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2020年10月23日更新

効率的 ミニマリストの家|Atelier TAKE5

[お住まい拝見]Tさん(39)一家は所有物の少ないミニマリスト。家族5人で12坪×2階でも、雑多でないからオープンな造りにして狭さを払拭(ふっしょく)。シンプルかつ効率良く暮らすヒントが満載だ。

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Tさん宅の1階。モノトーンの空間に、黒のらせん階段がマッチしている。1階の床面積は約12坪ながら、視線を遮る壁や家具が最小限なことや、大きく取った玄関の土間が外と内の境をあいまいにして広さを演出している
 

12坪×2階 オープンな造り

Tさん宅
 RC造/自由設計/家族5人 

モノトーンの洗練空間
外観は小さな箱。室内に入ると一変、視線を遮る壁や家具が最小限でスキッと広々している。だが決して簡素ではない。モノトーンでまとまり、洗練された印象。黒のらせん階段もインテリアのようになじみ、縦の広がりを生む。

LDKのある1階は約12坪。それでも窮屈に感じないのは、オープンな造りにも起因する。キッチンの手元すら隠さなかった。建築士は「Tさん一家は驚くほど物が少なく、料理後もすぐ片付けると聞いた。オープンにしても大丈夫だと確信した」と話す。

細部も合理的だ。浴室はシャワーのみ。隣接する洗面室とトイレは一体化させた。洗濯機のある脱衣所は、物干し棒や棚も設置して室内物干し場やミニクローゼットも兼ねる。「家事効率がとても良い。子どもが小さいので、浴室のそばにトイレがあるのも助かっている。トイレは2階にもあるので、不便さは感じない」と夫人は話す。


シンプルな箱型の外観。建物前はTさん宅の駐車場、隣は実家の駐車場と畑がある



1階LDKは、ほぼ壁がなくワンルーム的な造り。リビング脇のらせん階段は、子どもたちが腰掛けて本を読んだりお絵かきをする場所にもなっている



シンプルなキッチン。所有物が少ないTさんに合わせ、収納は最小限。「ミニマリストなので、手元を隠す壁も無くて大丈夫だろうと、オープンにした」と建築士は話す​



浴室はシャワーのみ。洗面室とトイレは一体化させている。水回りは無駄を省き合理的な造りにして、LDKに面積を割いた​


収納1カ所にまとめ

2階には三つの個室とファミリークローゼットがある。7歳と2歳の息子部屋と、5歳の娘部屋、夫婦の寝室は収納を最小限にして1・5畳のファミリークローゼットにまとめて収納している。


両親から土地を譲り受け、家づくりを決めた。敷地面積は約57坪あるが、半分は隣接する実家が駐車場や畑にしたいとの要望があり、12坪×2階建ての住まいとなった。
建築士選びの決め手となったのも「タイムス住宅新聞で、広い土間のある24坪の家を見たこと。デザインも、広さも、土間の使い方も良かったので、そこを手掛けた建築士さんにお願いした」。建築士と意気投合し「家造りは楽しかった。完成してうれしさ半分、寂しさ半分」と夫人。

コンパクトでシンプルだからこそ、細部までしっかりこだわりを反映した満足度の高い家となった。


ここがポイント
視線の抜けで広く見せ

12坪を広く見せる大きなポイントは、「視線の行き止まりを少なくしたこと」とAtelier TAKE5の友利正さんは話す。

例えば玄関から入ると土間からリビング、庭へと水平に視線が抜ける=下写真


LDKは視線を遮る壁が最小限。それが工事費削減にもつながった。「蹴込み板の無いらせん階段も、吹き抜けのように垂直ラインを強調している。階段に割く面積は最小限で済むし、デッドスペースもほぼ無い」と説明する。


庭に面したリビング。建築士は「居室のコーナー(角)を窓にすることで広さを演出している」と話す。また、モノトーンの空間を固い印象にしないために杉板のフローリングでラフさを演出している


ただ、らせん階段は2階への大型家具の搬入が困難というデメリットがある。そこで「Tさんと相談して、2階にベランダを設置した。ここが引っ越し時の裏動線となった」と話す。Tさんは「今でも、ベランダは布団干し場として重宝している」と話す。

Tさんの希望だった土間は、1畳のシューズクローク(SCL)と一体化させ思い切った面積を割いた。同じく設計を手掛けた小谷みゆきさんは、「小さくすると単に靴を着脱する場になってしまう。あえて広く取り、室内との段差を少なくすることでリビングの延長としても、大収納としても、マルチに使えるようにした」と説明する。1階のSCLや2階のファミリークローゼットなど「収納はまとめて1カ所に設け、各個室をすっきりさせると同時にコストも抑えた」。

小谷さんは、インテリアや内装のコーディネートも行った。土間やモノトーンという、男っぽくなりがちな要素が散在する中、「杉板のフローリングでやわらげつつ、ラフになり過ぎないように内装の色味を絞った」。白を貴重に、随所の黒で引き締めてTさんが要望する洗練されたスマートな空間を作り上げた。
また、造作家具も多用して家全体の雰囲気を統一した。



2階の子ども室。7歳と2歳の息子2人で使うことを想定して、勉強机も二つ造り付けた。この部屋に収納はこの棚だけ。洋服などは2階のファミリークローゼットにまとめて収納している​



外のアプローチは横幅も天井高も、あえて狭くしている。「そこから玄関に入ると、ギャップで室内が広く感じられる」と建築士は話す​


[DATA]
【Oさん宅】
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:349.41㎡(約105.7坪)
1階床面積:122.83㎡(約37坪)
建ぺい率:39.14%(許容60%)
容積率:35.15%(許容200%)

【Tさん宅】
家族構成 :夫婦+子ども3人
敷地面積 :189.27平方メートル(約57坪)
1階床面積:40.21平方メートル(約12坪)
2階床面積:40.21平方メートル(約12坪)
建ぺい率 :22.52%(許容50%)
容積率  :42.48%(許容100%)
用途地域 :第一種低層住居専用地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート壁式造
 設  計 :Atelier TAKE5 
      小谷みゆき,友利正
構  造 :ASD Planning
施  工 :(有)平良建設
電  気 :喜友名電気
水  道 :(有)ライフ工業
 

Atelier TAKE5
電話098・890・3052 
http://a-take5.com/


撮影/矢嶋健吾 取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1816号・2020年10月23日紙面から掲載

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この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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