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2020年4月17日更新

建材ピックアップ| 塩害に強く耐用年数は倍以上 長寿命コンクリート

県内では鉄筋コンクリート造の住宅が主流。頑丈で台風に強いというメリットがあるが、塩害による劣化が最大の弱点だ。築年数が30年ほどになると、ひび割れや爆裂などが見られることも少なくない。その短所を払拭し、建物寿命を倍以上に伸ばせる二つの混和材入りコンクリートを紹介する。

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コスパ高く省エネ「高炉スラグ」

①「高炉スラグ」とは鉄を生産するときに出る副産物②コンクリートに混和すると塩分や水分、化学物質に対する耐久性が上がり、時間の経過とともに強度が増す③省エネルギー(コンクリート製造時のCO2排出量を普通コンクリ―トより約3割削減)④総工事費の1%ほど上乗せになる

施工性は普通と変わらず
ことし3月、戦後としては県内住宅で2棟目となる「高炉スラグコンクリート」の打設が南風原町で行われ。約70坪の2世帯住宅だ。打設の見た目は、普通のコンクリート住宅と変わらない。左官職人も「普段の打設と同じ。作業性に変化はない」と語る。高炉スラグとは、鉄を生成するときに出る副産物。コンクリートに混ぜると組織が緻密化し、塩分や化学物質などが侵入しにくくなる。さらに時間の経過とともに強度が増す。「通常のコンクリート建造物より耐久性が高い。長持ちするということは、コストパフォーマンスが高いということ」と語るのは昨年、高炉スラグを使った住宅を手掛けた根路銘安史さん。二酸化炭素の排出を削減できるので地球環境にも優しい。本土では100年以上前からコンクリート混和材として使用されてきた高炉スラグだが、沖縄には高炉メーカーが無く、流通しなかった。2015年にプロジェクトチームが発足してから少しずつ広まり、現在は台湾から高炉スラグを輸入。㈱EーCON協力の下、住宅などに用いられている。


高炉スラグコンクリート打設の様子。職人たちは「普通のコンクリートと変わらない」と話す。ただ、初期強度の発生が穏やかなので、型枠を外す時期を2日程度、延ばす必要がある




【高炉スラグコンクリートの塩化物の浸透】高炉スラグセメントと普通セメントを用いたコンクリート試験体を5年間波しぶきのかかる場所に放置した後、塩分含有量を調べたもの。普通セメントの場合内部まで塩化物イオンが浸透している一方、高炉セメントコンクリートの場合は、塩化物イオンは表面部分にとどまっている


【コンクリート1㎡あたりの二酸化炭素排出量イメージ


孫・ひ孫の代まで住みたい
今回、高炉スラグコンクリートによる物件を手掛けたのは県内外で活躍する建築家の伊礼智さん。「空き家が問題になっている昨今、新たに建てるなら、長く快適に住める『ロングライフデザイン』を考えるべきだ。多方面に負担が少ない建築を目指す時代になっている」と語る。
中でも高炉スラグコンクリートは「塩害に強いことから沖縄に適している」。施主に提案したところ「孫・ひ孫の代まで、安心して住みたい」と賛同してくれたという。
高炉スラグコンクリートを使ったことでアップした金額は、同物件で50万円ほど。施工を手掛けた㈱アイムホームの専務取締役・三家本真大さんは、「人件費と材料費が半々くらい。高炉スラグを使っての施工は初めてだったが、問題はなかった。今後、施主からの相談があれば応じる」と語る。
伊礼さんと一緒に同物件を手掛けた建築士・新垣朝憲さんは、「通常のコンクリートに比べて金額が少し高くなるため施主の理解が必要。だが、需要が増えればもっと安く供給できると思う」と話した。



左からアトリエ・ネロの根路銘安史さん、今回、高炉スラグの物件の設計を手掛けた伊礼智設計室の伊礼智さんとA&Cworkshopの新垣朝憲さん、施工を行った㈱アイムホームの三家本真大さん。
高炉スラグコンクリートに関する問い合わせは沖縄RC構造物高耐久化プロジェクトチーム(電話080・7766・5372/森崎重則)


 

安定した品質&県産品「加熱改質フライアッシュ」

①「フライアッシュ」とは火力発電所から排出される石炭灰②不純物を除去してコンクリートに混和すると塩分や水分、化学物質に対する耐久性が上がり、時間の経過とともに強度が増す③県内の火力発電所から出た石炭灰を県内で加工した「県産品」。さらに、本島ほぼ全域に安定した品質の「JIS規格生コン」として供給可能④総工事費の2%~3%ほど上乗せになる

県内で普及が進む
金武町とうるま市の火力発電所から排出された石炭灰(フライアッシュ)を、同市州崎にある㈱リュウクスの工場で加工。不純物を除去し、「加熱改質フライアッシュ」にする。それをコンクリートに混ぜることで、「フライアッシュの粒子が化学反応を起こし、コンクリート内部が緻密化。塩分や水分など劣化因子の侵入を防ぐ。この化学反応は施工をした後も、十数年にわたり継続することから、耐久性が大幅にアップする」と同社・技術営業部長の南出拓人さんは説明する。塩害の影響を受けやすい環境下でも耐用年数が2倍以上になり、「100年持つ可能性を、県は実構造物で検証している」。県は、橋桁などの重要な構造物においてフライアッシュコンクリートの利用を推奨しており、宮古島の伊良部大橋にも用いられた。「産業廃棄物が原料なので、資源循環にもなっている。沖縄に適した建材で、かつ環境にも優しい」

美しい仕上がり面
もちろん、住宅建築にも利用できる。「フライアッシュコンクリートは組織が緻密なので、仕上がり面は滑らかでツヤが出る」。建築コストは、通常のコンクリートと比較して総工事費の2~3%ほど上乗せになる。「初期費用は若干高くなるが、建物を長く使うことを考えればメリットは大きい」と話す。
県内で着実に使用実績を増やしている加熱改質フライアッシュコンクリート。現在、県内では10以上の生コン工場が国家規格となる「JIS工場」として認定されており、「本島では国頭村を除くほぼ全域、離島では宮古島などにもJIS規格生コンとして、フライアッシュコンクリートを供給することができる」と南出さんは話した。


【加熱改質フライアッシュで施工した県内の住宅緻密に仕上がるため、表面は滑らかで光沢がある。気泡の後も少ない。生コン(固まる前の状態)の流動性があり、施工性が高い。注意点としては初期強度がやや低いので型枠を外す時期を2日ほど延ばす必要がある


【コンクリート(FA・普通)圧縮強度比較グラフ赤線がフライアッシュコンクリートで青線が普通コンクリート。赤線の方が時間経過とともに強度が増している。これは数十年にわたり継続する



(株)リュウクス。加熱改質フライアッシュの製造販売を行う。問い合わせは同社(電話098・939・1181)

取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1789号・2020年4月17日紙面から掲載

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東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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