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2025年9月19日更新
[不動産の日2025]新築・建て替え時 不発弾探査を|県事業で全額補助
1974年、那覇市小禄の聖マタイ幼稚園近くの工事現場で不発弾が爆発し、子どもを含め4人が死亡、34人が重軽傷を負った。沖縄県はその事故を契機に、地中に残る不発弾の探査に力を入れている。「住宅等開発磁気探査支援事業」では住宅の新築・建て替え、そのほか民間工事予定の土地における磁気探査費用を原則、全額補助している。同事業や県内の現状について紹介する。

県事業で全額補助 新築・建て替え時 不発弾探査を
戦後80年 今なお不発弾1800トン超戦後80年たった今も、県内では毎日1〜2発のペースで不発弾が見つかっており、いまだ地中には1800トン超が埋没していると推計されている。今年6月には米軍嘉手納弾薬庫地区で不発弾の破裂事故があり、危険性は変わらないことが明白になった。県では住宅の新築や建て替え、その他の民間工事を行う際の不発弾探査の費用を原則全額補助する事業を実施しており、県や同事業を請け負う(一社)県磁気探査協会(仲宗根昌博会長)は積極的な活用を呼び掛ける。

(一社)県磁気探査協会
仲宗根昌博会長(左)と儀保五十一副会長
住宅等開発磁気探査支援事業
住宅の新築や建て替え、その他の工事を行う際に不発弾探査にかかる費用を県が原則、全額補助する「住宅等開発磁気探査支援事業」。安心・安全な暮らしのためにもぜひ活用しよう、詳細はこちらからも見られる。

事業活用で原則全額補助
県内どこにでも
沖縄戦で米軍の猛烈な艦砲射撃を受けた中で、生き残った人を「艦砲の喰い残し」と表現した沖縄民謡『艦砲ぬ喰ぇー残さー』。長年、不発弾探査に携わる県磁気探査協会の儀保五十一副会長は、この歌詞を引き合いに「不発弾は県内のどこからでも発見されており、歌通りのすさまじい戦況だったことが分かる」と話す。同協会の資料によれば、その艦砲弾ですら2017年度までに発見された不発弾の22%で、地上火器によるものが57%、航空攻撃によるものが13%となっている。
「いまだ地中には1800トンを超える不発弾が埋まっている。皆さんが住んでいる家も、建築時に探査をしていなければ、敷地内に不発弾が埋まっているかもしれない。それが地震など、なんらかの刺激で爆発する恐れもある」と同協会の仲宗根昌博会長は警鐘を鳴らす。
今年6月には、米軍嘉手納弾薬庫地区で不発弾のサビを落とす作業中、衝撃が信管に伝わり破裂。隊員4人が火傷などを負った。長年眠っていた不発弾でも殺傷力があることが明らかになった。

2025年7月、那覇市首里の中城御殿御内原エリア新築工事現場で磁気探査により発見された125キロ爆弾の処理が行われた(沖縄タイムス提供)
20件に1件不発弾
県では2012年から、住宅の新築や建て替え、店舗などの民間工事予定の土地の不発弾探査に掛かる費用を原則100%補助する事業を行っている。不発弾が見つかった場合でも処理費用は公費で賄われる。
今年3月までの13年間で、2310件を探査し128件から不発弾が発見された。同事業を担当する県危機管理課の松竹元士班長は「20件に1件の割合で発見されている。決して少ない数字ではない」と注意を促す。
「特に那覇市、糸満市、浦添市、西原町、南風原町、南城市など住宅地として人気のエリアから多く見つかっている」と漢那隼人主事も話す。
県は今年から8月を不発弾処理推進月間に制定。不発弾の危険性や磁気探査支援事業などの周知に取り組む=下写真。
8月は不発弾処理推進月間

沖縄県は戦後80年の節目の今年、毎年8月を「不発弾処理推進月間」に制定した。自衛隊による不発弾処理が初めて行われたとされる1972年8月3日に由来する。同月間は、不発弾の危険性や磁気探査支援事業などの周知などに取り組む。8月1日〜7日には県庁1階でパネルや模擬弾の展示が行われた。
建築に組み込んで
事業の認知度は少しずつ上がっているものの、探査件数がなかなか伸びないのは「スケジュールがネックになっているようだ」と儀保副会長。
申請から交付決定までに2週間程度、探査期間は敷地面積などによって異なるが、基礎の深くない一般的な一戸建てで2週間程度掛かる。「しかし、安心・安全な暮らしは何物にも代えがたい。せっかくマイホームを建てるのであれば、建築工程に『磁気探査』も組み込んでもらいたい」。
仲宗根会長は「次世代に〝負の遺産〟を残さないためにも、公共だけでなく民間工事でも不発弾探査が当たり前になってほしい」と力を込めた。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆
補助を受けられる対象は?
A 住宅やアパートの新築・建て替えなど、民間の工事予定地
住宅の新築や建て替え、各種事業所、店舗、土地造成といった民間の工事予定地が対象。面積による制限はないが、過去に同事業の補助を受けたことがある土地は対象にならない。ただし、建て替えなどで以前よりも基礎が深くなる場合などでは補助の対象となる可能性がある。
探査の方法、期間は?
A 専門業者による磁気探査。申請受理から探査終了まで約1カ月
不発弾が主に鉄製なので、磁力を利用した磁気探査で地中に鉄類が埋まっていないかを調べる。探査は専門業者が行う。申請受理から探査開始まで約2週間。その後、探査に約2週間かかる(敷地の広さなどにより異なる)。
探査に掛かる費用は?
A 原則として申請者の負担はなし
県の予算内であれば原則、全額補助されるため申請者の負担はない。ただし、樹木の伐採や所有物の撤去などは申請者自身で行う必要がある。
申請方法は?
A 申請書類を建設予定地の市町村窓口に提出
不発弾等処理事業のパンフレットにある「住宅等開発磁気探査支援事業申請予定表」に記入し、建設予定地の市町村窓口に提出。
不発弾を見つけたら?
A 近寄らず、すぐ警察に連絡!
万一、探査していない場所で不発弾を見つけたら、近寄ったり触れたりせず、すぐに警察へ連絡を! 探査中に不発弾が見つかったら建設予定地の市町村、県、自衛隊で処理方法を協議の上、後日処理作業を実施する。費用はすべて公費で賄われる。
近所で不発弾が発見されたことがあるかを知る方法は?
A おおよその位置を調べられるデータベースがある
沖縄総合事務局による「沖縄不発弾等事前調査データベースシステム」を使えば、不発弾の発見場所などを地図上に表示して確認できる。誰でもインターネットで閲覧可能。

那覇市久茂地周辺を調べた様子。赤い印は不発弾が発見された場所。
※画像は「沖縄不発弾等事前調査データベースシステム」を切り取って使用
※画像は「沖縄不発弾等事前調査データベースシステム」を切り取って使用
↓画像をクリックすると、「沖縄県磁気探査協会」のサイトに移動します↓
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第2072号・2025年09月19日紙面から掲載