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2023年6月23日更新

大屋根支える大黒柱|(株)東設計工房[お住まい拝見]

[音楽あふれるLDK]
西原町の松村正彦さん・真実子さん宅は、赤瓦屋根が載った混構造の平屋。チャーギの大黒柱が見守る開放的なLDKには、毎日さまざまな音楽が流れ、家族を楽しませている。

大屋根支える大黒柱|(株)東設計工房[お住まい拝見]
LDK。広さ24.6帖、天井高は最大4.3メートルで開放的。中央にそびえるチャーギの大黒柱が大きな屋根を支えている。左手の大開口や高窓から光が入り、室内は明るい


天井高4メートル超の大空間

松村さん宅
 混構造/自由設計/家族5人 

車1台分ほどの狭い通路を抜けると、パッと視界が開け、大きな赤瓦屋根の平屋が現れる。松村さん宅だ。

LDKは広さ24.6帖で、木造屋根の骨組みが見える天井は最大高さ4.3メートル。幅3.5メートルの大開口を開ければぬれ縁と一体化させることもできる、開放的な空間だ。

その大空間を満たすのは、クラシックをはじめとしたさまざまな音楽。中学校で音楽を教える夫の正彦さんは「職業柄、音にはこだわりたかった。よく響くので、映画を見るときなど日常的に楽しんでいます」と満足そうに話す。

中央には直径15センチを超える大黒柱。大屋根をどっしりと支えるだけでなく、長男の尚彦さんが読書するときの背もたれになったり、双子の桜子さんと実桜さんが登って競うこともある。家の中心で家族を見守っているようだ。

そんな様子を妻の真実子さんはキッチンから眺める。「ここにいたらLDKはもちろん、子ども室の奥まで見えるし、外の通路から誰かが帰ってくるのも分かるんです」。家中に目が届くキッチンも、大黒柱と同様に家族を見守る家の中心となっている。

外観|(株)東設計工房[お住まい拝見]
外観。花ブロックの塀と大きな赤瓦屋根が沖縄らしさを演出している

 

ぬれ縁から見たLDK|(株)東設計工房[お住まい拝見]

ぬれ縁から見たLDK。右手にある書斎との仕切りが上部だけガラスになっているため、奥まで梁(はり)が続いているように見え、より広く感じる


転勤中に家造り

「いずれは家を建てたい」と思っていた夫妻が本格的に家造りを始めたのは3年ほど前。きっかけは正彦さんの転勤だった。「家族も一緒に離島に行って、本島内のアパートを引き払っていたので、その間に家が完成すればと思った」と正彦さん。設計は、正彦さんが幼い頃に暮らしていた家の近くにあった事務所に依頼した。「赤瓦屋根とコンクリートの壁の混構造の事務所で、当時からかっこいいと思っていました」と話す。

当初は真実子さんの実家を2世帯住宅にする案もあったが、その裏の土地が売りに出たことで、購入し平屋を建てることになった。

真実子さんは「大きな窓は実家に向いているので、カーテンを開けていても気にならない。実家との間には駐車場もあり、ほどよい距離感になっています」と笑顔を見せる。
 住み始めて1年。最近は「毎週やる」ほど、庭でのバーベキューにはまっている一家。「次はぬれ縁にハンモックを置いてのんびりしたり、屋上に柵を設けてビアガーデンスペースにしたい」と楽しく暮らす夢が膨らんでいる。
 

ぬれ縁|(株)東設計工房[お住まい拝見]
ぬれ縁。幅3.5メートルの窓を開け放てば、LDKと一体化して使える

寝室|(株)東設計工房[お住まい拝見]
寝室。真実子さんは「窓の外に見えるのは実家なので、カーテンを開け放しても気にならない」


 

ここがポイント
実家の一部を減築
道幅を2メートル以上に


松村邸が建つ土地はもともと、2メートル未満の進入路が1カ所あるだけで、周りを他の土地に囲まれた袋地だった。新たに家を建てるには「敷地が道路に2メートル以上接しなければならない」という法律上のルールがあるため、そのままでは新築することができなかった。

そのため最初は、その土地の手前にある真実子さんの実家を2世帯住宅にしようと計画。しかし夫妻の「赤瓦屋根の平屋に住みたい」という思いは強かった。

そこで設計を手掛けた山城東雄さんは、実家の一部の減築を提案。前面道路につながる進入路の幅を2メートル以上にすることで、新たに家を建てられるようにした。

躯体は、屋根が木造、壁がコンクリート造の混構造。屋根はLDKから書斎まで覆っており、長さは9.7メートルもある。そのうちLDKの梁(はり)の長さは5.6メートルだが、一般的な材料の長さは4メートルまで。そのため山城さんは「継ぎ目部分に大黒柱を立て、梁をつなぐことで大空間を実現した」と説明する。さらに、LDKと書斎との仕切りを梁の近くだけガラスにすることで奥行きを演出。空間をより広く感じられるようにした。

ピアノが置かれた書斎は吸音材で囲まれ、楽器を存分に楽しめるようになっている。扉を開ければLDKとつながり、音の共有もできる。LDKではオーディオ機器の配線類を壁の中に通し、室内の印象をスッキリさせた。

そのほか、ジャロジー窓をキッチンやクローゼットなど随所に設置。「常に風が通るので熱がこもりにくい」と山城さん。家事動線にも配慮し、キッチンや水回りは回遊できる造りにした。
 

書斎|(株)東設計工房[お住まい拝見]

書斎。壁面には音を吸収する有孔ボードが使われている。正彦さんや子どもたちが使うピアノは、真実子さんが幼い頃に使っていた物。上部はロフトになっている

 

 

学習コーナー|(株)東設計工房[お住まい拝見]

学習コーナー。窓から庭の緑が見える落ち着いた空間で、子どもたちは宿題などをする

子ども室|(株)東設計工房[お住まい拝見]
子ども室。将来は3室に仕切れるようになっている。左奥の戸からはキッチンが見える

 

ウオークインクローゼット|(株)東設計工房[お住まい拝見]

ウオークインクローゼット。普段着る物は左側のオープンな場所に、季節ものなどは右手の扉がついた場所に収納。奥のジャロジー窓を開ければ湿気もこもりにくい



[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:481.93平方メートル(約145.78坪)
1階床面積:125.08平方メートル(約34.84坪)
建ぺい率:27.53%(許容50%)
容積率:25.95%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造+木造屋根赤瓦葺き
設計:(株)東設計工房 山城東雄、具志翼
構造:(株)東設計工房 具志翼
施工:(株)棚原組 比嘉勉、西盛作蔵
電気:(有)中原電設 仲村直也、池原啓太、阿嘉祐作
水道:(株)共立技研 源河武司、知念伸

問い合わせ
(株)東設計工房
電話=098・917・5000
https://azumas.com/


撮影/比嘉秀明 文・出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1955号・2023年6月23日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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