家づくり
2023年4月21日更新
施設選びのポイント(1)[介護を支える 住まいの工夫㉑]
高齢者施設は種類が多く、どんなふうに選べばいいか戸惑うことも多い。そこで、介護支援専門員の新城和三さんが要介護者の状態に合わせた施設選びを3回に分けてアドバイス。初回は「認知症が進んだ人の施設選びのポイントについて」です。
施設選びのポイント(1)
認知症が進んだら?
家族にとって介護負担が大きくなると、介護施設を利用することが考えられる。「介護保険の認定を受けていれば、基本、どこでも入所は可能。ですが、どんなケアを受けながら、どんな生活をしていきたいかで施設選びは変わる」と新城さん。
認知症患者には、その進行に応じた個別の適切なケアが必要とされる。そんな認知症のケアに重点を置くのが、グループホームと呼ばれる「認知症対応型共同生活介護」だ。
グループホームは、専門的なトレーニングを受けたスタッフが本人の状態に合わせて対応する少人数の小規模な施設。家庭的な雰囲気が特徴だ。できることは自分でやるのを基本に、食事や入浴、排せつなどの介護に加え、レクリエーションや趣味活動の提供、24時間体制によるスタッフの常駐、医療機関との連携など、安全で心地よい環境づくりに配慮されている。入所するには、要介護認定を受けていることや、施設のある市町村に居住している人であることなど条件がある。
施設の特色を見極める
介護老人保健施設は、病院と併設されていたり、医療スタッフが常駐しているなど、適切な医療処置や緊急時の対応が受けやすい。しかし、自宅での生活復帰を目指し、機能訓練を行うことを目的とする施設なので、滞在は基本数カ月であるなど、他の介護施設に比べて入所期間が短い。
特別養護老人ホームなどの介護老人福祉施設は、要介護3以上の認定を受けている人が対象。看取(みと)りも対応する。ただし、看護師は夜間に滞在しないため、医療的ケアの内容や頻度が多い場合は入居できない可能性があり、待機者も多い。
比較的、入居がしやすいと言われているのが、民間の有料老人ホーム。新城さんは、「研修を受けた介護職は、たん吸引や胃ろうケアも行えるが、そのような人材や医療職の配置があるかで、施設ごとに受けられるケアやサービスに差が出る」と指摘。「施設選びは、担当のケアマネジャーに相談しながら、その施設の特色を知り、どの程度のケアができるか見極めることが大事。入居前に、実際に見学し、施設の雰囲気や設備、スタッフの対応など確認してほしい」と話す。
あらしろ・かずみ/(一社)沖縄県介護支援専門員協会副会長。(同)Off-JTおきなわ代表社員。介護福祉士・社会福祉士、主任介護支援専門員
認知症が進んだ人のための施設選びは、担当のケアマネジャーと相談を。入居できる施設は、以下の他にもある。入居前の見学も大事!
認知症対応型共同生活介護 (グループホーム)
条件▼
要介護1~5
要支援2
施設と同市町村に住む人
認知症と診断された高齢者が5~9人程度の少人数でスタッフと共同生活を営みながら、認知症の緩和を図ることを目的とした施設。入居者は家庭的な雰囲気の中で、自分たちの食事はできるだけ自分で作るなど、能力に応じて無理のない範囲で役割分担して生活する。医療的ケアがあったり、徘徊(はいかい)や不安が強く落ち着かないなど、BPSDと呼ばれる認知症の周辺症状によっては、入所できないこともある。
介護老人保健施設(老健)
条件▼
要介護1~5
退院後の高齢者が居宅における生活への復帰を目指し、機能訓練などを受けることを目的とした施設。入院中に認知症を発症した場合や医療的ケアがあるときも介護を受けられる。入所期間が基本数カ月と他の介護施設に比べて短い。特別養護老人ホームと比べて、看護スタッフがやや多め。
介護老人福祉施設 (特別養護老人ホーム:特養)
条件▼
要介護3~5
寝たきりや認知症などにより日常的な介護が必要で、住宅介護が困難な高齢者が利用する施設。食事や入浴など日常生活の介護や健康管理が受けられる。介護スタッフが多いことが特徴。医療的ケアの内容や頻度が多い場合は入居できない可能性がある。看取り(みとり)も可能で、他施設と比べて比較的低額。待機者が多い。
有料老人ホーム
条件▼
施設による
主に民間事業者が経営。食事、入浴、排せつなどの介護。掃除、洗濯などの家事。健康管理などのサービスを提供する。施設が提供する介護サービスを受けることができる「介護付有料老人ホーム」と、外部からの在宅介護サービスを受けながら、住み続けることができる「住宅型有料老人ホーム」の2種類がある。
取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1946号・2023年4月21日紙面から掲載