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2024年6月21日更新
ハンドメイドラグとの 出合い求めバザール巡る|ラグの世界⑤
イランやトルコなどの中東で手織りされるラグを取り扱う那覇市西の「Layout(レイアウト)」のバイヤー、平井香さんによるラグ買い付け旅記。今回は、イラン北西の「ナハーヴァンド」と「ハマダーン」へ。貴重となりつつある手織りラグを求めてバザールを巡った。
エピソード⑤ イランでの買い付け旅
イランの古都・イスファハンを出て次の目的地、ハマダーンまで400キロを超える長距離移動。イラン北西の地域は、初めて訪れるのでとても楽しみ。幹線道路を北上していくと景色がどんどん変わっていく。土色の岩肌が見えていた山はもこもことブロッコリーのような緑に覆われ、畑の緑色がパッチワークのように広がり、美しい。
ハマダーンのラグ店で。ハジーさん(左から2人目)や現地のコーディネーターなどと一緒に記念撮影。
年齢はバラバラだけど、家族みたいに一つのチームになってラグをセレクトした
年齢はバラバラだけど、家族みたいに一つのチームになってラグをセレクトした
ラグの柄見本
途中、ナハーヴァンドという町へ寄り道することにした。小さなバザールでラグを探して歩くが全然見つからない。なんとか見つけた1軒は、機械織りラグを主に、手織りをほんの数枚だけ端に置いているお店だった。ナハーヴァンドをはじめとするハマダーン周辺の町のラグは、ペルシャンラグのような草花のデザインが多い。織りが粗いのでエレガント過ぎず、少し力の抜けたラフな感じがあってインテリアにも取り入れやすい。
お店の人にヴィンテージラグを探していると言うと、「家の倉庫に少しあるから見ていって!」とのこと。そこで、興味深いラグを見つけた。150センチ×100センチほどの大きさで、ラグを織る際の柄見本として使っているものだ。この地域の織り手は紙の柄見本ではなく、ラグで織られた見本を今でも使っているそうだ。ラグはセレクトできなかったが、ここで彼に話を聞けてよかった。これも買い付け旅の大切な収穫の一つ。
ナハーヴァンドで見せてもらった柄見本用のラグ。「ヴィーネ」や「オルナック」と呼ばれている
いざ! ハマダーンへ
私たちが探しているのは、時を経てより柔らかい色へ変化したヴィンテージのラグ。いい雰囲気のラグがあればと思っていたが、ナハーヴァンドに暮らす人の求めるラグと私たちの求めるラグとはギャップがあるようだった。今は機械織りの簡易的なラグを使う家も多いので、町のラグ屋さんが機械織りラグを扱うのは自然なこと。この町で織られたハンドメイドラグは、ほとんどがハマダーンのバザールへと集められるようだ。
いよいよハマダーンのバザールを目指す。ヨーロッパ風の建物に囲まれた大きな広場を中心に東西南北に道が走っていて今までと違った町の雰囲気。
この町のラグ店をアテンドしてくれたのは、70歳でこの道50年の大先輩・ハジーさん。スタスタと階段を上り下りする姿はパワフル。価格交渉まで手伝ってくれて心強い。
ラグのバザールは思っていたよりも小さいが、他の地域や部族のラグも集まることが分かった。3日ほどの滞在で少しずつだけど気に入ったヴィンテージラグを集めることができた。
チャイを飲みながら、外国の人はハンドメイドラグを大事にするけど、イランの人が大切にしなかったからこんなに少なくなってしまったんだよ、とハジーさんが言った。あらゆる国の伝統工芸と呼ばれるものが同じような状況にある。外からじゃないと気が付けないことがあるなら、私にもラグに関わる愛すべき人たちと一緒にできることがあるんじゃないかと思った。
ハジーさんとの別れが寂しいが、「また必ず会いに来るからね!」と約束してハマダーンを後にした。
車窓から見たハマダーンの景色
執筆者/ひらい・かおり
ラグ専門店Layout バイヤー
那覇市西2-2-1 電話/098・975・9798
https://shop.layout.casa
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2007号・2024年06月21日紙面から掲載