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2022年4月8日更新
[沖縄]美意識から生まれた庭園都市|琉球風水からひもとく Lily's スペースジャーニー①
新しい道路の開通や、大型の店舗、集合住宅など、さまざまな施設ができたことで私たちの生活は便利になりました。一方で、自然はどんどんなくなり、街の風景も大きく変わりました。街の機能性も大切ですが、自然の美しい風景を見て暮らすことは、感性を育み、心豊かに生きるために大切なことです。誰もが美しい景色の中で生活するためには、どうすればよいでしょうか? 美しい庭園都市を実際につくり上げた、琉球王朝時代の風水思想から学んでみましょう。
首里城の風水を古来の解説書からひもとく
当時は、「風水が国家の盛衰に関わるほど重要である」と考えられていました。水田の開発や市の開催など、経済活動によって風水的美観が損なわれる時、自然の美観維持が優先されました。琉球風水には「自然と人間が調和しながら共存を目指す」という価値観が軸にあります。風水思想がつくり出す都市景観には、強風から守られるなど快適な居住環境をつくる機能性もありますが、美観を維持する役割もありました。
あなたの心が豊かになる街の風景とは、どんな風景ですか。住み続けたい街の風景を考えてみましょう。
琉球風水師の東道里璃さんが、首里城、集落、琉球の古民家など、琉球風水の視点から沖縄のさまざまな空間を旅するようにひもとくコラム。自然と調和した持続可能で豊かな世界を考える上で、琉球の先人の思いを現代の空間設計や暮らしに表現するヒントに。
首里城の風水鑑定報告書によれば、首里城はパワースポットの理想的な地形の一つ「四神相応の地」に建てられました。山や丘陵、川、海、島などの豊かな自然で四方が囲まれ、守られていました。一方、「狭くて傾いた土地の上にある」という風水的な欠点についても書かれています。首里城が王都であるためには、この欠点を補うために、王城を守る自然の恵みが豊富にあることが条件でした。(写真:国営沖縄記念公園・首里城公園)
森林率が30%を切ると、人は不快に感じると言われています。現在の那覇市の森林率は「0.5%」。SDGs(持続可能な開発目標)の意識調査によると、住み続けられるまちづくりを目指す「目標11」を意識する割合は増えています。経済的な発展は数値化できますが、感性的な価値は数値化できません。Quality of Life(生活の質)の高い暮らしの実現には、美意識を大切にした街づくりが大切ですね。首里城公園の見学デッキから王城の風水を体感できます。現在の首里城の風水景観を、ぜひ感じてみてください。(撮影協力:国営沖縄記念公園・首里城公園)
執筆者
とうどう・りり(Lily)/建築士と連携し、新築住宅の間取りからインテリアまでトータルで風水設計を行う。王朝時代の伝統風水術を現代住宅に適用するため、風水空間プロデュースの手法を体系化した。ロンジェ®琉球風水アカデミー学長。
これまでの記事はこちらから。
美意識から生まれた庭園都市
日本を代表する美学者の柳宗悦は、戦前に古都首里を訪れ「真に活きた庭園の都市」と絶賛しました。かつての美しい首里の都市景観は、偶然につくり出されたものではありません。そこには、琉球王国の都市計画理念とも言える、首里城の風水鑑定報告書(1713年)の存在があります。当時は、「風水が国家の盛衰に関わるほど重要である」と考えられていました。水田の開発や市の開催など、経済活動によって風水的美観が損なわれる時、自然の美観維持が優先されました。琉球風水には「自然と人間が調和しながら共存を目指す」という価値観が軸にあります。風水思想がつくり出す都市景観には、強風から守られるなど快適な居住環境をつくる機能性もありますが、美観を維持する役割もありました。
あなたの心が豊かになる街の風景とは、どんな風景ですか。住み続けたい街の風景を考えてみましょう。
琉球風水師の東道里璃さんが、首里城、集落、琉球の古民家など、琉球風水の視点から沖縄のさまざまな空間を旅するようにひもとくコラム。自然と調和した持続可能で豊かな世界を考える上で、琉球の先人の思いを現代の空間設計や暮らしに表現するヒントに。
理想的な地形
首里城の風水鑑定報告書によれば、首里城はパワースポットの理想的な地形の一つ「四神相応の地」に建てられました。山や丘陵、川、海、島などの豊かな自然で四方が囲まれ、守られていました。一方、「狭くて傾いた土地の上にある」という風水的な欠点についても書かれています。首里城が王都であるためには、この欠点を補うために、王城を守る自然の恵みが豊富にあることが条件でした。(写真:国営沖縄記念公園・首里城公園)
景観のメンテナンス法 具体的に
首里城の風水鑑定報告書は、琉球王府の歴史編さん書『球陽』=写真=の第十巻に収められています。風水の法に従った景観のメンテナンスの方法も具体的に書かれています。王城の風水を守る役割を持つ「弁ケ嶽」など風水的に重要な場所は、木の伐採を禁じ活力のある森の状態を維持するよう求めました。一方、山や樹木がなく氣が漏れ出る場所は、樹木を植えて氣が漏れ出るのを防ぐよう述べています。王城の風水を保全するためのルールは、琉球処分が行われる1879年まで王府の政策の中で守られてきました。
王城の風水景観を体感
森林率が30%を切ると、人は不快に感じると言われています。現在の那覇市の森林率は「0.5%」。SDGs(持続可能な開発目標)の意識調査によると、住み続けられるまちづくりを目指す「目標11」を意識する割合は増えています。経済的な発展は数値化できますが、感性的な価値は数値化できません。Quality of Life(生活の質)の高い暮らしの実現には、美意識を大切にした街づくりが大切ですね。首里城公園の見学デッキから王城の風水を体感できます。現在の首里城の風水景観を、ぜひ感じてみてください。(撮影協力:国営沖縄記念公園・首里城公園)執筆者
とうどう・りり(Lily)/建築士と連携し、新築住宅の間取りからインテリアまでトータルで風水設計を行う。王朝時代の伝統風水術を現代住宅に適用するため、風水空間プロデュースの手法を体系化した。ロンジェ®琉球風水アカデミー学長。
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1892号・2022年4月8日紙面から掲載