お住まい拝見
2021年6月18日更新
[沖縄・お住まい拝見]おおらかに住まう|(株)アトリエセグエ
[家族5人で2LDKシェア]
子どもたちと寝室をシェアする城間さん宅。2LDKと少ない個室でも家族5人がおおらかに暮らす。約7メートルの開口と、部屋を一体につなぐコンクリート打ち放しの天井が、広がりと開放感を演出する。
わずかな時も共に
城間さん宅
RC造/自由設計/家族5人
LDKを中心に畳の寝室と、スキップフロアのように床を上げた子ども室が向き合う。家族5人に対し個室2室。「共働きだから、わずかな時間でも家族と一緒にいたい」との夫婦の思いから、長男(小4)次男(5歳)と寝室を共用し、川の字になって寝る。「大きくなった長女(中2)はさすがに子ども室を使う」と夫人は話す。
夫婦が求めたのは、家族の気配が感じられる暮らし。約24帖の広々としたLDKは約7・4メートルの大開口で南東の庭とつながり、子どもたちが走り回る。「落ち着いたら友人も招いて庭でキャンプをしたい」と城間さんは目を細める。
大開口は光と風に加えて、外からの視線も入りやすいが「レースカーテンを閉めるだけでOK」と夫人。LDKと寝室との仕切り壁は上部を開け、一続きになったコンクリート打ち放しの天井を見せる。完全に閉じない分、声も抜けるが、そんなの気にならないといった、おおらかな暮らし方が印象的だ。
LDKと庭は行き来しやすく、テラスをアウトドアリビングのようにも使える。仕切り壁とテラスの袖壁をそろえたことで、緩やかに内外がつながる。仕切り壁は、表面を磨いて骨材の模様が見える研ぎ出し仕上げで表情に変化を付けた
キッチン裏にある洗面脱衣室と浴室。ゆったりした幅の洗面台にボウルを二つ設け、身支度で混み合わないよう配慮。城間さんと長男は、浴室のバスコート(写真左奥)の照明だけをつけて入浴タイムを楽しむ。「作り手も楽しませてくれる」と、建築士も想像を超えた使い方に喜んだ
畳の寝室は約8.2畳。夫婦と2人の子どもたちが川の字になって寝る。右の扉はウオークインクローゼット、屋内物干し場につながる
コートの明かりで入浴
土地は夫人の親から分けてもらったもので、「生まれ育った場所だから安心して近所で遊ばせられ、伸び伸びした暮らしができる」。知人から紹介された建築士と意気投合し、これまで見てきた友人宅などのデザインを参考に、ライフスタイルに合わせて提案してもらった。
重宝しているのは「除湿器で洗濯物が乾く屋内物干し場」と夫人。寝室とウオークインクローゼットも含めた動きやすい動線で、スムーズに洗濯や入浴ができる。
換気のために取られたバスコートは、城間さんと長男の一風変わった入浴タイムを演出。「照明をバスコートだけにすると、すごくリラックスできる」。ほの暗い浴室でスポットライトに照らされた植物を見ながらの入浴は、なかなか通な楽しみ方だ。子ども室下の倉庫はプレイルームとして使われ、部屋の用途や機能の枠を超えて、家族で楽しい使い方を見いだしていた。
LDKを庭から見る。コンクリートがあらわになった天井が内観のアクセントになっている。床はチーク材、壁は左官仕上げ、自然な素材感で温かみのある内装にした。キッチンの手元を隠す壁はモールテックスを使用。写真左の開口が子ども室と倉庫の入り口になっている
子ども室。LDKから床を約1・2メートル上げてプライベート性を確保。外を見下ろせる窓、天井高約3・2メートルで伸びやかな空間は「工夫次第で柔軟な使い方ができる」と建築士
子ども室下の倉庫は、天井高約1・4メートル。造作収納は設けず、スペースだけを確保した。秘密基地のような空間は次男の格好の遊び場になっている
ここがポイント
シェア&柔軟性重視
城間さん宅について「オープンに、柔軟に暮らす家族のスタイルがあったからこそできた間取り」と、設計したアトリエセグエの比嘉俊一さんは話す。「夫婦が言う『伸び伸び暮らせる家』は『家族で共有する空間の比重が高い家』が軸にあった。寝室を共用する分、部屋数少なくLDKが広く取れるなど、限られた面積も有効に配分できた」
天井がLDKとつながるオープンな寝室に対し、子ども室はプライベート性を持たせて、「子の成長やライフスタイルの変化に合わせて使えるようにした」。床をLDKより約1・2メートル上げ、扉で仕切れることで、「上り下りしやすく、つかず離れずの程よい距離が取れる」。子ども室の下は、将来性を考え、荷物の出し入れがしやすい大容量の収納スペースとなっている。
外観は夫婦好みのコンクリート打ち放し。室内も、LDKから寝室まで一続きになった天井、テラスの袖壁と一体になった仕切り壁をコンクリートのままにして、「アクセントとして使い、空間が連続して見えるようにした。つながりを見せることで、公私・内外の境界にグラデーションが生まれる」。
要望でもあった庭と行き来しやすい造りは、LDKに大開口、約1・5メートルの軒とデッキでアマハジ空間を設けた。「大開口は庭を切り取る額縁になり、植栽の成長、季節の移り変わりが感じられる。周辺や家族の変化を楽しんでもらえる家になったと思う」と話した。
外観はコンクリート打ち放しにこだわった。正面は高さのある子ども室がアクセント(アーキメディア沖縄/小玉勝撮影)
南東は庭に向かって大開口を設けた(アーキメディア沖縄/小玉勝撮影)
[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:340平方メートル(約102.85坪)
1階床面積:106.94平方メートル(約32.34坪)
建ぺい率:36.4%(許容70%)
容積率:31.45%(許容200%)
用途地域:指定なし
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:(株)アトリエセグエ 比嘉俊一
構造:建築設計庵
施工:(有)大繋建設
電気:喜友名電気、ミネイ電工
水道:(有)共同工業
◆問い合わせ
(株)アトリエセグエ
電話090・8406・8504
https://seguearchitects.jp/
撮影/泉公(ララフィルム) 取材/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1850号・2021年6月18日紙面から掲載