吹き抜けから光巡らせ|(有)K・でざいん|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

お住まい拝見

お住まい拝見

2020年12月11日更新

吹き抜けから光巡らせ|(有)K・でざいん

[旧家建て替え「大人の家」|お住まい拝見]
暗かった旧家を建て替えたHさん。新居は吹き抜けから光や風が通り、明るく爽やか。家族それぞれの個室や、たっぷりの収納も設けた「大人の住まい」だ。

Hさん宅1階のリビングダイニング。旧家が暗かったことから「明るい家」を要望した。新居は、家の中央部に天井高5.9メートルの吹き抜けがあり、家中に光と風が巡る。Hさんは28年来の知り合いである建築士に「前の家とは大違いだよ」とうれしそうに話す
 

新しい生活様式にも適応

Hさん宅
 RC造/自由設計/家族5人 

浦添市の住宅地、坂の中腹にあるH邸。道路に面する地下階は、駐車場とよう壁から成る。住まいは1、2階にある。道路と同じレベルに住まいを設けると周辺の家の影になってしまうためだ。「旧家も同じ造りだったが、かなり暗かった」と話す。

不便と付き合いながら長年住み続けてきたが、老朽化に伴い、建て替えを決めた。28年来の知り合いである建築士に「明るい家」を依頼したところ、家の中央に吹き抜けを設ける提案を受けた。

完成したのは、ダイニングや玄関に5.9メートルの吹き抜けを設けた伸びやかな住まい。上部の高窓から入る自然光が、白壁づたいに巡る。

先の高窓をはじめ、南側の掃き出し窓など四方の窓から光と風が通り、「前の家とは大違い」と喜ぶHさん。


1階はLDKから和室まで一体的な造り。ダイニング上部の吹き抜けから光が注ぐ

1階はLDKから和室まで一体的な造り。加えて、夫妻それぞれの個室もある。3帖に満たない小さな空間。Hさんはそこで鉄道模型を広げて趣味の世界に没頭。「集いの時間も個々の時間も快適」と話す。
 

1階の書斎は2.6帖。Hさんは仕事や趣味に没頭する
 

 

夫人の家事室は2.2帖。収納もたっぷり。ここで書き物をしたり、「ゆっくりお化粧をしたりします」


造り付け収納たっぷり

「引っ越しは楽でした」。多くの家具を造り付けてもらったからだ。明るさを確保するため、白を基調にした食器棚やテレビ台、収納棚などはナチュラルな空間にマッチしている。

家具だけでなく、「収納部屋」も、重宝している。キッチンのそばには2・6帖の納戸、2階の寝室の脇には5.5帖のウオークインクローゼットがあり、「物が増えても安心」とHさん。

浴室は各階にあるが、主に2階を使用している。洗濯機も同階の脱衣所に設置した。「日当たりの良い2階に干し場があり、しまうのも2階のウオークインクローゼット。短い動線で済むのでありがたいです」と夫人は話す。

 家ができたのは今年2月。新しい生活様式を意図したわけではなかったが、風通しが良く、個室も確保したH邸には今後の家造りのヒントが詰まっていた。
 

 

隣家の陰になる玄関にも、ダイニングと同様に5.9メートルの吹き抜けを設けて高窓から光を取り入れている


ここがポイント
風の道 家中に巡らせ

施主の希望する居室を確保するには、敷地いっぱいに建てる必要があった。実際、Hさん宅の建ぺい率は59.4%(許容60%)。だが、隣家との距離が近くなる分、光や風を取り入れにくくなる。

そこで「家の中央部に吹き抜けを設ける提案をした」と、設計を手掛けたK・でざいんの金城傑さんは話す。

一番暗くなる家の真ん中に吹き抜けを配し、大きな高窓を組み合わせた。隣家の陰になる玄関も同様だ。高窓から入った光が白壁に反射し、爽やかに空間を照らす。

高窓の一部は開閉できるようになっていて、夏場の熱気の抜け道にもなっている。その「出口」を効率的に生かすべく「家の四方から風が通るよう考慮した」。

室内は、突き当たりに壁が少ない。1・2階の廊下の先、キッチンの奥、家事室や納戸、ウオークインクローゼットの奥に至るまで、突き当たりが窓になっていて、光や風が通る。施主のHさんは「おかげで換気もばっちり。個室にいても窮屈さは感じない」と話す。

外からの視線を気にせず窓を開けられるようにと、道路に面した北側はアルミのルーバーや瓦を用いて目隠し。西日が当たる窓には遮熱フィルムを貼るなどして配慮。綿密な開口計画で、「明るく風通しの良い家」を実現した。


北側の道路側から見た外観。アルミルーバーや瓦で外からの風を取り込みながら視線を遮る


外観の一部は、瓦を花ブロック代わりに用いている。瓦の内側には「サービスコート」がある。キッチンの勝手口の先にあって、ゴミなどを一時的に置く場。「外からは見えないけど、風は通るのでとっても重宝しています」と夫人
 

地下の駐車場から玄関へ上がる階段。坂の途中にあるH邸は、採光や通風に考慮して住まいを前面道路より高い位置に設けている


2階の寝室。5・5帖のウオークインクローゼット(写真左側)とつながっている
 

収納たっぷりのキッチン。奥はサービスコートへ続く勝手口。Hさん宅はこのキッチンのように、突き当たりが「壁」でなく「窓」になっているところが多く、風通しが良い
 

2階の廊下。左側はダイニング上部の吹き抜けに面しているため、すりガラスにして光を取り込んでいる。上部にはガラスは入っておらず抜けていて、風も運ぶ


[DATA]
家族構成:夫婦+息子
敷地面積:223.55平方メートル(約67.6坪)
地下床面積:22.65平方メートル(約6.9坪)
1階床面積:110.56平方メートル(約33.4坪)
2階床面積:88.82平方メートル(約26.9坪)
建ぺい率:59.4%(許容60%)
容積量:89.2%(許容200%)
用途地域:第二種中高層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造ラーメン構造
設計:(有)K・でざいん 金城傑
構造:(株)m3那覇建築事務所
施工:(株)棚原組
電気:(株)マルヨシ電気
水道:(有)送友設備

問い合わせ
 (有)K・でざいん
  電話098・835・5518
  http://kdesign.main.jp/​


撮影/泉公/ララフィルム 取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1823号・2020年12月11日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

これまでに書いた記事:337

編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

TOPへ戻る