家づくり
2025年4月18日更新
保険外の「外出支援」|冠婚葬祭も家族で一緒に[介護を支える 住まいの工夫㊹]
「やりたいことがあっても、介護が必要だからと諦める前に、必要なサポートがないか、積極的な情報収集が大事」と語る「さくらの樹」代表の佐々木麻美さん。提供する外出支援の事例とその可能性について話を聞いた。

保険外の「外出支援」
冠婚葬祭も家族で一緒に
外出が心身の健康維持に看護師で介護保険外サービスを提供する「さくらの樹」代表の佐々木麻美さんは、「介護が必要な状態でも、サポートを受けることで、夢がかない、可能性が広がることを知ってほしい」と力を込める。
要介護者が外出できれば、新しい刺激が心身の活性化につながる。「特に家族と過ごす特別な時間は、本人の気持ちを前向きにし、生きがいを感じるきっかけになる」と佐々木さん。
介護保険制度の外出支援は、ケアプランに組まれた通院などは適用されるが、余暇的な外出や冠婚葬祭への参加には適用されない。そのため、介護保険外サービスのような柔軟な支援が必要となる。しかし、その存在を知らない人が多いと指摘。「積極的に情報を収集し、信頼できる事業者に相談することが大切」とした。
特別な日を家族で
佐々木さんは、介護の専門知識と旅行添乗員としての知識を併せ持つ「旅行介助士」でもあり、病院付き添いや買い物同行、旅行といった外出支援を柔軟に対応している。
先日は息子の披露宴で車いすを利用する父親の具志堅正治さん(84)に付き添い、会場での着替え、食事、トイレの介助など細やかなサポートを行った。正治さんは「子どもたちの中で初めて長男が披露宴を挙げたので、ぜひ参加したかった。その夢がかなってとてもうれしい」と笑顔で語る。息子の守さんは「披露宴を行うにあたり、父のことが心配だったが、サービスを利用したことで、私も家族も安心して披露宴の時間を過ごすことができた。父は、いつもより食事が進み、着席できた時間も長かった。安心感があったのだと思う。プロの介護はやはりすごいなと感じた」と喜んだ。また、正治さんの長女で、普段、介護を担う貴子さんも、「父のことを安心して任せられたので、落ち着いて弟の披露宴に参加できた」と笑顔を見せた。
外出支援サービスを活用した具志堅さんの事例は、要介護者自身の幸福感が高まるだけでなく、家族全員が笑顔で特別な日を迎えることができ、介護が必要でも夢を諦める必要はないと教えてくれる。
佐々木さんは「一歩踏み出すことが介護の未来を変える鍵となる」と語り、インターネットや地域包括支援センターなど、積極的な情報収集とサービス活用の大切さを呼びかけた。
介護のプロが介助

佐々木さん(左)が提供する介護保険外の外出支援サービスを受け、長男の披露宴に参加し、笑顔を見せる具志堅正治さん(中央)と長女の貴子さん。正治さんは要介護4で、普段は主に長女貴子さんの介助を受けながら、デイサービスに通ったり、訪問リハビリを受けたりしながら、自宅で車いす生活を送る。「最近は嚥下機能の低下もあり、食事も配慮が必要な状況。それでも佐々木さんのサポートがあったので安心して参加できた」と貴子さんもうれしそうに語った。

披露宴で車いすに座ったままカチャーシーを踊る正治さん。長男の披露宴に参加するという夢がかない、家族にとってもかけがえのない時間を共にできた

ささき・まみさん/「さくらの樹」代表。看護師、旅行介助士。病院付き添いや外出支援など介護保険外サービスを提供している
取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2050号・2025年4月18日紙面から掲載