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2015年9月4日更新

シンプルさ健在|団設計工房

沖縄本島北部、本部町の高石利博さん(73)宅は、築31年。「外人住宅のように」と造られたシンプルな室内、リビングの大きな窓越しに広がる景色は、建築当時のままだ。夫妻は「あと20年で築50年。それまでこの家で過ごしたい」と満足げに話す。

山の緑を感じて

高石利博さん宅(第117号1987年10月9日掲載) 築31年


敷地南側から見た外観。7年ほど前に防水塗装をしてきれいになった外壁と、直線的な建物の形が相まって、古さを感じさせない。手前左は、高石さんが孫のために自作した滑り台付きの遊具


なだらかな山を背に建つ、横長の平屋。新築当時、一緒に住んでいた3人の子どもたちは独立し、今は夫妻で暮らしている。
間取りは玄関を中心に、西側はリビングやダイニング・キッチン、東側に子ども室、浴室、寝室が展開する。白かった壁は経年でアイボリーに代わり、長年愛用の家具やカーペットが、“外人住宅”の雰囲気を醸し出す。
リビングは南北の壁に縦約2メートル、横4メートル弱の大きな窓が設けられ、窓越しに山の緑が広がる。高石さんは「オープンな造りで、景色が身近に感じられる、今も飽きないんだ」と笑う。
南側の窓越しの光景は、愛犬とたわむれる子どもたちから、三角ベースボールで遊ぶ孫たちへと変わった。「孫たちを見ていると、家を建てたころを思い出すわ」と、妻の寿美子さん(70)は目を細める。庭の滑り台やブランコは、孫のために高石さんが手作りした。「孫には『じぃじの仕事は大工さん』と言われてるんだよ」と、まんざらでもない様子。
寿美子さんのお気に入りは、キッチン。「天板が私の背丈に合う高さになっていて、今も使いやすい」と笑顔を見せる。
現在、子ども部屋は夫妻それぞれの書斎と物置、離れは高石さんの趣味室として使っている。

建築士と今も交流
高石さんは医学博士。35年ほど前、本島北部で病院を開業するため、当時住んでいた宜野湾市から本部町に移住。家を建てることにした。小・中学校に近い現在の土地を購入。設計は先輩の医師に紹介され、自身の病院を設計してもらった建築士に頼んだ。「宜野湾では外人住宅に住んでいて、シンプルな造りが気に入っていたんだ。建てる家もそんな風にしたかった」と高石さんは振り返る。
家を建ててからも、気になることがあれば、建築士に相談してきた。外壁や浴室のリフォームは、建築士のアドバイスによるものだ。「時にはわざわざ那覇から駆けつけて、修理を手配してくれる。ありがたい」と、しきりに感謝していた。
「あと20年で家は築50年、僕らは90代。この家で過ごせたらいいな」。そう語る夫妻の顔は満足でいっぱいだった。


玄関側から見たリビング。両端の大きな窓からは、山々の緑が見える。がらんどうになっていると勘違いした鳥が窓に突っ込むのを防ぐため、右手(北側)の窓は普段、ブラインドを下ろしている



子ども室前の廊下。高石さんの希望から照明は業務用に。換気を促すため、子ども室のドアの上に滑り出し窓を設けた


6年ほど前にリフォームした浴室。洗面室とトイレが一緒になった造りは、以前住んでいた外人住宅を参考にした

『外人住宅風に
高石さん宅の設計は、南北に開けた広大な敷地の特徴が生かされている。玄関を中心に東西で公私の空間を分け、シンプルで開放感のある造りに仕上げた。一方、30年以上にわたり、建物のケアをサポートしてきた建築士の姿勢は、夫妻に安心感をもたらしている。

家族の大切な思い出と共に

高石さん自作の模型。平面図を基に、薄い木材を使い50分の1スケールで作った
 

設計者・永山盛孝さんに聞く
広大な敷地を生かす

高石さんは北海道出身で、人柄もおおらか。外人住宅のような、広い庭のある開放的な家を希望していました。
設計は400坪余りの広さと南北に開けた敷地の特徴を生かし、南北に開くプランに。玄関を中心に東西で公私の空間を分けました。また盛り土した箇所にリビングや玄関を置き、掘り込みに近い形で車庫を設けられるよう工夫。
子ども室は現在、3室のまま使われていますが、独立後の生活スタイルの変化に対応するため、一部は壁を取り外してワンルームに改装可能。夫妻の寝室として使えます。趣味室として使われている離れは、越冬のために来沖される母親のために用意。敷地の周囲は田んぼで地盤が軟らかかったため、面状の基礎で建物を支える「ベタ基礎」に。床材は上質なチーク材を使いました。
設計した住宅は、嫁に出した娘と同じ。嫁いだ後、つまり施主が住んだ後も気掛かり。こまめに連絡をくださる高石さん夫妻には感謝です。

設計当時の話に花を咲かせる高石さん(左)と、設計者の永山さん

[DATA]
家族構成:夫婦
敷地面積:1497.86㎡(約453.1坪)
1階床面積:164.97㎡(約49.9坪)
建ぺい率:16%(許容70%) 容積率:14%(許容400%)
用途地域:未指定地域(建築当時)
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計:団設計工房 永山盛孝
施 工:光建設(株)
完成時期:1984年12月

[設計・問い合わせ先]
団設計工房
098-863-2355
http://www.dansekkei.jp
写 真/高野生優・フォトアートたかの撮影
編 集/週刊タイムス住宅新聞編集部

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1548号・2015年9月4日紙面から掲載

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