住まいに関するQ&A
2016年5月27日更新
木造編② 魅力とメリット|構造のはなし[2]
家づくりの代表的な構造体について、専門家が分かりやすく解説する当連載。木造住宅編2回目は、その魅力とメリットについて紹介する。「一番の魅力は、調湿・断熱効果による居住性の良さ」と饒平名さん。メリットとして、「軽量」「耐火性能の高さ」「工期が短く安価」「増改築しやすい」などを挙げる。
自然素材 健康的で低コスト
高い調湿・断熱効果自然素材である木で造った家の一番の魅力は、なんと言っても健康的なこと。木には「調湿効果」や「断熱効果」があるため、生物にとっては居住性が良いのです。
1986年に静岡大学農学部で行なった実験データでは、木箱で飼育したマウスが他の箱(鉄製、コンクリート)で飼育したマウスよりも長生きするという結果が出ています=グラフ①。
ちなみに、断熱性能(熱伝導率)は鉄の300分の1倍で、外周部の温熱環境の影響を受けにくいということです。
グラフ① 材質の違いによるマウスの生存率
軽量で耐火性能も○
次に、木造は他の工法に比べて軽量です。建物の荷重による地盤への負担が小さく、地盤改良や杭工事などがほとんど必要ありません。場所を選ばずに建設ができ、コストダウンにもつながります。
また軽量ということは、耐震性にも優れていると言えます。地震荷重は「自重(自分の重さ)×地震力」で算出されるため、軽いほうが有利なのです。
そして、一般的にはあまり知られていないのが、火災が終了するまで倒壊、延焼を防止するのに必要とされる耐火性能が高いことです。木材は火災時に表面が炭化することにより、燃焼速度が遅くなります。建物が倒壊に至るまでにはかなりの時間を必要とするため、消防士が消火活動を行う時間が確保できるという事です。
ちなみに燃焼速度は、1分間に0・3ミリから0・8ミリ。30分燃焼しても、木材の炭化が進むのは2センチ程度です。一方、鉄は550℃を超えると一気に変形し、強度が低下して崩壊に至ります=グラフ②、イラスト。
グラフ② 材質別の加熱による強度の低下
鉄は熱が加わると急激に強度が低下。木材はある程度火にさらされても、急激に強度が低下しない 資料/(公財)日本住宅・木材技術センター
30分燃やした集成材(梁)の断面のイメージ図。表面が炭化し、木の内部まで燃え進むには時間がかかる
工期短く増改築容易
他工法に比べ工期が短いことも木造住宅のメリットでしょう。鉄筋コンクリート造のように養生期間などがないため、軸組み工法だと3カ月程度で完成します。工期が短いということはコストダウンにもつながるということです。
コストの面で他の工法と比べると、やはり木造が安価であることは間違いありません。全国では木造住宅が主流ですのでスケールメリット(規模を大きくすることにって得られる効果)があり、安定した品質と安定した価格で資材が手に入ります。また、システムバスや木製建具などは木造住宅の規格に合わせた商品が主流なので標準化がしやすく、無駄がありません。
木造住宅は、解体が容易で増築や改築もしやすく、極端に言うと、平屋の屋根を取り壊して2階部分を増築することも可能なのです。長い目で見て利活用がしやすい点も、木造住宅の利点と言えるでしょう。
ツーバイフォー工法で、梁と化粧野地板を見せた吹き抜け空間が特徴のアジアンリゾート風のリビング。木質部を出して調湿効果を高めた(アトリエPAD提供)
次回は、木造住宅で気を付けたいことと、その対策法をお話します。
執 筆 者
よへな・ちぜん/アトリエPAD代表者。
那覇市出身。軸組み工法やツーバイフォー工法での木造建築から、鉄筋コンクリート造まで、幅広く住宅建築を手掛ける。南仏風など、スタイルにこだわった住宅を多く設計する。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1586号・2016年5月27日紙面から掲載