2022年7月15日更新
[沖縄]駐車場緑化のすすめ 都市の緑の再生をめざして|街中のみどり④
文/吉田朝啓、福村俊治 写真/福村俊治
沖 縄は、元々青い海に浮かぶ緑豊かな美しい南国の島だった。しかし、戦災に次ぐ戦後復興と復帰後の経済振興によって、島の様相は大きく変わった。業務地区や宅地の不足のために遠浅の美しい海を埋め立て、原野や農地の緑を剥ぎとって都市がどんどん拡大した。
その結果、ヒートアイランドや渇水、土砂災害に悩まされ、人は戸外に出にくくなった。コンクリートの建物で埋め尽くされ、アスファルトで空き地や道路が固められた現在の街に少しでも自然や緑地を増やし、快適な街をつくる努力をしなければならない。
その結果、ヒートアイランドや渇水、土砂災害に悩まされ、人は戸外に出にくくなった。コンクリートの建物で埋め尽くされ、アスファルトで空き地や道路が固められた現在の街に少しでも自然や緑地を増やし、快適な街をつくる努力をしなければならない。
車社会での緑化の工夫
沖縄は車社会である。鉄軌道がないために誰もが日常的に通勤や移動に車を使う。人口145万人に対して自家用車が約84万台ある。緑の庭をつぶして駐車場にしたり、車に1階を占拠され2階が住まいになることも多い。
身近に商店街やマチヤグヮーがなくなり、車で郊外の大型スーパーやコンビニに買い物に行くのが一般的になった。しかし、どこの駐車場も緑陰のない炎天下の駐車場である。
そこに大きな木陰を作る樹木があれば、車も熱くならず無味乾燥で画一的な店舗外観や景観も改善できるのではないだろうか。駐車場緑化というと、地表面に緑化ブロックを使って芝生などを植えることが推奨されているが、温暖な沖縄では雑草の成長が早く、しかも車の出入りの多いところでは路面が痛むことが多い。地元の気候風土に合う駐車場緑化を採用すべきだ。
緑の街づくり
また、公園や公共施設の敷地などももっと積極的に緑陰を増やし、地域住民にくつろぐ場を提供すべきである。葉っぱが落ちる、緑陰で暗くなる、死角ができ防犯上問題となると心配する人もいるが、年中温暖で心地よい風が吹く沖縄にとっては、戸外の緑陰の空間は大切なコミュニティーをつくる沖縄らしい空間である。
大きな緑陰をつくる樹木としてコバテイシ(方言名:クワディサー)やガジュマルなどがある。所々にホウオウボクやイペーなどの花木を植えれば個性的で魅力ある場ができ、既存市街地の緑化再生のきっかけとなる。ハワイやシンガポールのように緑あふれる美しい沖縄にしたい。
ハワイ・ホノルルのアラモアナにある緑化された駐車場
ハワイ・ワイキキの緑化された駐車場
那覇市・泊ふ頭隣の泊緑地。コバテイシの緑陰が涼しげ
沖縄県庁本庁舎の中庭。緑陰もなく人影もない
沖縄自動車道伊芸サービスエリアの駐車場
沖縄本島にあるショッピングセンターの広い駐車場
執筆者
よしだ・ちょうけい/1931年生まれ。那覇保健所や琉球衛生研究所、中央保健所などに勤め、県内の公衆衛生に寄与。NPO法人首里まちづくり研究会の顧問を務めるなど、地元首里の緑化に励む。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1906号・2022年7月15日紙面から掲載