特集・企画
2024年5月3日更新
[2000号特別企画]リノベなら2000万円で理想の家
今号の巻頭企画は、2000号の特別企画。建築費が高騰する中でも2000万円で理想の家づくりがかなう手法としてリノベーションに着目し、昨今の沖縄のリノベ事情についてリノベーション協議会沖縄支部に聞きました。住まいづくりの参考にしてみて!
リノベーション協議会沖縄支部会員が手がけた
2000万円前後のリノベーション事例を紹介
優先事項を整理、解体費も忘れず
資材・人件費高騰が影響
リノベーション費用は住宅ローンで賄うケースが多い。担保となる既存住宅の評価額や、月々の返済可能額との兼ね合いにもよるが、「単世帯あたりでみると、5年前は平均1200万~1400万円台だったのが、現在は1800万~2000万円台に上がっている」と德里さん。「コロナ禍をへて、リモートへの対応や家での時間を充実させたいと考える人が増えたことに加え、昨今の内装資材や人件費の高騰がその理由」だ。
そもそもリフォームとリノベーションの違いは何か? 德里さんによると「リフォームは古くなった内装材や設備類を交換し、新しくする改修工事。リノベーションとは、①設備類の配管や躯体の補修を伴う工事も含め、建物を包括的に改修し、機能や価値を高めた上で、②住み手の趣味嗜好やライフスタイルに応じた空間を創り出すこと」。おのずと費用も変わる。
ちなみに築40年の鉄筋コンクリート(RC)造2階建て住宅を2000万円でリノベーションする際で考えると、①建物内部の解体や躯体補修、インフラ整備に約770万円。キッチンのグレードアップや窓サッシの交換を含めると約1000万円。②使い勝手のいい間取りや機能的な造り付け収納、インテリア選びなど、自分好みの快適な空間づくりに充てる費用は、1000万円前後となる。
「もちろん何を優先し、どこにこだわりたいかは、施主によって変わる。限られた予算内で理想をかなえるには、建物の状態や、あと何年住み続けたいかを考慮し、優先順位をつけながら効果的にコスト配分するのが欠かせない」と鈴木さん。例えば、既存の壁床の状態が良ければ隠したり壊したりせず、新設部と上手くなじませデザイン的に見せたり、キッチンや照明など設備にこだわる分、手間のかかる造作箇所は厳選したり。プロならではの工夫が詰まった同支部のリノベーション事例も紹介しているので参考にしてほしい。
ローンを組む際の注意点として鈴木さんは、「忘れがちなのが解体費用。特に中古住宅を購入後にリノベーションを考えている場合、前述のリノベ費用の内訳まで考慮すると費用が不足することがない」とアドバイス。また中古住宅などでリノベ済みとうたわれていても、「クロスを貼り替えキッチンを対面式にするといった具合に、平均的な改修工事にとどまっている物件もあるので確認を」と話す。
登記内容も確認を
一方で沖縄特有なのが、親や親族から引き継いだ実家をリノベーションするなど相続や贈与が絡むケース。鈴木さんは「リノベ予定の物件が本人名義になっていないとか、床面積が登記簿謄本に登記されている面積と違い、土地家屋調査士に依頼して登記し直すところから始めなければならないケースも。進め方によって費用や税金が大きく変わる」と注意を促す。プランニングだけでなく、そうした交通整理や予算感も含め、相談に乗ってくれるところだと安心だ。德里さんは「協議会では会員間でそうした情報も共有している。依頼先探しの参考にしてほしい」と呼びかけた。
リノベーション協議会とは
リノベーション協議会沖縄支部の支部長、德里政俊さん(右)と、会員の鈴木良暢さん
消費者が安心して既存住宅を選べる市場をつくり、既存住宅の流通を活性化させることを目的とした団体。全国800弱の企業が参画している。沖縄支部は2019年に設立で、ことし活動5年目。設計事務所や不動産会社など県内10社が加盟中。
■問い合わせ/リノベーション協議会沖縄支部
(アーキラボラフィット/RENOBEES) TEL098-988-5128
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【Case1】 外人住宅をセカンドハウスへ/Arts&Crafts
デザインも熱対策も
改修前
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リビング。特殊な繊維シートで躯体コンクリートの補修を施した。下地パテ処理をせずシートを直接塗装することでコストを抑えた
施主の要望であったセカンドハウス&民泊としての活用を視野に、築56年の外人住宅を再生したArts&Craftsの森岡瑞穂さん。躯体補修や設備の一新など建物の状態を整えることを最優先に、内装は下地を見せるなど造り込み過ぎないことで、予算調整した。苦労したのは室内の熱環境の改善。森岡さんは「すっきりと高さのある天井は外人住宅の特徴。リビングへとつながる廊下に天井懐を設け強制換気システムを設置することで、天井付近にたまる熱気を排出。空間の広がりはそのままに室温の上昇を抑制した」と話す。
外観。外壁や屋根は補修し防水塗装。荒れていた庭や外構も整えた。「希少価値の高い沖縄ならではの建物が解体の一途をたどらないよう、所有されている方こそ補修し使い続けてほしい」と森岡さん
ガラス張りのシャワーブースや高級感のある洗面化粧台がホテルライクな雰囲気を演出する水回り
