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2022年8月19日更新

[沖縄]花の国際交流と風景づくり 熱帯花木の導入|街中のみどり⑤

文/武田慶信、福村俊治 写真/福村俊治

 植 物は気候風土によって種類が異なる。だから日本で唯一の亜熱帯地域である沖縄の樹木や草花は、日本本土とは大きく異なる。本土から訪れた観光客は、ガジュマルや鮮やかな花の咲く花木を見て驚く。しかし同じような気候風土の東南アジアやインド、ハワイ、中・南米には、沖縄で見慣れた樹木のほかに珍しい樹木がまだまだある。

戦前戦後、多くのウチナーンチュが海外に移住した。そんな縁もあり、1987年、オリオンビールは創立30周年記念事業として、県民の財産として後世に残せる「沖縄の風景づくり・花の国際交流」を行った。沖縄から使節団を組み、ウチナーンチュが移住した南米4カ国とハワイを訪問。花木の種子の交換を通してお互いの交流や親睦を図るとともに、県内で熱帯花木による「緑豊かな郷土づくり」を目指した。


植物学者の助言を受けて計画

その事業の事務局に武田も加わり、植物の種苗を移入する際の植物防疫などの手続きや沖縄に適する花木のことを詳しく調べた。

武田は、その2~3年前に沖縄の緑について調査に来られたブラジルの橋本梧郎先生(1913~2008)と懇意にしていた。

先生は静岡出身だが、ブラジルの農学校を出た後もブラジルで植物採集を続け、十数万という世界最多の標本を所蔵していた。またサンパウロ博物研究会を主宰するなど世界的に著名な植物学者だった。その先生のアドバイスもいただきながら花の国際交流ツアー計画を進めた。


130万本分の種子が寄贈

総勢260人の国際交流ツアーが、ボリビア・ペルー・アルゼンチン・ブラジル、そしてハワイを訪れた。訪問した5カ国の県人会からは、トックリキワタ・イペー・カエンボク・ゴールデンシャワー・ジャカランダ・ホウオウボクなど、それぞれの国を代表する花木の種子(およそ130万本分)が寄贈され、沖縄からは琉球原産のヒカンザクラの種子を贈呈した。琉舞を披露しながら互いの親睦を深め合う交流会はどこも大成功だった。ブラジルではお世話になった橋本先生とも再会し、熱帯花木の情報をいろいろご指導いただいた。

帰国後、それらの種子から苗木を育て、県下全域に配布植栽をする事業は15年も続いた。それから三十数年たち、それらの花木は大きく育ち、今や沖縄の見慣れた風景になっている。今年の秋に開催されるウチナーンチュ大会で訪れる県系2世や3世の人々も、自国の花木を見て、沖縄との強い絆を感じるに違いない。


ゴールデンシャワー(浦添警察署)
ゴールデンシャワー(浦添警察署)

ホウオウボク(海洋博公園)
ホウオウボク(海洋博公園)

トックリキワタ(開南バス停)
トックリキワタ(開南バス停)

ヒカンザクラ(八重岳)
ヒカンザクラ(八重岳)
 
イペー(那覇市安謝)
イペー(那覇市安謝)
 
イペー(浦添市当山)
イペー(浦添市当山)

カエンボク(浦添市社会福祉センター)
カエンボク(浦添市社会福祉センター)



武田慶信
執筆者
たけだ・よしのぶ/1943年、奄美大島生まれ。亜熱帯花木造園家。82年、県緑化市民センター設立参画。87年、オリオンビール花の国際交流熱帯花木130万本育苗配布参画など。

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1911号・2022年月19
日紙面から掲載

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