持ちにメリハリがつき、仕事に集中できる」。現在は出社する回数も増えたというが、「休日には絵を描いたり、ギターを弾いたりとそれぞれの趣味にも没頭できる」と自分時間も満喫中だ。

今後は時間を見つけて、「南側の緑地帯になじむように、庭づくりをしてきたい」と夫人はほほ笑んだ。



ここがポイント
南北の抜けを意識
風入れ視線・熱防ぐ

 

南側の庭から見る。玄関はなく南北どちらからでも出入りできる。奥には畑があることで道路からの視線は遮られている


Gさん宅は東西に隣家、北側に畑を挟んで道路、南側に緑地帯が広がっている。敷地条件から建築士の小林進一さんが意識したのは「南北の抜け」だ。

まず、畑と緑地帯を結ぶ軸線上にGさん宅を配置。東と西それぞれ水回りや寝室などをまとめ、その間に生まれたスペースがLDKに。南と北に軒の深いアマハジテラスを隣接させ、木の大窓で内外を仕切りることで=上写真、風の通り道と広がりを確保した。「特に南側は緑地帯と降り注ぐ陽光が際立ち、沖縄の伝統的住宅のように『明るい外』と『暗めの室内』とのコントラストが鮮明に。明暗のある落ち着いた住空間を計画した」と説明する。

一方、東西の空間はあえて閉鎖的にすることで西日などの熱を抑えて、室内の暑さを軽減している。北側のテラスは将来、畑に建物が建つことも想定し、木の箱=下写真=を設置。外からの視線をカットしながらも、室内側は腰掛けられる小上がりの和室として有効活用している。
 

北側の外観。隣の畑や道路からの視線を遮る木の箱は雨がしのげるよう軒下に配置。ベイスギを使い耐久性にも考慮している


施主がこだわった木窓を破損させない配慮も光る。「素材によって、建具の高さを調節しないと強風による横からの力に耐えらず、不具合が起きやすい」と小林さん。そのため、採光量を計算しながら、木窓や軒の高さも決めた。さらに防風ネットが張れるよう、軒天にネジを取り付けた。

また個室を南側のテラスの両脇に設け、テレワークでも働きやすいように。「アシャギ(離れ)のように配置することで、自然に外に出ることを誘導。住職一体となった暮らし方で気持ちのオン・オフが切り替えられたら」と考えた。同時に夫婦間のプライバシーの確保にもつながっている。



[DATA]
家族構成:夫婦2人
敷地面積:361.60平方メートル(約109.38坪)
1階床面積:94.03平方メートル(約28.44坪)
建ぺい率:32.03%(許容50%)
容積率:26%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式
設計:コバヤシ401.Design room
   小林進一 菊地彩加
構造:コバヤシ401.Design room
施工:(株)徳里産業
電気:(株)山空
設備:(株)サイオングループ


問い合わせ
コバヤシ401.Design room
電話=098・923・4578
https://kobayashi401.com/


撮影/高野光・フォトアートたかの 文/市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2015号・2024年08月16日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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