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2023年7月28日更新
[専門技術者育てる工業高校③]美来工科土木工学科(沖縄市)|企業と連携し 地元技術者を育成
ものづくりの知識と技術を磨ける工業高校には、さまざまな学科がある。今回は、インフラ整備の技術者を目指す「土木科」、配管や空調に関わる「設備科」、家具や内装を学ぶ「インテリア科」を取り上げる。それぞれの科がある5校に授業内容や進路状況を聞いた。
企業と連携し 地元技術者を育成
美来工科高校(土木工学科)は
◆中部出身者が多く、女子も毎年のように入学している。
◆卒業後の進路は、県内の土木系企業に就職する人が8割以上。
◆学校と企業が連携して教育する「デュアルシステム」により、内面を育てつつ、実際の現場を知る機会を充実させている。
※定員は40人。オープンキャンパスは10月19日(木)を予定。
近年の進路状況/就職先は沖縄総合事務局、沖縄県、沖縄市役所、㈱屋部土建、㈱大城組、㈱仲本工業、西日本高速道路総合サービス沖縄㈱、㈱国建、㈱ホープ設計、㈱交通建設(東京)、奥村組土木興業㈱(大阪)など。進学先は琉球大学、金沢工業大学など。
「次世代の街づくりを担うEARTHプランナー」をキャッチコピーに掲げる美来工科高校の土木工学科。山城久富先生は「地球を開拓し、ダムや橋、道路など、より住みやすい街をつくるための技術者を育てています」と話す。そのため卒業後は8割以上が就職し、ほとんどが県内の土木系企業に進む。
中部出身の生徒が多いが、北部から通う生徒もいる。女子も毎年のように入学しており、昨年には、建設業界で働く女性技術者などで構成する「teamけんせつ美ら小町」のメンバーと、同科の女子生徒との意見交換会も開いた。「トイレが男女別になっているなど、実際に働く環境について知る機会となった」
また、同校のバスケットボール部は、県高校総体で2連覇中の強豪校。「部活がしたくて入ってくる子もいます」。
心構えや誇りを身に付ける
学校と企業が連携して教育する「デュアルシステム」の研究指定校となっている同校。「土木工学科では、社会に出る上での心構えや、仕事に対する誇りを持てるように精神面を育てる授業を実施している。一方、企業側には、生徒が現場の動きや流れを理解できるよう、インターンシップよりも長期的な『職場実習』を受け入れてもらう予定」と山城先生。生徒の評価を企業が行うことも検討している。
資格取得については、先生たちが放課後に開く講座でサポート。例えば「2級土木施工管理技士補」は試験の2カ月ほど前から毎日、より難関の「測量士補」については9月~翌年5月くらいまで、それぞれ講座が開かれ、合格を目指す。
わが校のココがイイ!
土木工学科2年(左から)
金城誠之介さん、デラクルズ・ショーン・パトリック・ブログさん、島田拳吾さん
◆美来工科の土木工学科を選んだ理由
(島田)親が中部工業土木科(現・美来工科土木工学科)の卒業生で、仕事に役立つ資格がたくさん取れると聞いた。
◆大変なこと、面白いこと
(ショーン)器械の名前や専門用語は難しいけど、初めて知ることばかりで楽しい。特に、器械で測定したり計算したりして、地盤の高さを求める測量実習が楽しい。
(金城)実習は運動場など外に出ることが多いので暑くて大変。でも普通高校とは違って、専門的な知識や技術が身につくし、資格も取れる。
(島田)放課後、資格の勉強をする時に、みんなで教え合いながら取り組めるのがいい。座学の授業で教わったことを、器械を使って実際に測量したり実験するので、理解もしやすい。
◆将来の夢
(金城)給料が高く、工事のスケールも大きいので、卒業後は県外の企業に挑戦したい。
(ショーン)大学で専門性を高めた上で、測量関係の仕事に就きたい。そのために、「測量士補」という国家資格取得に向けて、授業や放課後の講習を頑張っている。
県内企業で活躍する卒業生
西日本高速道路総合サービス沖縄㈱に就職した桑江太輝さん(2022年卒)
美来工科で土木を学び、構造物に興味を持ったことが就職につながった。今は高速道路の維持管理をする会社で損傷のチェックなどをしている。学校で学んだ専門用語は仕事でも使うので、先輩の話もスムーズに理解できる。
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撮影・取材/東江菜穂、出嶋佳祐、市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1960号・2023年7月28日紙面から掲載