お住まい拝見
2023年6月16日更新
借景で密集地でも開放的|(株)一級建築士事務所・斎[お住まい拝見]
[開けた北側に3枚引きの大窓]
住宅密集地に建つOさん宅。2階のLDKは唯一開けた北側に3枚引きの掃き出し窓を設け、光と風を取り込んだ。向かいの公園の緑が借景となり、癒やしや開放感を感じる空間となった。
光柔らかカーテン不要
Oさん宅
RC造/自由設計/家族4人
Oさん宅は南に中層マンション、西に戸建て、東側に駐車場が近接し、北側には前面道路を挟んで公園がある密集地に建つ2階建て。階層で公私を分けて、2階はLDK、和室、水回りを配置し、1階に個室をまとめた。
夫は「密集地のため室内が暗くなるんじゃないか、と思っていましたが、心配不要でしたね」と笑う。リビングの北側には3枚引きの掃き出し窓があり、「まぶしい直射日光ではなく、柔らかい光が室内に入ってきます。バルコニーの手すりに付いた合わせガラスが外からの視線を遮るため、カーテンを閉める必要がない。向かいの公園側に開けているので、LDKがより広く感じます」。
そんなLDKで一段と目を引くのが妻こだわりのキッチン。「イメージするキッチンの写真を集めては建築士と共有。収納棚の大きさや使う素材などを話し合いながら造ることができ、大満足です」と妻。1階の庭で取れたトマトやバジルなどを食卓に並べ、家族の時間を楽しむ。
植物が飾り付けられたキッチン。カウンターの向かいには建築士が造りつけた勉強机があり、「食事の支度をしながらでも、学校の宿題をする子どもの様子が見える。公園で遊ぶ子どもの姿も見られて安心」とOさん
リビングにある和室は床から37センチ小上がりになっている。床下収納できるため、物が散らからず、すっきりとしている
洗濯も身支度も時短
子供の小学校入学に合わせて家づくりをスタート。校区内で土地を購入し、設計は以前、実家の建て替えを相談した建築士に依頼した。夫は「その建築士が手がけた住宅を見て、デザイン性がありつつ暮らしやすそうで、自分たちのイメージにぴったりでした」と話す。
夫婦は共働きのため、家事のしやすい動線も要望した。水回りは洗面所とウオークインクローゼット、南側のバルコニーまでを一直線にまとめて配置。「朝、仕事の身支度もスムーズに行えて、無駄がない」と夫。
また、休日は親子でサイクリングを楽しむ一家。「エントランスとは別に、駐車場から直接倉庫へ行き来できる出入り口も取り付けてもらったおかげで、自転車など出し入れしやすくて便利です」
Oさん宅には借景を取り込みながら、柔らかい明かりに包まれた暮らしがあった。
外観。杉板を使って仕上げたコンクリートの外壁が特徴的。2階のバルコニーの手すりは合わせガラスを使い、外からの視線を遮っている
エントランス。朝に玄関が混雑しないようにと、靴を履くスペースは木の引き戸の向こう側にも設けた
駐車場から直接行き来できる倉庫。室内とつながっているため、雨天時はぬれずに入ることも可能
床や家具など木を基調としたLDK。写真左奥の窓からも南風を取り込む
洗面所。出入り口の先はウオークインクローゼット、南側のバルコニーへ続く(写真=斎提供)
南側のバルコニー。隣家との間に花ブロックを設け、視線を遮りつつ通風を確保
ここがポイント
2階にLDK&北側採光
Oさん宅は日当たりのいい南と西側に隣家が近接、東側は駐車場。唯一開けている北側は通りに面し、その奥に公園がある。設計士の玉那覇昇一さんは「東側にも今後、家が建つことを考慮し、南北に延びた住宅で、北側に開いたプランを提案。通りからの視線を気にせず、公園の緑も見渡せるよう、LDKを2階に配置=2面断面図。公園側に3枚引きの掃き出し窓を設けることで、北側からの安定した光を取り込んだ。沖縄特有の南東から吹く風を取り込めるよう、南側にも窓を設けた」と説明する。
2階部分は1階部より北側に3・4メートル突き出し、必要な面積を確保した。北側の掃き出し窓の外にはバルコニーを隣接させ、開け放てば一体的に使うことができる。「公園のある北側は視界を邪魔するものがないので窓を開けば、LDKがより開放的に感じる」と玉那覇さん。また、突き出し部分は駐車場の屋根となり、「雨の日でも、ぬれずに室内に移動できるようになっている」。
1階は個室をまとめたプライベート空間。個室を計画する際、玉那覇さんは「ライフスタイルの変化に対応できるよう、空間の使い方を固定しないようにしている」。そのため、現在は家族4人で寝ている寝室も、中央に仕切り壁を設ければ、二つの子ども部屋としても使える。
1階にある家族の4人の寝室
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:165.31平方メートル(約50坪)
1階床面積:69.6平方メートル(約21坪)
2階床面積:62.16平方メートル(約19坪)
建ぺい率:41.13%(許容67.99%)
容積率:67.12%(許容110.95%)
用途地域:第一種低層住宅専用地域/第一種住居地域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:(株)一級建築士事務所・斎 玉那覇昇一
構造:(有)翔光プラン
施工:(有)匠建
電気:喜友名電気
水道:(有)ライフ工業
◆問い合わせ
(株)一級建築士事務所・斎
電話=098・996・3512
https://www.atelier-sai.net/
撮影/矢嶋健吾 文・市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1954号・2023年6月16日紙面から掲載