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2022年4月15日更新

[沖縄・お住まい拝見]庭とつながり人集う|東設計工房

[赤瓦とアマハジに憧れ混構造]琉球民家に憧れ、赤瓦をのせた混構造の平屋を建てたKさん(59)。小屋組があらわになったリビングは、庭に大きく開き、開放的。「親族が集うときも、ゆったり気持ちがいい」と喜ぶ

あらわになった小屋組が印象的な、1階のリビングと和室。南側の庭に面して大きな開口部とヌレエンを設けることで、庭との一体感、開放感が生まれている
あらわになった小屋組が印象的な、1階のリビングと和室。南側の庭に面して大きな開口部とヌレエンを設けることで、庭との一体感、開放感が生まれている


沖縄の伝統大切に

Kさん宅
混構造|自由設計|家族3人

赤瓦の屋根に大きなシーサー、琉球石灰岩のヒンプンが印象的なKさん宅。

「子どもの頃、近所にあった赤瓦の家に憧れて。赤瓦の家が減っていく中で、『沖縄の伝統を受け継ぎたい』という思いが、どんどん強くなった」とKさん。赤瓦とアマハジ空間にこだわり、「屋根は木造、構造体はコンクリートの混構造で」と、家づくりの希望は明確だった。

2列になったヒンプンの先にある玄関を開けると、正面に設けられた中庭に視線が抜け、開放的。リビングに入ると、あらわになった小屋組の木組みと、掃き出し窓の先に広がる庭の緑が目に飛び込んでくる。「ソファに座っていると、夜には高窓から月が見えて気持ちがいい。季節の移り変わりも感じられます」

仏壇があるため、行事には親族が多く集まる。「リビングを広くとって、和室と続き間で使えるようになっているので、ゆったり過ごせます」。和室には、20代から続けている三線も飾って楽しむ。

夫人(59)のお気に入りは対面キッチン。正面にあるダイニングのコーナー窓からは中庭が見え、気持ちよく料理ができる。「キッチン背後にある水回りへは、干し場からも出入りできる。家事動線がよくて、とても使いやすい」と喜ぶ。
 

玄関前に設けられた、琉球石灰岩のヒンプンとアプローチ。外からの視線を遮りつつ、デザインとしての美しさも追求

玄関前に設けられた、琉球石灰岩のヒンプンとアプローチ。外からの視線を遮りつつ、デザインとしての美しさも追求
 

玄関は、ホールの正面に設けられた中庭がポイント。自然光を取り込み、視線も抜けるため、空間に広がりが生まれる

玄関は、ホールの正面に設けられた中庭がポイント。自然光を取り込み、視線も抜けるため、空間に広がりが生まれる


目指すは森の中の家

生まれ育ったうるま市石川で、6年前に土地を購入。「建築士さんにお願いするのは敷居が高いと感じていたので、4年間は建築会社ばかり訪ねていました。おかげで家づくりの知識は増えました」とKさん。

ネット検索で見つけた混構造の家を手掛ける建築士事務所が、取っておいた新聞記事の住宅を設計した会社だと気がつき、「ご縁を感じて設計を依頼しました。親族からも素晴らしい家だと絶賛。思い切って頼んで本当によかった」。

植物が好きなKさん。モミジやヤマボウシなど、「庭木も他の家にはないものを」と、一本ずつ増やしている。

「庭ができて、愛犬も走り回って楽しそう。水やりをしていると、道ゆく人が声を掛けてくれる。そんな交流も楽しい」。目指すは森の中の家。楽しみながら庭を育てる。

 

和室からLDKを見る。リビング東側に設けた高窓、ダイニングのコーナー窓が、採光と視線の抜けを生み、空間を広く感じさせる

和室からLDKを見る。リビング東側に設けた高窓、ダイニングのコーナー窓が、採光と視線の抜けを生み、空間を広く感じさせる


ここがポイント
地盤への負荷軽減
公私分け庭へ開く


敷地は南と西の2面を道路に接する角地。フラットだが埋め立て地のため地盤が弱く、調査の結果、22メートルの杭(くい)打ちが必要だった。「22メートルで済んだのは、混構造だったから。RC造より軽く、地盤への負担が少ないので、基礎工事のコストが抑えられた」と、設計した山城東雄さんは説明する。

さらに敷地の南面は、T字路の突き当たり。そのため、石敢当(いしがんとう)やシーサーなど沖縄の伝統的手法で邪気払い。「玄関前にはヒンプンを設けることで、プライバシーを守りつつ、地域と緩やかにつながる計画にしました」

住宅は玄関を境に、西側をパブリック、東側をプライベートに区分け。LDは明るさと風通し、視覚的な広がりを重視した造りとした。リビングは掃き出しの大きな開口部とヌレエンを設け、庭とつながる開放的な空間に。ダイニングは、玄関正面の中庭に面してコーナー窓を配置。視線が抜け、空間に奥行きが生まれる工夫だ。

家事動線やバリアフリーにも配慮。対面キッチンの背後、西側に水回りをまとめ、「勝手口から干し場を通って回遊できる造りになっています」と建築士の久高多美子さん。引き戸や折れ戸を使い、省スペースでバリアフリーな空間を実現した。
 

赤瓦屋根が目を引く外観。琉球石灰岩で構えた門の正面には、南側に伸びる道路が直交するため、石敢当を設置。庭は生け垣を育成中だ

赤瓦屋根が目を引く外観。琉球石灰岩で構えた門の正面には、南側に伸びる道路が直交するため、石敢当を設置。庭は生け垣を育成中だ

 

木家具でまとめたダイニングとキッチン。コンパクトながらコーナーに窓を設けて視線の抜けをつくった効果で、気持ちよく過ごせる。キッチンに設けた勝手口から干し場に出られ、洗面室、浴室へと回遊できる造りになっている

木家具でまとめたダイニングとキッチン。コンパクトながらコーナーに窓を設けて視線の抜けをつくった効果で、気持ちよく過ごせる。キッチンに設けた勝手口から干し場に出られ、洗面室、浴室へと回遊できる造りになっている
 

和室。視線を遮りながら庭を楽しめるよう、雪見障子や地窓を活用

和室。視線を遮りながら庭を楽しめるよう、雪見障子や地窓を活用
 

リビングの先にあるアマハジは、リビングとフラットにつながるヌレエンになっている

リビングの先にあるアマハジは、リビングとフラットにつながるヌレエンになっている

 

洗濯機置き場を兼ねた広い洗面室と、浴室。勝手口の先に干し場がある

洗濯機置き場を兼ねた広い洗面室と、浴室。勝手口の先に干し場がある



[DATA]
家族構成:夫婦、子ども1人
敷地面積:297.53平方メートル(90坪)
1階床面積:115.51平方メートル(34.94坪)
建ぺい率:42.05%(許容70%)
容積率:38.82%(許容200%)
用途地域:第1種住居地域
躯体構造:混構造
設計:(株)東設計工房 山城東雄、久高多美子、神谷英明
構造:(株)東設計工房 山城浩二
施工:(有)松都建設 山内辰也
電気:(有)中原電設 池原啓太、阿嘉祐作
水道:三建設備(株) 山内昌

問い合わせ
 東設計工房
 電話098・917・5000
 https://azumas.com/


撮影/泉公(ララフィルム) 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1893号・2022年4月15日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2395

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