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2025年12月19日更新
イランの紡績工場を見学した、沖縄のラグ専門店のバイヤー 「糸に木くずが入り込む問題」の答えは見つかったのか|ラグの世界㉑
イランやトルコなどの中東で手織りされるラグを取り扱う那覇市西の「Layout(レイアウト)」のバイヤー、平井香さんによるラグ買い付け旅記。前回に引き続き、イランのウール糸の紡績工場を見学した様子を紹介。後半の7工程と「日本でラグを検品するときに糸に木くずが入り込んでいる問題」に、平井さんが出した答えを綴る。

エピソード㉑ イランで紡績工場を見学(後編)

糸を撚(よ)る機械。単糸を2~5本撚りにしていく
「梳き」や「撚り」をへて
ラグの原料ウール糸に
アルダビールにあるウールの紡績工場で糸が完成するまでを追っていく。前回は、①原毛を色で仕分ける②ウールをほぐしごみを落とす③50~60度の湯で洗う④脱水⑤乾燥⑥プレスする⑦再びごみや木くずを落とす⑧オイルやトリートメントをスプレーする⑨倉庫で一晩寝かせ、オイルをなじませる
の前半9工程を紹介した。
私が知りたかった、「なぜ糸に木くずが入り込んでいるのか問題(日本でラグを最終検品するときにウールの糸に入り込んだ木くずの除去に苦戦している)」は答えが見つかるのか。
何度もごみ落とし
一晩倉庫で眠らせたウールたちは、倉庫から管を通って天井に吸い上げられて大きな機械へと移動していく。
⑩ごみを落としながら、最初のカーディング(梳(す)き)
塊のウールをほぐしてごみや木くず、短い繊維を落としながら梳いて薄い綿の状態にする。
⑪木くずを落としながらもう1度カーディング
⑫最後のカーディング
ここまで木くずを落としながら梳く工程を3回繰り返し、繊維の方向をそろえながら密度を上げていく。工場のマネージャーの話によると、ここはラグ用の糸を作る工場で、洋服のニットの糸の場合はさらに梳く工程を繰り返すとのこと。ふわふわの綿の状態になったウールは細長くなって機械から出てドラム缶にソフトクリームのように詰められていく。この「ふわふわソフトクリーム製造機」が楽しくて、長く観察してしまった。

カーディング(梳き)を3回繰り返してふわふわのソフトクリームみたいになった状態
⑬1本の糸にする
ここでは8番と呼ばれる太さの糸にする。1キロで8メートルの糸が作れる太さを8番手、20メートル作れる太さが20番手となり、数字が大きくなるほど糸は細くなる。
⑭撚糸(ねんし)
単糸を撚(よ)り合わせて双糸を作る。客のオーダーによって、ここの機械では2本撚りから5本撚りの糸を作っている。
⑮巻き替え
きれいに巻き替えて製品化
⑯パッキング
袋にギュッと詰めてウールの糸の完成! 最後に人の手でビニールのひもと針で袋の口を止めるところもなんだかいい。

ウール糸の完成。この後、人の手で袋詰めされ出荷される
◆ ◆
「木くず問題」の答え
16工程をへて、ついに糸が完成した。「木くず入り込み問題」は、何度かごみを落とす工程を経てもウールの繊維に絡むため、なかなか手ごわいことが分かった。何度も木くずについて質問する私に、マネージャーは「もっと強い薬を使って洗えば木くずは落ちるけど、そうするとウールが痛んでよくないんだ」と教えてくれた。全国のおいしい野菜をセレクトする八百屋さんに「虫に強いトマトを作ろうとすると味が落ちる」と聞いたことを思い出した。
糸になる工程を見させてもらったおかげで、木くずに寛容になれそうな気がしている。私たちが検品を頑張って、お客さまに安心して使っていただけるようにすることは変わらない。「手がかかるほどかわいい」という気持ちでピンセットを握る。手つむぎの糸の場合はもっと木くずをとるのが難しくなるが、これもラグの個性と受け止めることも大切なのかもしれない。

執筆者/ひらい・かおり
ラグ専門店Layout バイヤー
那覇市西2-2-1
電話=098・975・9798
https://shop.layout.casa
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2085号・2025年12月19日紙面から掲載










