家づくり
2024年11月15日更新
調査で発見 小さな穴|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第20話「築10年の木造2階建て住宅」
文・小島仁美(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)
住宅の劣化状態などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回は、建物を売却するにあたり不具合がないか診断してほしいという依頼。インスペクション沖縄の小島仁美さんが建物診断をしたところ、10年住んでいた施主も気づかなかった異変を発見した。
第20話「築10年の木造2階建て住宅」
調査で発見 小さな穴
依頼内容
築10年の木造2階建て住宅。諸事情で売却を検討。大きな台風時も雨漏りなどはなかったが不動産売買にあたり、インスペクションで異常がないか診断してもらい、報告書を付けて売却したい。
工事中、基礎内部にたまった水を抜くための水抜き穴(赤丸部分)。工事後はふさぐのが一般的。今回のケースではここから浸入した雨水が床下の水たまりの原因になっていた
床 下に水たまり
10年住んでいて、大きな台風時も雨漏りなどはなかったそうだ。ただ、見えない場所の雨漏りがあるかもしれず、インスペクションをしてほしいとのことだった。
天井点検口は1階のユニットバス、2階は納戸にあった。床下点検口は1階のキッチンに1カ所あった。屋根は瓦の勾配屋根であるため双眼鏡での確認となった。
見た目はまだ築10年ということもあり、全体的にとてもきれいである。
まず、外部から調査を始める。遠くから建物全体の汚れなどを確認。調査が大雨直後だったこともあり、目立つ劣化(外壁色の変化)は見られなかった。
次に室内の調査。2階の天井内から確認していく。小屋裏には断熱材が敷かれ、木材・金物ともにきれいな状態であり、雨水浸入の形跡は見当たらなかった。室内の窓周囲・内壁・床と調査を進めたが、特に劣化してる所はなかった。
最後に1階の床下を確認したところ、キッチンの隣にある洗面室方向に水たまりが確認できた。床下空間は30センチほどで点検口周囲に配管が密集していたため、床下に潜っての調査はできなかった。カメラを伸ばして動画撮影したところ、水は基礎側にたまっていた。
洗面室の外側。雨水枡にごみがたまって排水できず、水がたまっていた(イメージ)
開 いたままの水抜き穴
原因として考えられるのは、
・給排水設備の接続不良
・配管やパッキンの劣化
・基礎などのひび割れ
などだ。給排水管からの漏れは状況から考えにくかったので、先に基礎のひび割れなどがないか確認することした。洗面室の外側を見ると建物周囲の土間に薄く水が張っていた。調査前の大雨で土間にたまった雨水が排水しきれてなかったようだ。水がたまっている事で、基礎周辺からの雨水浸入の可能性が一気に高まった。
なお、土間の水たまりは雨水を集水する雨水桝(ます)にごみがたまり、排水不良を起こしていたようだ。雨水桝の清掃をするとすぐに水は流れていった。
基礎にひび割れがあるか入念に確認したが見当たらなかった。しかし、基礎の立ち上がり部分に小さな穴があった。おそらく「建物基礎の水抜き穴」である。工事中は水抜き穴として必要だが、工事完了後は虫などが侵入する恐れがあるためふさぐのが一般的だ。今回は、土間にたまった雨水が水抜き穴を通り、建物基礎内部側(床下)へ浸入したようだ。
同行していた依頼者(居住者)に、雨水桝の清掃と水抜き穴の補修をすることで、解決するだろうと伝えたところ「売却前に気づけてよかった」と安心されていた。
解決策・アドバイス
◆今回は大雨の直後にインスペクションをしたこともあり、床下の水たまりをスムーズに発見できた。調査時の雨は嫌なものだが、雨浸入が見つけやすい利点もある。晴天時の診断では、散水装置などを用いて人工的に雨を降らせることもある。
こじま・ひとみ/既存住宅状況調査技術者、二級建築士
電話=098・877・9610
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2028号・2024年11月15日紙面から掲載