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2022年6月24日更新

[沖縄・お住まい拝見]多世代を楽しむ家|建築アトリエ・トレッペン

[1・2階で異なる雰囲気]喜屋武さん(46)宅は4世代での生活を見据えた2階建て。1階は集いやすい大空間、2階は映画館のような空間で、住み継ぎやすい造りになっており、多世代で楽しみながら暮らす。

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1階LDK。右手の和室の戸を開け放てば、ひと部屋の大空間となる。祖父は「前の家では親戚が集まっても、1部屋に入りきらず部屋を分けていたが、今は同じ空間でみんなの顔が見える」と話す。祖母は「1階全体に段差がなくて暮らしやすいですよ」(矢嶋健吾撮影)

自宅が映画館

喜屋武さん宅
RC造/自由設計/家族7人

新しい住宅地に建つ2階建て。その2階部分で喜屋武夫妻と三女(18)、長男(15)が暮らす。
外階段を上がって玄関を抜けるとすぐに、高い勾配天井で開放的なリビング。随所に置かれた水槽やグリーンが、部屋を鮮やかに彩っている。

庭に面した壁には、喜屋武さんが「夢だった」と話す、大きなロールスクリーン。7・1チャンネルの音響設備もあり、その迫力はまるで映画館。家族でくつろいだり、子どもたちが友人を招いて、映画鑑賞やスポーツ観戦を楽しんでいる。

一方、1階は祖父(92)と祖母(91)、そして喜屋武さんの次女(21)の生活スペース。仏壇がある和室の引き戸を開け放てば、LDKまでつなげて広々と使える造りになっている。

祖父は「ひ孫と一緒に暮らしているし、安心感がある」とうれしそう。祖母にタブレット端末の使い方を教える次女も「毎日が楽しい」と笑顔を見せる。

そんな様子を「数人での作業もしやすい」という広くて機能的なキッチンから夫人(46)が眺める。夫人は「2階の家族も食事は1階でとるので、祖父母にとっても子どもたちにとっても、良い刺激になっているみたい。子どもたちは方言を聞き取れるし、祖父母はますます元気になって若返っているよう」と多世代で暮らす魅力を話す。


2階リビング・ダイニング。天井は、右手にある庭に向かって高くなっており、上部の高窓からは光も入る。正面奥のテラスはアウトドアリビングとして活用している
 

2階リビングダイニングをキッチン側から見た様子。大きなスクリーンや天井にも埋め込んだ音響により、「自宅にいながら映画館のような雰囲気を味わえる」と喜屋武さん
 

独立した神屋の動線

以前は借地に建つ2棟で、喜屋武さん夫婦と4人の子ども、両親と祖父母がそれぞれ暮らしていた。しかし、米軍から土地が返還されたことで家造りの計画がスタート。設計は、家族をよく知る、いとこの建築士に依頼した。

1階には門中の始祖を祭った神屋(かみやー)もある。建築士はそこに住宅内を通る動線だけでなく、庭から出入りする動線も設けた。喜屋武さんは「以前は家庭の一角に神棚があったので、拝みに来る人も気を使っていたはず。今は気兼ねなく訪問でき、拝みやすくなったと思う」と話す。

現在、両親は以前の家で暮らしているが、将来的には同居する予定。4世代による生活が始まろうとしているが、祖母は「やしゃごを見るまで元気でいなきゃね」と5世代での暮らしまで楽しみにしている。
 

1階神屋。家族の外出時に訪問予定がある場合は、左手の玄関側の戸を施錠し、写真手前側にある庭に面した入り口から出入りする
 

ここがポイント
世帯入れ替え住む

喜屋武一家の要望は「多世代で暮らしやすい家」。そこで建築士の照屋寛公さんは「各階2世代ずつ暮らせる造りで、住み継げる住まい」を提案した。例えば、現在は祖父母と次女が生活する1階は、将来的に喜屋武夫婦と両親の生活スペースとし、2階は長男家族の空間とする。さらにその先は、長男夫婦が1階で暮らし、その子どもの家族が2階で生活…という具合だ。

子育て期間は個室を小さくしてリビングを広くするなど、間取りも変更しやすいように配慮。「壁で支える構造ではなく柱と梁(はり)で支えるラーメン構造にしたほか、間仕切り壁は接着剤を併用せずにビスのみで固定することで撤去しやすくした」。また2階では、仕切りを取り払った際に天井の目地や床の継ぎ目などに違和感が出ないよう、空間全体の天井や床を張ってから部屋を仕切っていった。

上下をつなぐ階段は外部に。「生活リズムが異なっても気を使わなくて済む」と照屋さん。間仕切り壁や2階の床などに、防音効果のあるグラスウールを使用することによって、2階で大音量で映画を見ても、子どもが走り回っても音が1階に響きにくいという。

2階のランドリールームはスポーツ好きな家族に合わせた空間。5帖と広く、脱衣室や物干し場とも隣接しているため、夫人は「子どもの部活などで洗濯物が多くても、洗濯→干す→たたむの作業が効率良くできる」と話す。


南庭。家族でバーベキューをしたり、夫人が友人とヨガを楽しむ。1階の右側が神屋で、家族が留守の場合、訪問者はこのサッシから出入りする


洗道路から見た外観。上下階は左手の外階段で行き来する
 

約5帖の2階ランドリールーム。アイロンや畳む作業もここで完結する。パントリーとしても使っている

 

2階、南側の子ども室。左手のしゃ音壁は家族構成の変化などに応じて撤去しやすいよう、接着剤を併用せずビスのみで固定している。撤去すればリビングの延長として使える


1階キッチン。夫人は「広いので、行事の時に数人で作業しても邪魔にならない。作業台を引き出せる造作の食器棚がとても便利」とお気に入りだ


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人、祖父母
敷地面積:456平方メートル(約138坪)
1階床面積:132.89平方メートル(約40坪)
2階床面積:93.63平方メートル(約28坪)
建ぺい率:32.73%(許容50%)
容積率:49.68%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造ラーメン構造
設計:建築アトリエ・トレッペン 照屋寛公
      スタッフ:桃原真紀、橘木純次
構造:パス建築研究室 新川清則
施工:(有)新都開発 山里高幸
電気:(株)山川電気 上原紀幸
水道:(有)広設備工業 金城治
キッチン:(株)共立創建 東江しのぶ

問い合わせ
建築アトリエ・トレッペン
電話098・859・0710
http://www.treppen.jp/


撮影/矢嶋健吾 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1903号・2022年6月24日紙面から掲載

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出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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