寝室も高い天井が非日常感に一役
[設計DATA]
家族構成:1人
築年数:56年
構造:鉄筋コンクリートブロック造
施工面積:102.87㎡(約31坪)
目的:セカンドハウス、将来の民泊としての活用を視野に
設計・施工:Arts&Crafts
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【Case2】 実家を改修・同居型2世帯/リノベース
造作絞り1階重点的に
改修前
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キッチン背面の壁の奥がパントリー兼夫人の書斎。左手の玄関から扉一枚で行き来可能になった。躯体の状態が良好だったため、一部は天井懐を取り払ってのびやかさを演出。造作天井は木目クロスでコストカットを図りつつ見た目にも配慮
Cさん宅は3世代8人家族。「特に1階で洗濯した衣類を屋上へ干す作業と、玄関からキッチンまでが遠く、荷物を運ぶのが大変なんです」とリノベース営業の平良和之さんは相談を受けた。そこで設計の宮城美沙紀さんは、家事室やファミリークローゼットを回遊導線で配置し、玄関近くにキッチンを移動。更にパントリーを新設し、悩みの大部分を1階で改善した。「家事が1階で完結し楽になった」と喜ばれている。1階はスケルトンにして設備・配管・内装を一新。個室のある2階は既存の壁床に上張りしコストを削減。造作は厳選し既製品も活用しながら予算内で希望を実現した。
洗面化粧台や鏡枠は造作洗面風の既製品を採用した
リビングに隣接する小上がりの和室は造作し収納力をアップ。リビングに散乱しがちな物もすっきり収められる
[設計DATA]
家族構成:両親、夫婦、子4人
築年数:26年
構造:RC造2階建て
施工面積:140㎡(約45坪)
目的:3世代2世帯が同居。効率の良い家事動線ほか
設計・施工:リノベース(平良/宮城)
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【Case3】 実家の2階を子世帯に/RENOBEES
21坪に5人 ロフト活用
改修前
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LDK。ブロック壁は高さを抑え上段は花ブロックにすることで、向こう側にある玄関からの視線は遮りつつ、奥行きや上への広がりをもたせた
要望は「実家の2階を活用し外階段を新設することで、完全分離型の2世帯への改修」。限られた予算と面積で家族5人の生活スペースを確保するため、RENOBEESの德里政俊さんが提案したのが、ベランダへの水回り増築と、既存ロフトの活用だ。「浴室はコンパクトにし、ウオークインクローゼットと直線で結んで機能的に。またロフト下になるLDKの天井が2200㍉と低いため、圧迫感が出ないよう照明はダウンライトを採用した」。無垢の木のキッチンに海外製食洗機を入れ、夫人のこだわりも反映した。
玄関横に新設したウオークインクローゼットで奥は寝室。寝室の先にはベランダの一部に増築した洗面、脱衣室兼ランドリールーム、浴室が続く。すべてが一直線につながり使い勝手のいいプライベート空間となっている
ロフト上部。転落防止には、施主が「いつかインテリアとして取り入れたかった」というアメリカンフェンスを設置
[設計DATA]
家族構成:夫婦、子3人
築年数:28年
構造:RC造2階建て
施工面積:71.43㎡(約21.6坪)※10㎡の増築含む
目的:実家2階を子世帯に
設計・施工:RENOBEES
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【Case4】 実家の2階を子世帯に/RENOBEES
贈与受け住まいに改修/㈱TEACH PLUS
改修前
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親戚から贈与された築31年の2階建てRC造を家族4人の住まいに。「リビングを広く明るくし、使い勝手良く」との要望をかなえたカギは大きく三つ。①懐を取り払い天井高を上げて開放感アップ。②カウンターや和室の小上がりは造作し収納力を上げたほか、キッチンはタイルを貼り付け見せ場として演出。その分③足元は既存床の上から塩ビタイルを貼ってコスト削減するなど工夫した。TEACH PLUSの鈴木良暢さんは「玄関とリビングの間には縦格子の木引き戸を設置。玄関に明るさと広がりを持たせ、見た目にも配慮した」と話した。
こだわりのキッチンカウンター。不要な際は折り畳めば室内は広々。棚下にはロボット掃除機の収納スペースも
小上がりの畳間は造作し収納力アップ
隣接する個室の引き戸は半透明ガラスの格子戸でプライバシーを確保しつつ気配は伝わる作りに
[設計DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
築年数:31年
構造:RC造2階建て
施工面積:78.62㎡(約23.7坪)
目的:贈与物件を住居用に改修
設計・施工:㈱TEACH PLUS
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2000号・2024年05月03日紙面から掲載