家づくり
2025年11月21日更新
高齢者の“住まい難民”解消へ 改正住宅セーフティーネット法が施行 沖縄県内で活用に向けて動きも|介護を支える 住まいの工夫(51)
10月に改正住宅セーフティーネット法が施行された。高齢者の住まいの選択肢にも広がりが期待される中、県内では(株)レキオスが新制度を活用して終身建物賃貸借契約の実現を目指すなど、機運が高まっている。

改正法が10月に施行
高齢者の住まい 支援が前進
1人暮らしの高齢者が増える中、「自宅で暮らすのが難しくなってきた」「施設に入るほどではないが、賃貸では断られるかもしれない」と悩む人は少なくない。そんな“住まい難民”問題の解消を目指し、今年10月、改正住宅セーフティーネット法が施行された。
改正の柱の一つは「終身建物賃貸借契約」の許可手続きの簡素化だ。終身建物賃貸借契約は、入居者が亡くなると契約が相続されず終了する仕組み。死後トラブルを防ぐ制度として注目される。これまでは住宅ごとに自治体の許可が必要だったが、改正後は事業者単位での申請制に変わり、所有者や管理会社が制度を活用しやすくなった。同制度で貸す側の不安が軽減され、高齢者を受け入れる賃貸住宅の増加が期待されている。
県内でも、この新制度を見据えた動きが始まっている。居住支援法人(株)レキオスは、休眠預金等活用制度の助成事業で老朽化した空き家を改修し、要配慮者の住まい確保を目的としたサブリース方式(※)での運用を進めている。同社の下地雅美本部長は「改正法の利点を生かし、終身建物賃貸借契約の導入を目指して準備を進めている。制度の実践を通じて、地域での理解と普及を促したい」と話す。

各県の取り組みに学ぶ
こうした動きを広げようと、同社は10月30日、県内各市町村の住宅・福祉部局や地域福祉関係職員などを対象とした「『終活支援』と『居住支援』と『重層支援』の実践から学ぶ」というテーマの勉強会を開いた。
講師として愛知県岡崎市財務部長の齋藤哲也さんを招き、行政と地域団体が協働する居住支援の事例を共有。参加者から、庁内横断の連携をどう構築したか具体的な質問も上がり、「現場の工夫が勉強になった。参考にしたい」との感想が語られるなど関心の高さがうかがえた。
勉強会で沖縄県の現状と今後の展望について説明した沖縄大学名誉教授の島村聡さんは「高齢者の住まい確保は、福祉と住宅、医療の連携が欠かせない課題。空き家活用や見守り支援など複数の仕組みを重ね合わせていくことが重要。行政と民間がどう連携するかも問われている」と指摘した。

10月30日に開催された勉強会で、沖縄県における居住支援の現状と課題について説明する沖縄大学名誉教授の島村聡さん。県内各市町村の住宅・福祉部局や地域福祉関係職員など約20人が参加した=那覇市のレキオスおもろまち研修室
住まいは介護生活の土台だ。下地本部長は「誰もが安心して老いを迎えられる社会に向け、みんなと連携して互いに支え合える地域の土壌を育てていきたい」と語った。
※一般的なサブリース(賃貸管理会社がオーナーから物件を一括で借り上げ、それを入居者に転貸する)とは異なる。違いは目的と意図。賃借人の負担を軽減しつつ、入居を断られがちな高齢者や生活困窮者の受け皿を広げることを目的に、国が推奨している。

しもじ・まさみ/(株)レキオス事業本部本部長。行政などど連携した居住サポート事業を受託。独自の居住支援や地域の困りごと解決にも取り組む
取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2081号・2025年11月21日紙面から掲載













