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2022年10月7日更新

[沖縄]フクハラ君 沖縄建築を学びなおしなさい[16]|株式会社エー・アール・ジー 会長 国吉真正 さん(75)

本連載は、沖縄建築について学ぶべく、一級建築士である普久原朝充さんが、県内で活躍してきた先輩建築士などに話を聞きリポートする。今回は㈱エー・アール・ジー会長の国吉真正さん。交流を促す「社会的な健康」を意識しながら、浦添市内の中学校をはじめ、さまざまな公共施設や住宅などの設計を手掛けた。

株式会社エー・アール・ジー 会長 国吉真正 さん(75)
株式会社エー・アール・ジー 会長
国吉真正 さん(75)


くによし・しんせい/1947年、那覇市出身。64年、沖縄工業高校建築科卒業。同年、宮平建築設計事務所(現:宮平設計)入社。72年、佐藤武夫設計事務所(現:佐藤総合計画)入社。74年、クニヨシ設計を設立。84年、㈱エー・アール・ジーに組織変更。97年「沖縄県国際交流情報センター」設計競技最優秀、2019年「楚辺のコートハウス」第5回沖縄建築賞住宅建築部門奨励賞など受賞歴多数。



安全で快適、交流の機会もつくる
社会的に健康な建築を

若い頃の国吉真正さんは、苦学生だったという。中学生の頃よりアルバイトをしながらの学生生活を送った。当時、国吉さんが通っていた寄宮中学校の前には、製図で使用するT定規を持って通学する沖縄工業高校生が多かったこともあり、建築士を目指そうと心に決めた。

 
建築漬けの東京生活

沖縄工業高校入学後に、インターンシップで宮平建築設計事務所(現在の宮平設計)を訪れた。事務所内ではちょうど旧那覇市庁舎の実施設計がなされている最中で、そのプロジェクトを手伝わせてもらったことが建築に対する熱意にもつながり、卒業設計に生かすことができ、卒業後、宮平建築設計事務所に勤めることとなった。

数年の実務経験を重ねるうちに、本土で建築を学ぶ意欲に駆られた。国建の国場幸房氏が設計したムーンビーチホテルなどの建築に触発されたという。

家族に引き留められることもあったが1年間に限っての本土行きを認められ、東京の佐藤武夫設計事務所(現在の佐藤総合計画)で働くこととなった。昼は設計事務所で働き、夜は吉阪隆正氏のU建築研究室で設計コンペの作業に参加したり、パースを学ぶために夜学に通ったりするなどの生活だった。休む暇など無い。密度の濃い1年間だったという。


海外視察で人づくり

沖縄に戻り、1年ほど働いた後に独立してクニヨシ設計を設立した。1984年、組織化にあたって事務所名を株式会社エー・アール・ジーに改めた。

「とりわけ事務所では、建築を通しての“人づくり”を意識しています。数年勤めた若手には海外への建築視察の機会を設けたり、講師を招いての社内研修を行うなどもしています」

さらに「〈健康〉な建築を目指しています」という。「ここでいう〈健康〉は、47年に日本で採択された世界保健機関のWHO憲章序文における〈健康〉の定義を念頭にしています」。日本WHO協会の訳では「健康とは、肉体的(病気でないとか体力がある)なことだけではなく、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます」とある。国吉さんは「つまり、危険や不快さを感じることのない“肉体的”“精神的”に健康な建築というだけでなく、人々が相互に関わり合う機会を奪うことのない“社会的”にも健康な建築を目標にしているということです」。

エー・アール・ジーが設計に関わった神森中学校や浦添中学校は、〈健康〉な建築を目指したことがわかる好事例といえるだろう。学校と地域社会とが接する部分には、花壇やベンチなどのポケットパークのような空間があり、社会的な健康への配慮を読み取ることができる。

「建築は、まちづくりの一環です。私たちは建物を建てることで地域の景観づくりに参加しているのです」とその気概を語ってくれた。安全で快適なだけではなく、社会的に満たされた建築を考えるキッカケをいただいた。



