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2016年6月24日更新

木造編③ 気を付けたいことと対策|構造のはなし[3]

家づくりの代表的な構造体について、専門家が分かりやすく解説する当連載。どんな工法で建てた家でも、建築場所の気候や風土、環境に合わせた施工の工夫、メンテナンスが必要だ。木造住宅では「①虫害や腐食への備え、②防音性、③建築場所に応じた風害対策などが大切」と饒平名さんは話す

虫害や音もれ、風害に配慮

多様なシロアリ対策
南国沖縄で特に気を付けたいのは、虫害(シロアリ)や腐食への対策です。高温、多湿な気候の影響で、沖縄には国内最強のイエシロアリが生息しており、虫害の被害が非常に多い地域です。また湿度が高いことからカビが発生しやすく、腐朽菌なども繁殖しやすいため木材の腐食が早く、耐久性が問題となっています。
対策としては、木構造部に防虫防蟻剤を散布する方法と合わせて、土間下に薬液による土壌処理を行うのが一般的です。そのほか、木構造材に強制的に防腐防蟻薬剤を真空加圧処理する「ACQ処理工法」もかなり有効で、お勧めです。
防蟻対策としては、「ベイト工法」「セントリコン工法」と呼ばれる工法があり、現在では最も有効な対策だと考えています。
これらの工法はまず、ステーションと呼ばれるシロアリの餌が入った筒状の容器を家の周りに数カ所設置し、シロアリをおびき寄せます。与える餌には、人畜無害でシロアリの脱皮を詐害する薬剤が入っています。その餌を食べたシロアリが巣に帰ると、そのフンによって巣全体のシロアリの脱皮が阻害され、全滅に至るという仕組みです。
シロアリや腐朽菌は、工事の施工法でも対策が可能です。シロアリや腐朽菌は湿気を好むので、床下や外壁内部を乾燥状態にする工法が適しています。

まず一つは、平板状の硬質ゴムを基礎と土台の間に設置して全外周から換気効率を上げる「キソパッキン工法」=図①。二つめは「壁胴縁通気工法」=図②。外壁材下地に2センチ程度の縦胴縁を入れ、土台上部から軒裏まで抜ける通気口を設けて壁内通気を行なう工法です。この二つが、現在、最も有効な工法だと思います。

図① キソパッキン工法

従来の工法では、コーナー部分は湿気がこもりやすく、湿気がよどむ部分もあった。



キソパッキンを施した工法では、床下全周を風が通り抜けて湿気を残らず排湿する。土台の腐れとシロアリを寄せ付けにくい乾燥した床下環境づくりに役立つ。


図② 壁胴縁通気工法
現在の主流となっている透湿防水シートを使った工法。外壁材と土台の間に設置した縦胴縁が通気口となり、壁内に湿気がこもらない。


防音材や居室配置で
木造住宅は防音性に劣り、上下階の音が問題になることがあります。
対策としては、①2階に防音シートを敷く、②階層内に防音材(グラスウール、ロックウール、硬質ウレタンフォームなど)を入れる、③1階の天井下地に防振吊り木金物(上階の床の振動を階下に伝えないようにする金具)などを採用して、振動を絶縁する方法があります。
設計上の工夫としては、2階に子ども室を設けた場合、階下に寝室や高齢者の部屋が重ならないように配慮するなどの対策も有効だと思います。

風考慮した屋根構造
三つ目の注意点として、建築する場所によっては風害を受けやすいことに考慮しなければなりません。
対策としては、設計段階において風害を受けやすい方向に対して受風面を小さくすることです。具体的にはまず、風害に強い屋根の形状、例えば屋根勾配を抑えたり、寄棟造り=写真①=などを採用することです。平屋建てにして全体の高さを抑えるのも有効な方法です=写真②。

屋根の形① 寄棟
寄棟造りは、昔ながらの沖縄家屋にもよく見られる屋根の形状=右写真。軒先が水平で、それぞれの軒先から中央に向かって屋根が上っていく​



屋根の形② 切妻(きりづま)
切妻は、中心の棟から両側に屋根が流れるシンプルな形状。平屋建てにして高さを抑えることで風が当たりにくくなる(アトリエPAD提供)



次回は木造住宅で気を付けたいこと、メンテナンス編をお話します。

執 筆 者
よへな・ちぜん/アトリエPAD代表者。
那覇市出身。軸組み工法やツーバイフォー工法での木造建築から、鉄筋コンクリート造まで、幅広く住宅建築を手掛ける。南仏風など、スタイルにこだわった住宅を多く設計する。

 

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1590号・2016年6月24日紙面から掲載

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