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2023年2月24日更新

親と子、孫も「いい距離感」 実家の庭に建てても“広い家”とは|(株)クロトン・沖縄家作人NET[お住まい拝見]

実家の庭を活用して新居を構えたCさん(35)一家。建物同士をできるだけ近接させることで、限られたスペースの中でも広さを確保した。水回りも広めにとり、家事もしやすくなっている。

道路から見た外観。木目調のルーバーがアクセントになった、左側がCさん宅。右の実家と接しているようにも見えるが20センチほど離れている。駐車場は共用で最大9台とめられる
道路から見た外観。木目調のルーバーがアクセントになった、左側がCさん宅。右の実家と接しているようにも見えるが20センチほど離れている。駐車場は共用で最大9台とめられる
 
Before


帰宅時の景色が好き

Cさん宅
 RC造/自由設計/家族3人 

「もともとここは、妻の実家の庭と駐車場だった場所。限られたスペースなので本当に家を建てられるのかな、というところから始まりました」。

そう話すCさんの住まいは、1階に駐車場、2階にLDKと水回り、3階に寝室や子供室がある3階建て。建物同士が接しているように見えるほど、実家と近接して建つ。

共用の駐車場を抜け、2階玄関に入るとすぐにLDKが広がる。夫人(35)は全体を見渡しながら「帰ってきた時のこの景色が好きなんです」と声を弾ませる。室内は夫妻の好きな木目調がベースで、床や天井、建具に家具、電気のスイッチパネルまで木の雰囲気がちりばめられている。

リビングの窓を開けるとバルコニーへと続き、その奥にある実家の庭まで視線が抜ける。「開放的だし、リビングとつなげて一体的に使えるのもいい」とCさん。夏には長女(1)がプール遊びをする場にもなるという。隣と近接していることを忘れてしまうほど伸び伸び過ごせる空間だ。

2階LDK。左奥の開口部から外に視線が抜けて開放的。手前のリビングと、奥のダイニング・キッチンは天井の高さや仕上げを変えることでゆるく仕切っている
2階LDK。左奥の開口部から外に視線が抜けて開放的。手前のリビングと、奥のダイニング・キッチンは天井の高さや仕上げを変えることでゆるく仕切っている

玄関から見たLDK。木のぬくもりがありつつ、スタイリッシュな雰囲気もある。夫人の好きな風景の一つ
玄関から見たLDK。木のぬくもりがありつつ、スタイリッシュな雰囲気もある。夫人の好きな風景の一つ


互いに助け合い安心感

夫人の実家近くで土地を探していた夫妻。見つからないまま数年が過ぎた頃、両親から「ここに建てたら?」と敷地を提供してもらい、家づくりがスタートした。

設計は、いろいろな意見を聞くため、数社による設計コンペ形式をとっている団体に相談。車4台を自由に出し入れできる駐車場などを条件にしながら、各社のプレゼンをもとに依頼先を選んだ。

中でも夫人が気に入ったのが水回り。「共働きなので家事にかける労力を減らしたかった。だから限られた空間の中でも水回りを重視して広くとってくれた点が良かった」と夫人。「脱衣から洗濯、片付けまでスムーズだし、各エリアを扉で仕切れるので、ランドリールームは除湿器の効率が良く、脱衣室も寒くなりにくい」と満足そうだ。

Cさんは「建物が別なので同居よりは気を使わない。子育ても助けてもらっているので、むしろここから離れられそうもないです。両親も含めた家族の思い出をたくさんつくっていきたい」と期待を込める。両親も「互いに安心だし、助かっている。庭も3分の1になったので管理しやすくなった」と喜びつつ、いつでも見られる孫の顔に目を細める。「いい距離感です」と親子3世代で笑顔を見せた。

洗面室。左手の脱衣室や、正面のオープン収納には、普段着る物をしまう。手前側にはランドリールームがあり、脱衣から洗濯、片付けまでここで完結する
洗面室。左手の脱衣室や、正面のオープン収納には、普段着る物をしまう。手前側にはランドリールームがあり、脱衣から洗濯、片付けまでここで完結する
 

