お住まい拝見
2020年9月25日更新
LDも畳でくつろぐ|久友設計(株)
〔お住まい拝見〕うるま市の住宅密集地に、広い駐車場のある2階建て住宅を建てた40代のTさん。家族が一番くつろげる畳のスペースをLDに設け、明るく開放的な床座の暮らしを楽しむ。
1階のLDK。中央に設けた約3畳の畳スペースが、家族のくつろぎの場になっている。リビングは天井高4メートル。天井高の違いを生かして、ダイニング上部の壁に開口部を設けていて、2階に家族の気配と風を届ける
密集地でも明るく集いやすく
Tさん宅
RC造/自由設計/家族5人
ダイニングからリビングを見る。東側の庭に面して設けた掃き出し窓の外にはデッキが続く。高窓からも自然光を取り込み、明るく開放的
集いを大切に
「住宅密集地なので、行事ごとで親族が集まっても不便がないよう駐車場を広く取りたくて、2階建てにすることにしました」とTさん。室内も、家族の集いとくつろぎを重視した造りにこだわった。
1階は、LDKの東側にデッキスペース、南側に和室があり、掃き出し窓や障子を開け放てばひと続きで使える。
LDKで目を引くのは、3畳の畳スペース。「畳が一番くつろげる。子どもたちも、家にいるときはほとんど、リビングで一緒に過ごしています」
アパート暮らしの頃から、ソファを背もたれにして床に座って過ごすことが多かった。そのため、壁面のテレビボードも、床座で見やすい高さで造り付けた。
「実は、設計段階では、ソファを置くつもりでした。でも、ソファを使わない生活のほうが、空間も広く、自由に使えていいと、暮らし始めて改めて思いました」と夫人は笑う。
キッチンは、複数人で立っても作業がしやすいように広く取った。背後にまとめた水回りのおかげで、「家事が楽になった」と夫人。「子どもたちの洗濯物が多いので、風が通り、天候も時間も気にせず干せる室内物干し場は、すごく助かっています」
外観。リズミカルにちりばめられた大、中、小の正方形の開口部や、ブラウンに塗ったコンクリートのルーバーが、デザインのアクセントになっている
個室は小さく
3人の子どもたちが成長し、家を建てようと土地探しから始め、20年来、交流があり、信頼を寄せていた建築士に設計を依頼した。
家を建てたのは、夫人の父親所有の土地。「当初、建築を考えていた土地より狭くはなりましたが、娘の学校にも近くなったのでよかったです」
最初は平屋を考えていたが、途中で敷地が変わったことで、2階に子ども部屋を設けるプランに変更。「長男(22)、次男(16)、長女(12)の部屋は、寝るだけの小さなサイズにしたので、スタディーコーナーを別に設けた。リビングに面した開口部から声も気配も届くので、お互い安心」
リビングを中心に、家族のつながりは深まっている。
和室。古典音楽をたしなんでいたTさんの父の形見の三線を飾るために設けた床の間の壁紙は、沖縄と和をイメージしてTさんが選んだ
ここがポイント
高天井のリビング 光・風・気配通す
住宅密集地に建つTさん宅の敷地は、南側を前面道路に接し、北側には3階建てのアパートが近接。東西の隣地は駐車場だが、将来、建物が建つことが予測され、前面道路の向かいには2階建て住宅が立ち並ぶ。設計を手掛けた建築士の久田友一さんは、「外からの視線を遮ってプライバシーを確保しつつ、自然光と風を感じられる住まいにするかが、一番の課題でした」と話す。
要になるのは、天井高4メートル、吹き抜けになった1階のリビングだ。建物東側の庭に面して掃き出し窓を設け、その上部と南側は、開閉式の高窓を配置。天井高の違いを利用して、ダイニング上部の壁の一部に木製格子をはめ込んだ開口部を設け、2階へも光と風を届ける。開口部は、2階のスタディーコーナーの足もとに位置するため、上下階で声や気配を届け、家族をつなぐ役割も担っている。
窓の配置も工夫。「前面道路のある南側は、目線より上の小窓や地窓にし、北側は、隣家の開口部と位置をずらして設けています」
また、隣家上階からの視線を遮るため、デッキと掃き出し窓のある東側は1.7メートル、北側は1.4メートルと、庇(ひさし)を深く取った。庇は南側まで一体的につながり、東側の角を斜めの柱で支えることで、外観のアクセントにもしている。
次男と長女が使う2階のスタディーコーナー。天井いっぱいまで棚を設け、収納量も十分。壁の下部がリビングとつながる開口部
子ども室。右端の収納は可動式で、二つ設けたドアの間に移動すれば、2部屋に仕切ることができる
広々とした洗面・脱衣室の奥に、室内物干し場がある。採光も風通しもよく、大量の洗濯物を乾かすのに重宝している
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:243.34㎡(約73.61坪)
1階床面積:91.67㎡(約27.73坪)
2階床面積:32.94㎡(約9.96坪)
建ぺい率:42.29%(許容80%)
容積率:51.21%(許容360%)
用途地域:商業地域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設 計:久友設計(株) 久田友一、高里毅
構 造:ライフテクト
施 工:(有)三成工業
電 気:(有)丸一電気工事社
水 道:(有)協進
〔問い合わせ先〕
久友設計(株)
☎ 098・974・4327
http://www.hisatomo-p.com/
撮影/高野生優(フォトアートたかの) 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1812号・2020年9月25日紙面から掲載