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2023年10月13日更新

テラス越しに姿感じ|一級建築士事務所 大城禎人建築設計事務所[お住まい拝見]

[住宅地に建つ二世帯住宅]
住宅地に建つMさん宅は母と暮らす二世帯住宅。建物と建物の「隙間」を生かし、南西側に吹き抜けのテラスを設けた。テラスは光と風、緑を取り込むだけではなく、世帯間を緩やかにつなぐ。

1階にある親世帯のLDK。2、3階にはMさん家族4人が暮らす。1階のリビングは天井高2・9メートルと高くし、窓の高さも天井高と同じものに。柔らかい光を取り込みつつ、2階にある子世帯のルーフテラスとのつながりも持たせている
1階にある親世帯のLDK。2、3階にはMさん家族4人が暮らす。1階のリビングは天井高2・9メートルと高くし、窓の高さも天井高と同じものに。柔らかい光を取り込みつつ、2階にある子世帯のルーフテラスとのつながりも持たせている
 

月光も楽しむ

Mさん宅
 RC造/自由設計/家族4人+母

那覇市の住宅密集地に建つMさん宅は3階建ての2世帯住宅。1階は母が暮らす親世帯、2、3階はMさん家族4人が暮らす子世帯となっている。玄関は完全に分けたが、南西側にある吹き抜けに世帯をつなぐよう上下にずらしてテラスを設けた。

2階にある白を基調とした子世帯は、リビングが吹き抜けで開放的。ハウスダストなど子どもの健康のため、室内にカーテンの設置は考えていなかったという。「ほこりなどがまうことなく、室内は清潔に保てる。カーテンがない分、視線も抜けて伸びやかに過ごしています」とMさん。

1階の親世帯はアースカラーのしっくい左官仕上げ、2階とは違う雰囲気が漂う。テラスを囲むようLDKがあり、高さ2・9メートルのリビングの窓が印象的だ。普段はリビングの椅子でくつろぎながら植物観賞を楽しみつつ、「天井まで伸びる窓から2階のルーフテラスで過ごす孫の姿も見えます」と母。また住み始めて「太陽や月の光」も楽しみの一つになったという。「日中は壁に日差しのラインが通り、夜は月光が室内を照らしてきれいですよ」。

2階にある子世帯のLDK。手間のDKと奥のリビングには段差を設け、腰掛けられるようになっている。写真右側はルーフテラスがある
2階にある子世帯のLDK。手間のDKと奥のリビングには段差を設け、腰掛けられるようになっている。写真右側はルーフテラスがある

2階にある子世帯のキッチン横にはスタディースペースを設置。長男が好きな恐竜の絵や模型をつくって遊ぶ
2階にある子世帯のキッチン横にはスタディースペースを設置。長男が好きな恐竜の絵や模型をつくって遊ぶ

北側外観。「前面道路側の高さを抑え、周囲への圧迫感を軽減した」と建築士の大城さん

北側外観。「前面道路側の高さを抑え、周囲への圧迫感を軽減した」と建築士の大城さん
 

2階のテラスからは1階のテラスとリビングが見える



人目気にせずBBQ

家づくりはMさんの姉家族が住む近くに土地を購入しスタート。十年以上前から母が知り合いだった建築士に設計を依頼した。母は「気心知れた中で相談もしやすかった。室内の雰囲気に合うよう、家具まで一緒に選び、造作もしてくれた。終の棲家として申し分のない出来栄えになりました」と満足げ。

2階のコンクリートベンチ付きのルーフテラスは「取り入れてみたかった」とMさんが希望したもの。「以前住んでいた家では難しかったバーベキューも、人目を気にすることなく楽しんでいます」と家族団らんの様子が伺える。

母が植物に水やりをしていると、孫が2階から声をかけることも。テラス越しに互いの姿を感じつつも、それぞれが思い思いの暮らしを楽しんでいた。
 

1階の廊下からLDKを見る。手前から奥にかけて明るくなり、視線が自然とテラスへ向かう1階の廊下からLDKを見る。手前から奥にかけて明るくなり、視線が自然とテラスへ向かう
 


1階のエントランス(写真上)は高さ約3.2メートルで、廊下(写真下)は2.1メートル。エントランス→廊下→LDKへ進むにつれて天井の高さに加え、明るさも変化している
 

2階にある子世帯のルーフテラス。住宅間に開いた隙間に合わせて、開口部を設けた。開口部の奥から親世帯のテラスが見下ろせる2階にある子世帯のルーフテラス。住宅間に開いた隙間に合わせて、開口部を設けた。開口部の奥から親世帯のテラスが見下ろせる

 


ここがポイント
隙間から光と風 明暗差で奥行き

敷地は北側に前面道路、ほか三方は住宅に囲まれている。設計にあたり、建築士の大城禎人さんが着目したのは、南西側にある住宅2軒の間を抜ける「隙間」。「地区計画条例で隙間に建物が建つことは今後ない。そのため、その隙間の延長線上に立体的なテラスを設けて、各世帯のLDKが隣接するよう配置。風と光を取り込んだ」と説明する。

室内は密集地でも広がりのある空間になるよう計画。「部屋の天井に高低差をつけつつ、光による明暗のコントラストで奥行きのある空間になるようにした」と大城さん。例えば、1階の親世帯はLDKまで延びる廊下を天井高2・1メートルに抑えつつ、ダイニングの高さを2・5メートル、リビングを2・9メートルに調整した。「あえて洞窟のようなこもった廊下から高さのあるLDKへつなぎ、視線を光が降り注ぐテラスへ誘導。実際よりも広く感じられるようにした」。ただし「単に間延びした空間だと、居心地のよさにはつながらない」。そのため構造体である柱・梁(はり)などを生かして、門型のフレームを形成。「フレームが視線を遮ることなく、部屋を仕切る役割を果たして、空間にメリハリを与えた」

2階の子世帯は天井高2・4メートルのダイニングと約4メートルのリビングとで高低差をつけている。軒で直射日光が差し込まないようにしつつ、テラスの壁に反射させて、室内に柔らかい光を取り込んだ。「カーテンが必要ないうえに、室温の上昇が抑えられ、快適な住環境となっている」。



[DATA]
家族構成:夫婦+子ども2人、母
敷地面積:203.56平方メートル(約61.5坪)
1階床面積:86.04平方メートル(約26坪)
2階床面積:87.41平方メートル(約26.5坪)
3階床面積:40.50平方メートル(約12.3坪)
建ぺい率:49.59%(許容50%)
容積率:105.10%(許容150%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:一級建築士事務所
大城禎人建築設計事務所 大城禎人
構造:Lifetect一級建築士事務所 宮里尚志
施工:(株)金城組
電気:日章電気工事(株)
水道:(株)琉泉設備

問い合わせ
一級建築士事務所 大城禎人建築設計事務所
メール=oshiro_y@osr-archi.com
インスタグラム(yoshito_oshiro
 


撮影/比嘉秀明 文・市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1971号・2023年10月13日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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