2階トイレ。階段下の空間を有効利用した。歩行器の使用など、将来に備えて面積は広めにしている。陶器製の手洗い鉢はCさんの知り合いによる作品

2階トイレ。階段下の空間を有効利用した。歩行器の使用など、将来に備えて面積は広めにしている。陶器製の手洗い鉢はCさんの知り合いによる作品

広々としたランドリールーム。基本は乾燥機を使うが、使えない物はここに干し除湿器で乾かす。夫人は「雨を気にしなくていいのがうれしい」
広々としたランドリールーム。基本は乾燥機を使うが、使えない物はここに干し除湿器で乾かす。夫人は「雨を気にしなくていいのがうれしい」

寝室。頭をドア側、足を窓側にして眠るため、ライトは窓側だけに設けて眠りを妨げないようにしている
寝室。頭をドア側、足を窓側にして眠るため、ライトは窓側だけに設けて眠りを妨げないようにしている

バルコニー。奥に見えるのは実家の庭。西向きだが、大きな木が西日を遮る
バルコニー。奥に見えるのは実家の庭。西向きだが、大きな木が西日を遮る


ここがポイント
家と家の距離20センチ 居住空間を大きく

Cさん宅の敷地は間口が狭く、奥に向かって長細い。設計を手掛けた下地鉄郎さんと與那覇なつみさんは「スペースが限られている中で、できるだけ生活空間を大きくとれるようにした」と話す。

まずは土地を細かく計測し、センチ単位で設計。できるだけ実家に寄せて、Cさん宅の規模を大きくした。下地さんは「条例等にもよるが、民法では隣地境界から50センチ以上建物を離すよう規定されている。しかし、両者の了解があればそれ以下にすることも可能」と話す。今回、家と家との距離は一番近い場所で20センチ以下。実家なので了解も得やすかったという。

建物内の配置計画も工夫。與那覇さんは「廊下は極力減らし、トイレは階段下に配置。シャワーだけという生活スタイルなので浴室も小さくした。その分、居住スペースをはじめ、水回りの面積や階段の幅などを広げて暮らしやすくした」と説明する。

実家との距離感を「程よくする」ために與那覇さんが提案したのが、Cさん宅と実家をつなぐ通路。「お子さんも小さいし、実家との行き来は必ず出てくる。Cさん宅の玄関を2階にすることで、実家の縁側と違和感なくつなげられるようにした」と話す。建物は別にしながらも、最短距離で行き来できる通路によって、近過ぎず離れ過ぎない距離感を実現した。

そのほか、メンテナンスの手間を軽減させつつ夫妻の好きな木の雰囲気も出すため、木目調のアルミルーバーを使ったり、バルコニーの床材を人工木にした。水回りの床も、店舗で使うような耐久性の高いシートを使っている。

Cさん宅の1階駐車場から2階玄関へと続く階段。途中、写真左側には実家と行き来できる通路がある
Cさん宅の1階駐車場から2階玄関へと続く階段。途中、写真左側には実家と行き来できる通路がある


 

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども1人
敷地面積:156.57平方メートル(約47坪)
1階床面積(車庫含む):86.07平方メートル(約26坪)
2階床面積:68.78平方メートル(約20坪)
3階床面積:53.66平方メートル(約16坪)
建ぺい率:56.18%(許容60%)
容積率:106.53%(許容200%)
用途地域:第一種中高層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造
設計コンペ主催:沖縄家作人(やーつくやー)NET
設計:(株)クロトン 下地鉄郎、與那覇なつみ
構造:建築設計 庵
施工:(有)國真住建 國吉、知花

問い合わせ
沖縄家作人NET 本部
電話=098・869・3313(担当・國吉)
https://www.8298net.jp/

(株)クロトン 電話=098・877・9610
https://croton.jp


撮影/比嘉秀明 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1938号・2023年2月24日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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