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2022年8月12日更新

[沖縄・お住まい拝見]海外リゾートを感じて|コバヤシ401.Design room(株)

[庭を楽しむ自宅兼宿泊施設]「旅行で訪れたアジアンリゾートの心地よさを、家でも楽しみたい」と、自宅を新築した喜屋武盛光さん(63)。「たくさんの人に魅力を感じてほしい」と、宿泊施設としても活用する。

リゾートホテルをイメージしたLDK。床はタイル張りで、壁も黒で統一
リゾートホテルをイメージしたLDK。床はタイル張りで、壁も黒で統一。寝室とを仕切る木壁(写真右側)がデザインのアクセントに。高い天井と庭の緑が開放感を高める(矢嶋健吾撮影)


「好き」を共有

喜屋武盛光さん宅
RC造/自由設計/家族1人

緑いっぱいの庭の一角にたたずむ、切り妻屋根の黒い平屋。広い軒下空間にある玄関ポーチからは庭へと視界が抜け、日差しを受けてきらめくプールに、リゾート気分が一気に高まる。「アジアンリゾートが大好きで、沖縄でもそんな空間で暮らしたくて。リゾートを感じながらも、色も形も、沖縄では見かけない建物にこだわりました」と喜屋武さん。

室内外の壁、タイル張りの床は黒で統一。LDKと寝室を仕切る壁に用いた木が、シックな中に温かみを感じさせるアクセントに。庭に面して一直線に並ぶ寝室、LDK、和室は、全面掃き出し窓。どこに居ても開放的で、緑を眺めながらのんびりくつろげる。

和室からリビングと寝室を見る。寝室との仕切り壁は上部を開け、ワンルームのようにつなげることで広く感じられる
和室からリビングと寝室を見る。寝室との仕切り壁は上部を開け、ワンルームのようにつなげることで広く感じられる。天井板の重なりをズラし、間接照明を入れ込んでいる


庭づくりで進化

南城市玉城の住宅地に土地を購入。「緑が身近なリゾートのような空間を体感してもらうことで、家づくり、庭づくりに参考になれば」。そんな思いから、自宅兼宿泊施設を計画。10年来の知人で、東京と沖縄に事務所を構える建築士に設計を依頼した。

「沖縄の方とは違う感性にひかれて。沖縄にはない建材も提案してくれ、日本家屋を意識した和室や、屋根の造りが気に入っています」

宿泊者を考慮し、寝室にもシャワーとトイレを配置。プライベートな荷物を置くスペースは、鍵付きにした。引き渡し後、庭にプールを設置。週末にコツコツ植物を植え、庭づくりを楽しむ。「通りがかりの方が、『すてきですね』と声をかけてくれるのがうれしい」

宿泊の予約が入れば、自身は隣接する事務所や、県内ホテルで過ごす。「予約も増えてきた。自分の空間が認めてもらえたということ。自信になります。少しずつ手を加えて、進化させたい」と笑顔で話す。

リビングの背後に和室があり、木や障子の風合いが、空間に柔らかさをプラス
リビングの背後に和室があり、木や障子の風合いが、空間に柔らかさをプラス。障子を閉めれば個室として使える
 

広い軒下空間を生かしたエントランス。屋根の裏側だけに用いた白の塗装が、庭の緑と相まって爽やか
広い軒下空間を生かしたエントランス。屋根の裏側だけに用いた白の塗装が、庭の緑と相まって爽やか。プールからあがってきたときのために、エントランスにもシャワー水栓を設けている
 

赤みのあるラワン材で扉を仕立てた倉庫(右)と収納
赤みのあるラワン材で扉を仕立てた倉庫(右)と収納。プライベートな物を置くスペースはカギ付きに
 

ここがポイント
ワンルーム空間で
開放感と落ち着き


喜屋武さん宅の敷地は、隣地に将来、喜屋武さんの会社の事務所やガレージ、プールなどを建築する計画があり、建築士の小林進一さんは、その計画を踏まえて建物の配置と形を検討した。

喜屋武さんの希望で、建物は青空と緑になじむ黒色に。鉄筋コンクリート造ながら、角度を変えた切り妻形の屋根を設け、形も独特だ。「東側の一部の棟に角度をつけることで大きな軒下空間を設け、庭へと視線が抜け開放感を感じるエントランスにしました」と小林さん。

室内は、LDKと寝室、和室、収納、水回りというシンプルな構成。LDKと寝室を仕切る壁には、縦格子の木を採用。壁高を2・1メートルと抑えて上部を開け、扉は木ルーバーに。水回り以外は扉を開けるとワンルームにつながり、狭さを感じさせないよう工夫した。

LDKと寝室、和室は南側の庭に面し、全面掃き出し窓にして景色を取り込む。軒を1.35メートルと深く取り、窓の外のテラスを設けることで、室内への太陽光の差し込みを和らげた。

デザイン面では、内外の壁、床ともに素材感のある黒で統一。床は屋内外で同じ種類のタイルを使って、一体感を演出した。仕切り壁の木をアクセントにし、間接照明にすることで、落ち着きのあるリゾートホテルのような空間を目指した。

屋根が黒の塗装で、蓄熱しやすいことも考慮。「天井懐を大きく取り、木の下地に石こうボードを張りつけることで、室内に届くふくしゃ熱の軽減をはかりました」
 

家族での宿泊やインバウンドを想定して設けた和室は、網代を用いた天井が印象的

家族での宿泊やインバウンドを想定して設けた和室は、網代を用いた天井が印象的。「茶室のような雰囲気が好き」と喜屋武さん
 

玄関扉上部に誘導灯をつけ、宿泊施設仕様に

玄関扉上部に誘導灯をつけ、宿泊施設仕様に。廊下にはアッパーライトを採用。夜はムーディーな雰囲気


寝室。ベッドのヘッドボードにも間接照明を入れ、落ち着いた雰囲気に
寝室。ベッドのヘッドボードにも間接照明を入れ、落ち着いた雰囲気に。掃き出し窓から直接、庭へと出られ、逆サイドには収納とシャワーブースがある


寝室の扉は、縦格子になった仕切り壁に合わせて、木製の縦ルーバーを採用
寝室の扉は、縦格子になった仕切り壁に合わせて、木製の縦ルーバーを採用。閉めていても視線と風が抜ける

庭からの外観。傾斜を切り替えた屋根の形がユニークで、マットな黒の塗装が、庭の緑やプールの鮮やかさを引き立てる
庭からの外観。傾斜を切り替えた屋根の形がユニークで、マットな黒の塗装が、庭の緑やプールの鮮やかさを引き立てる


[DATA]
家族構成:1人
敷地面積:427.36平方メートル(129.27坪)
1階床面積:103.53平方メートル(31.31坪)
建ぺい率:26.30%(許容70%)
容積率:24.22%(許容200%)
用途地域:区域区分非設定
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設  計:コバヤシ401.Design room(株) 小林進一
構  造:チーム+1 Narishika建築構造事務所 成底佐一郎
施  工:(有)西喜建設
電  気:シロマ電気
水  道:(株)呉屋設備

問い合わせ
コバヤシ401.Design room(株)
電話098・923・2439
https://kobayashi401.com/


撮影/矢嶋健吾 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1910号・2022年8月12日紙面から掲載

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週刊タイムス住宅新聞編集部

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