神森中学校(2002年、浦添市)
1999年の指名設計競技で最優秀賞を受賞して建築された中学校。国吉さんの「健康」の理念が生かされた計画。エー・アール・ジーの事務所から程近いこともあり、現在でも地域清掃などで赴いたりするとのこと。2003年に第28回建築士事務所全国大会建築作品表彰奨励賞を受賞。
 
沖縄の伝統住居の屋敷囲いのようにヒンプンや中庭を持ったエントランス。入り口の広場にはアシャギのような東屋(あずまや)がある
沖縄の伝統住居の屋敷囲いのようにヒンプンや中庭を持ったエントランス。入り口の広場にはアシャギのような東屋(あずまや)がある

学校と地域との境界部には、学生だけでなく付近を通る地域の人々もひと休みできるようベンチ等が設けられている学校と地域との境界部には、学生だけでなく付近を通る地域の人々もひと休みできるようベンチ等が設けられている

通学路となる学校敷地の沿道部には植栽帯が設けられており、花々が咲いている通学路となる学校敷地の沿道部には植栽帯が設けられており、花々が咲いている



浦添中学校(2004年、浦添市)
浦添城跡の麓に位置する中学校。かつての浦添グスクに向かう街道沿いで、敷地周辺には浦添間切番所跡や龍福寺跡などの由緒ある史跡がある。歴史的背景を意識させる門構えや屋根構成、沿道の緑化計画など地域への配慮が感じられる。2001年の指名設計競技で最優秀賞を受賞して建築された。06年には日本建築士事務所協会連合会建築賞一般部門奨励賞を受賞している。

複数の赤瓦屋根が一つの集落のように並ぶ。校門前の広場には多くの草花が育ち、学生だけでなく地域の人々を迎え入れるデザインになっている
複数の赤瓦屋根が一つの集落のように並ぶ。校門前の広場には多くの草花が育ち、学生だけでなく地域の人々を迎え入れるデザインになっている

沖縄の強い直射光を遮り、涼やかな自然の風を取り入れやすいようコンクリートによるブリーズソレイユ(フランス語で日よけ)や木ルーバーが、ベランダとテラス部分を覆っている沖縄の強い直射光を遮り、涼やかな自然の風を取り入れやすいようコンクリートによるブリーズソレイユ(フランス語で日よけ)や木ルーバーが、ベランダとテラス部分を覆っている

裏門側も沿道沿いにはポケットパークのように木陰やベンチがあり、地域の人々も休憩できる空間が設けられている裏門側も沿道沿いにはポケットパークのように木陰やベンチがあり、地域の人々も休憩できる空間が設けられている



高原の家(2020年、沖縄市)
沖縄市にある住宅。沿道の騒音やプライバシー配慮のための壁を設けつつも、角地側にゆとりをもたせた植栽空間が設けられている。
沖縄市にある住宅。沿道の騒音やプライバシー配慮のための壁を設けつつも、角地側にゆとりをもたせた植栽空間が設けられている。

一様なコンクリート壁面が無地のキャンバスのようになって、その前面にある植栽が際立っている
一様なコンクリート壁面が無地のキャンバスのようになって、その前面にある植栽が際立っている




沖縄の風景を絵画に
『2022いろどりの風景calendar 画・国吉真正』より「セメント瓦の風景」というタイトルの水彩画。柔らかく温かみのある日常の景色が切り取られている『2022いろどりの風景calendar 画・国吉真正』より「セメント瓦の風景」というタイトルの水彩画。柔らかく温かみのある日常の景色が切り取られている

事務所を訪れインタビューをした折、国吉さん自作の絵画を収めたカレンダーをいただいた。本土でスケッチパースを学んで以来、スケッチを趣味のひとつとしているという。カレンダーに収められている絵画は、どれも沖縄の日常風景を丁寧に切りとった温かみのある作風だ。

期限付きだったという本土での濃密な経験が、その後も息づいているような気がした。


[文・写真] 普久原朝充
ふくはら・ときみつ/1979年、那覇市生まれ。琉球大学環境建設工学科卒。アトリエNOA勤務の一級建築士。『沖縄島建築 建物と暮らしの記憶と記録』(トゥーバージンズ)を建築監修。

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1918号・2022年10月7日紙面から掲載

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