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2024年10月18日更新

【人物紹介】引き算の建築美を目指して|松島デザイン事務所 代表者の松島良貴さん[ひと]

住宅の設計をメインに、自社で施工も手掛ける松島デザイン事務所。コートハウスを得意とし、先月も床面積10坪余ながら光と風が満ちる狭小住宅を完成させた。代表の松島良貴さん(52)は「目指すのは引き算の美。頑丈で、住み手や自然が引き立つ家を造りたい」と話す。

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規則性でやすらぎ&コスト圧縮



松島デザイン事務所
代表者 松島 良貴さん


〈プロフィル〉まつしま・よしたか/1972年那覇市生まれ。99年、琉球大学工学部大学院修士課程卒業。2000年、松島デザイン事務所設立。20年、中城村に事務所を移転。手掛けた仕事は住宅はじめ店舗や保育園など多数。ポリシーは「価格以上のものづくりでお客様に喜んでいただくこと」。

◆松島デザイン事務所
 中城村南上原817 南上原ハイツB棟
 電話=098・961・2182


-手掛けた家はどれも、コートや天井高いっぱいの窓から光と風が入り、気持ち良さそうです。

住まいはそこで暮らす家族が主役。家族の個性や共に暮らすペット、生活に彩りを添える光や風、景色を引き立てるのが家だと考えます。だからこそ極力シンプルに。そぎ落とすことによる、普遍的な建築美を目指しています。

そのための工夫の一つが寸法。例えば先日完成した10坪余の家なら、5メートル四方の正方形が基本形となっており、その2倍、あるいは2分の1倍で部屋割りを構成しています。音楽でもそうですが、規則性のある空間は、無意識のうちに安らぎや安心感をもたらすと考えます。加えて窓や建具を天井高と合わせスッキリさせれば、自ずと景色に目が行きますからね。
 
うるま市の変形地に建つ10坪余の家。天井高いっぱいの窓や隣接するコートの効果で、明るく使い勝手のいい空間に

この基準となる寸法は、敷地の条件や家族構成、住み手の身長、生活スタイルなどによって一軒一軒違います。それを導き出すのが一番苦労しますが、こうした幾何学に基づく造りはシンプルで施工しやすく、ムダも省け、結果としてコスト圧縮につながります。

使う素材の種類を極力絞るのも同じ理由から。一度に目に入る素材は、少ないほど心が落ち着く感じがしますし、工事の種類も、費用も減らせます。

-12年前からは自社で施工まで手掛けているそうですね。

現場は天候や工事の進み具合、収まりなど、予定通りに行かないことも多い。大なり小なり、毎日が選択と決断の連続です。以前は施工会社に依頼していましたが、図面を引いた者として責任を持って仕上げたいと現場に通い詰めるうち、職人さんたちとの信頼関係もできてきて。「そこまでやるなら自分で施工まで請け負った方が良い」と背中を押してくれ、うちに来てくれたのがきっかけです。

学生時代のアルバイトから数え切れないほどの建築現場を経験してきましたが、腕のいい職人さんほど心根が良くて明るく前向き。建築はいろいろな人が関わる分、一筋縄でいかないことも多いんですが、すべてをコントロールしながら皆をまとめ上げ、目指すモノを一緒に作り上げていくこの仕事は、ほかに変え難いほど充実しています。

センスより努力。建築が好きな若い世代こそ挑戦し、この充実感を味わってほしいですね。

-独立して24年。台風時のアフターケアなど、お施主さんとの関係は今でも続いているとか。

おかげさまで紹介もあって現場は本島全域にわたり、4年前には事務所を中城村に移転しました。遠方からの相談も増えているので、いずれ北部にも拠点を持ちたいと考えています。

今後も「価格以上のものづくりで喜んでいただきたい」との初心を忘れず、1軒1軒、真摯に取り組み続けます。
 

コートハウス 変形・狭小にも
緻密なコンクリートで頑丈に
 
事務所のホームページでコートハウスの魅力について紹介する松島さん。「隣家や通行人の目を気にすることなく窓が開けられ開放的。防犯性にも優れている」と言い、狭小地や密集地、変形地でも、それが気にならないほど明るく風通しのいい住宅を多数手掛けている。
 
那覇市の住宅密集地に建つコートハウス。中庭を囲むように居室を並べたことで、カーテン要らずの開放的な暮らしを実現


また「頑丈で美しく劣化しにくい住まいを」との考えから、スランプ値8と水分が少なく緻密な生コンを使用。「強度の高いコンクリートで基礎から本体工事まで仕上げるため、ひび割れしにくく水の浸食から家を守れる。建物自体も幾何学に基づく造りとなっているため、構造的に安定し揺れにも強い」と話す。
 

取材/徳正美
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」
第2024号・2024年10月18日紙面から掲載

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