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2026年1月4日更新
【タイムス住宅新聞 2026新春特別号】沖縄で主流のRC造住宅に長く住みたい! 弱点を知る建築士が挙げるポイントは?
沖縄県内で主流の鉄筋コンクリート(RC)住宅に長く住むため、躯体に対し新築時からできることは何か? 長年RC造の保存活用に取り組み、東京理科大学で関連研究を行うアトリエ・ネロの根路銘安史さんは「RC造の弱点はコンクリート内部の鉄筋がさびること。腐食に必要な水を浸透させないことが大事」と話す。

躯体編
強度、塗装、デザイン、周辺環境
水を浸透させない工夫を
「R C造でコンクリートに水分が染み込み中の鉄筋に届くと、鉄筋がさびて膨らみコンクリートを割る。するとさらに水が入る。この悪循環を防ぐには、腐食に必要な水と酸素の供給を止めること。特に水を止めることで建物は健康で長生きします」と根路銘さん。
コンクリート内部に水を浸透させないために新築時からできる対策は、①鉄筋のかぶり厚さを大きくする、②コンクリート密度を高める、③建物表面で水の影響を止める、④建物の形で水の影響を受けにくくする、⑤周辺環境で水がかりを抑え、飛来塩分の影響を軽減する、の五つ=下図参照。
初期コストは多少割高になるが効果が大きく、新築時だからこそできる工夫は①と②。「生コンの細骨材率を高めて水分を減らしたり、混和材を入れたり、コンクリート打設時に締め固めたりして、コンクリート密度を上げると、水が浸透しにくくなる。コンクリート表面から鉄筋までの距離(かぶり厚)を大きく取って雨などの影響を受けにくくするのもいい。那覇市民会館で温湿度センサーを使い実験した結果からも、かぶり厚は50ミリ以上あると雨の影響を受けにくくなることが分かっている」と話す。ただし、②は建築士や施工側の理解や知識、技術や経験が求められるという。

※表面含浸材とは、コンクリート表面に塗布することで内部に浸透し、表層部を緻密化したり撥水性を持たせたりして、吸水抑制や劣化防止、耐久性向上を図るための保護材
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取り入れやすいのは屋上防水
費用はかかるが効果が確実で劣化度合いが確認しやすい上、一般的に取り入れやすいのが③の防水塗装。建物表面に膜を作って水の影響を防ぐ。「優先すべきは屋根スラブで、ベランダや廊下、階段なども行うとよりベスト。ただし、定期的にトップコートを塗り替えれば防水層まで塗り直す必要がないが、放置すると防水層から塗り直さなければならなくなる=下図参照。コストがかかり防水効果も薄れる」と注意を促す。ほかには、コンクリートに浸透させて撥水させる表面含浸材を使う方法がある。
打つ手の幅が広いのは④。「例えば水がたまりやすい屋根やベランダには勾配をつけると排水しやすくなる。軒や庇があれば外壁に雨があたるのを避けられる。建物に雨が直接あたっても、すぐ水が切れればコンクリートに染みこみにくく汚れも付きにくい。水を切るデザインはいろいろあるので考えてみてほしい」と促す。
⑤の代表的な例は防風林だ。「海風を受けやすい場所は、防風林で水と塩を含んだ風から建物を守ることができる。植物=鑑賞用と考えがちだが、強風や塩分から家を守ったり、木陰を作って温度調整してくれたりと役割があるものも多い。①〜④と組み合わせるとなおいい」。

一番ノーマルなウレタン防水の断面図。コンクリート面にプライマーを塗り、ウレタン防水主材を塗り、その上に保護材(トップコート)を塗る。保護材が残っているうちに塗り直せば、そこだけの補修費用で済み、建物への影響もない
人も家もお手入れ次第
那覇市民会館や今帰仁村中央公民館、奥武島の築45年の住宅などの調査で分かったのは「コンクリートが剥落しているのは主に屋根スラブやベランダ」。原因は「ゴミが排水溝をふさぎ水がたまっている、植物が生い茂って湿度が高い、クーラーの室外機の水でベランダ表面が常に濡れている、屋根表面の仕上げ材が浮いて水が浸入している」など。つまり「常時湿った状態が問題」というわけだ。
「人も建物も同じ。服や傘が風雨や紫外線から身を守るように、建物も塗膜や植物などで保護すれば長生きする。建築費が高騰し家を建てるのが難しくなってきた今、長く住むのが一番ローコスト。建物が健全なら資産価値が維持され、活用の幅も広がる。建てて終わりではなく、毎日鏡を見るように、家の周りや屋根上を見て回ることから始めてみて」とアドバイスした。
編集/徳正美
毎週金曜日発行『週刊タイムス住宅新聞』 2026新春特別号
第2087号 2026年1月4日紙面から掲載










