家づくり
2025年9月5日更新
RC建築で一番忙しい1日|棟上げは現場の大イベント[Aさんの家づくり 完成までの道のり⑥]
マイホームの建築は人生の一大事業。住まいづくりについて皆さんのヒントになるように、建築士の具志好規さんがAさん宅完成までの流れを紹介します。(文・写真/具志好規)

棟上げは現場の大イベント
RC建築で一番忙しい1日
その日は幸いにも天気に恵まれた。朝早くから生コン・圧送・打設・型枠・鉄筋・設備・左官の職人が集まる棟上げは、一大イベントだ。まずは打設の職人と現場を周り、コンクリートをどう打ち進めるかを決め、入りにくい箇所や注意する箇所を確認した。コンクリートは次第に固まるので、継ぎ目ができないよう順序を考えて打設する必要がある。また、勾配屋根はコンクリートが流れてくるため、硬さにも注意が必要だ。

コンクリート打設前に型枠の水洗い。コンクリートの水分が型枠に吸われないように枠を湿らせておく
水洗いした型枠内の清掃状況の確認、ポンプ車の設置、打設作業員の配置状況などを確認して、コンクリートが工場から出荷される。現場に到着したコンクリートは、強度や出荷から到着までの時間を納品伝票で、硬さや塩分量、空気量を受け入れ検査で確認する。また、後日固まったコンクリートの実際の強度を確認するための圧縮試験用にテストピースも採る。

コンクリートの受け入れ検査。現場に届いたコンクリートの品質を確認する。右が試験用のテストピース
私たちは建物を長持ちさせるため、水分量の少ない硬めのコンクリートを使用している。多少打設の労力はかかるが、密実で強い構造躯体を造る上で重要なことである。
いざ打設開始
ミキサー車からコンクリートをポンプ車に入れ、圧送の職人がホースで型枠内に流し込む。

左がコンクリートを運ぶミキサー車。右は現場へコンクリートを圧送するポンプ車
それを打設の職人がバイブレーターや木づちなどを使い充填(じゅうてん)させていく。その作業で手を抜くと、小さい穴の空いた「ジャンカ」と呼ばれる強度不足の不良箇所が出てしまう。ゆっくり丁寧に打設し、確実にコンクリートが入っているか確認することが大切だ。また、コンクリート打設の際には鉄筋や型枠、配管がズレることがあるので状況を確認し修正しながら打設を進める。

ポンプ車のホースからコンクリートを流し込む。バイブレーターを入れてコンクリートを締め固める
屋根スラブでは左官職人が厚みを確認しながらコンクリート表面をコテで平滑にならしていく。水平でない勾配屋根は作業が難しく、左官職人の腕の見せ所だ。

左官職人が屋根面のコンクリートを平らに仕上げていく。面が大きく勾配なのでより技術が必要だ
今回の棟上げの現場には総勢30人弱、多くの業種の職人がひしめいていた。こうした打設作業はチームワークが重要で、職人も私たちも互いに声を掛け合いコンクリート量60立方メートル弱、約6時間の打設作業が無事終了。RC建築の最も忙しい1日が終わった。

打設後の食事会。職人たちと「難しかったけどここまでよく出来たよね」と談笑していた
打設後、棟上げの食事会を現場で行った。朝から立ちっぱなしの作業の後の食事は格別である。施主のAさん家族とそのご両親も一緒になって職人たちの労をねぎらった。「型枠が外れたらどう見えるだろう。早く建物の形が見たいね」とAさん家族も工事関係者も心待ちにしていた。
執筆者プロフィル

ぐし・よしのり/
1981年、那覇市生まれ。沖縄職業能力大学校住居環境科卒、(有)チーム・ドリーム勤務。住宅・商業施設・教会や公共施設など幅広く設計に関わっている。
www.dream-archi.com/
以前は棟上げ式でヒージャー(ヤギ)汁とお酒もよく振る舞われていたが最近は簡略化することも多い。私も棟上げの食事でヒージャー汁のおいしさを知った。
毎週金曜発行・週刊タイムス住宅新聞
第2070号・2025年09月05日紙面から掲載