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2022年8月12日更新

[沖縄]美しい風景に心潤う|琉球風水からひもとく Lily's スペースジャーニー⑤

沖縄の国土を上空から見ると、緑豊かな山並みが南北に1本の線でつながっているのをとらえることができます。王朝時代の三司官、蔡温は、琉球の国土を走る山脈を、一つの有機体ととらえました。国頭府、中頭府、島尻府の三府全体で一体の龍と見立て、生き生きとした龍脈の存在が国家の盛衰に関わると伝えています(『三府龍脉碑記』1750年)。

自然に感謝して大切にする精神文化

美しい風景に心潤う

本島最北端の聖地、安須森御嶽から南に向かって龍が走り去るように山脈が連なり、この龍脈が進んだ先にある西原、島尻の丘陵が首里城を守る玄武(※1)となります。これは首里城の風水鑑定報告書(『球陽』1713年)にも書かれています。北から南へと本島を縦断した龍脈がたどり着く、南の最終地点に斎場御嶽があります。ここで、氣は留まります。

斎場御嶽は、西を背に東を向いており、神の島である久高島を臨みます。慶良間諸島が朱雀(※1)となって前方から首里城を守るように、久高島が朱雀となって前方から斎場御嶽を守っています。端正に形の整った美しい風景を前方に臨むことは、幸運を象徴します。

風水は、人間の意識というスクリーンを通して映る、自然の象徴性をとらえようとした学問です。自然の美しい風景を探し求め、感謝して、大切にする生き方で、あなたの心も潤います。

※1)中国伝説上の神獣、四神の一つ。
 

神世界人間界つなぐ


風水的に良い氣の留まる場所は、聖地として大切にされているところが多い。ここは、斎場御嶽の一番奥にある三角岩。この岩を抜けると最も格の高い神域、三庫理(サングーイ)に入る。左手の東側には久高島を臨む。右手の西側にある岩の上部は「チョウノハナ」と呼ばれる拝所で、「氣(霊力)の端」という意味をもつ。東のかなたから訪れたニライカナイ神は、久高島を経由して斎場御嶽のチョウノハナに飛来し、垂直に下降して地上に降り立つ。そして、三角岩を通って人間界に出現されると考えられた(※2)。

斎場御嶽は、国王みずから参拝する国家祭祀(さいし)ルート中でも最高の聖地として位置づけられた。長い年月にわたり、自然の恵みに対する感謝の祈りがささげられてきた。首里城から太陽神信仰と関わりの深い聖地を巡礼する「東御廻り(あがりうまーい)」は、琉球の精神文化の象徴であり、今もなお引き継がれている。(写真:掲載許可 南城市教育委員会)

※2)「神と村」仲松弥秀著(1990)梟社



前方に開放感


三角岩を通り抜けて左側(東)に、斎場御嶽の朱雀、久高島を臨む。風水では、背中が亀の甲羅のような硬いものによって安全に守られ、前方が開けて美しい風景が広がることを吉相と考える。背後が守られれば安心し、前方に開放感がある空間は、人が無意識レベルで快適だと感じる。現在、三庫理入り口より奥は立ち入り制限があり、一般の見学はできない。入り口の御門口(ウジョーグチ)近くにある、久高島遥拝所から久高島を臨むことができる。(写真:掲載許可 南城市教育委員会)



風水目線で見た沖縄


沖縄本島中部の上空。起伏のある山脈が南北に伸びているのを見ることができる。王朝時代の風水師が飛行機に乗り、グーグルアースを使うことができたら、どれだけ感動するだろうか。風水の視点から、沖縄本島を眺めてみると新しい世界が見えてくる。琉球の龍が、この先の未来、どうしたら元気に幸せに生きていけるのか。龍の幸せを考えることで、私たち人間が、自然と調和して幸せに生きるためのヒントが見つかるかもしれない。



執筆者 とうどう・りり(Lily)/建築士と連携し、新築住宅の間取りからインテリアまでトータルで風水設計を行う。王朝時代の伝統風水術を現代住宅に適用するため、風水空間プロデュースの手法を体系化した。ロンジェ®琉球風水アカデミー学長。
執筆者
とうどう・りり(Lily)/建築士と連携し、新築住宅の間取りからインテリアまでトータルで風水設計を行う。王朝時代の伝統風水術を現代住宅に適用するため、風水空間プロデュースの手法を体系化した。ロンジェ®琉球風水アカデミー学長。


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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1910号・2022年8月12日紙面から掲載

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