企業・ひとの取り組み
2023年9月22日更新
古さ生かしてかっこよく|伊波英吉さん THE OLD TOWN(ザ オールド タウン)代表|家々人々[137]
住宅や店舗の内外施工、家具・雑貨製作、植栽まで手掛け、オールドテイストのかっこいい空間づくりが人気の「THE OLD TOWN」伊波英吉さん(40)。一昨年、千葉県から家族でUターン。古民家を自分で修繕したという今帰仁村の自宅で話を聞いた。
古さ生かしてかっこよく
いは・えいきち/1982年、浦添市出身。小学2年生のとき家族で千葉県へ引っ越す。2006年、家具や雑貨、住宅店舗の内外施工、植栽を手掛ける「THE OLD TOWN」を創業。「小屋のある庭」の企画施工にも力を注ぐ。結婚後、2人の子どもに恵まれ、沖縄で子育てがしたいと、21年、家族で今帰仁村に移住。■古さとかっこよさが同居するすてきな家ですね!
築47年になるこの家は、長いこと無人で土台が腐って床が抜け落ちるほど老朽化がひどかったんです。修繕は大掛かりでしたが、もともとあった食器棚をカウンター棚にしたり、扉のガラスをリビングと洋間を仕切る壁に使ったり、建材をなるべく再利用するようにしました。
新品の家具もわざと古びたように加工して、アンティークの家具とも調和するようにしています。また、取手部分を鉄の馬蹄(ばてい)に変えて遊んだり、雑貨や寄せ植えを置くと目にするだけでなんだか楽しい。毎日の暮らしが豊かに感じられます。
庭も長年放置され、草木が茂りハブが出て危険だったので、だいぶ伐採して整理しました。本来は平らでしたが、あえて土を入れて起伏を作り、亜熱帯植物で誘導する小道を表現しました。息子も自転車で走り抜けるのがお気に入りです(笑)。
現在の住まい
築47年の古い家と庭を家族で修繕。家具やインテリアも自分で作り、オールドテイストのかっこいい空間に仕上げた
■千葉から移住した感想は?
子どもをやんばるの自然の中で育てたいという妻の希望もあり、移住を決めました。
僕は子どものころ、国頭村の祖母の家によく遊びに行っていました。茅葺(かやぶき)の屋根や、すすで黒くなった天井、あめ色に光る床、薪(まき)で沸かす五右衛門風呂など、全部がかっこよかった。そんな祖母の家の匂いがイジュの花の香りとともにすごく記憶に残っているんです。いかに豊かな経験だったか、沖縄を離れて改めて気づきました。
千葉でも森の中に店舗兼住宅を建てて、五右衛門風呂と薪ストーブで暮らしていました。寒い冬に薪をくべると暖かく、音や匂いが広がります。ゆったりとした時間の中に、火を守る緊張感もありました。キンモクセイの香りがしたら薪を調達するなど四季を感じて暮らしていましたが、沖縄ではそれができないので物足りない気もします(笑)。
でも子どもたちは、きれいな月を見て宇宙や惑星に興味を持ったり、見たことのない花や虫に関心を持ったり、積極的に動くようになり、想像力が豊かになった。楽しそうに過ごす家族を見ると移住して良かったと思います。
■今後の目標は?
庭に小屋を作り、理想の庭を完成させたい。趣味やアトリエとして使うような小屋のある庭づくりを沖縄でも広めていきたいんです。ここをその魅力を伝える拠点にしたいと思っています。
プライベートはこんな顔 自宅は床、壁、天井も全て自分たちで張り替え、塗装した。リビングはアンティーク家具に、手作りした植栽スタンドや植物を配置して、空間づくりを楽しんでいる
◇ ◇ ◇
ホッと空間
植物に元気をもらう庭
植物に元気をもらう庭
多種多様な亜熱帯植物で彩られた伊波さん自慢の庭。「沖縄では亜熱帯植物が露地栽培でも元気に大きく育つ。その成長を見ていると、なんだか元気をもらえるような気がするんです」と笑顔で話す。
取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜日発行 週刊タイムス住宅新聞
第1968号・2023年9月22日紙面から掲載