2024年4月26日更新
DXで空調や生産設備、 設定温度の適正化|省エネ診断⑦
文・写真/名嘉光男(NPO法人 沖縄県環境管理技術センター)
DXで空調や生産設備、設定温度の適正化
中小企業のエネルギー使用状況を調査し、省エネの工夫を提案する「省エネお助け隊」。県内でお助け隊として活動するNPO法人・沖縄県環境管理技術センターの名嘉光男さんが、実際の調査結果を基に省エネのヒントを紹介する。
今回は、三倉食品の沖縄そば工場の省エネ診断事例
今回は、三倉食品の沖縄そば工場の省エネ診断事例
沖縄そばなどを製造する食品メーカー(株)三倉食品の沖縄そば製造工場を診断
◆工場の現状
事務所内の照明はLED。空調は業務用のパッケージエアコンと住宅用のルームエアコンが混在
DXで生産ラインやエネルギーの見える化をすすめている
DXで見える化
今回は(株)三倉食品の沖縄そば製造工場の診断です。沖縄そばの製造では、加熱や冷却、冷蔵保存、廃水処理など、エネルギー消費の多い機器類が多数、稼働しています。
また沖縄そばに限らず食品工場では、衛生管理の徹底、製品の保存義務などがあります。さらに、最近の働き方改革、人材不足による生産活動への影響など課題が山積みです。
そのような状況を改善するために、本工場ではDX(デジタルトランスフォーメンション)を導入し、先進的な取り組みで成果を上げています。DXにより生産体制の「見える化」をし、生産性の向上、省エネ、意識改革などを実現しています。なお、DXの導入には「DX促進支援補助金」を活用しています。
空調、蔵内温度の適正化
本事業所では、日頃から省エネ活動を行っていますが、新たな手法や知見を得たいと、省エネ診断の依頼がありました。
空調システムは、ビル用マルチエアコンとパッケージエアコン、さらに家庭用のルームエアコンによる個別空調方式です。照明設備のLED化はおおむね済んでいました。トイレには人感センサーを設置し、きめ細かく省エネ活動をしていました。電力の有効活用とコスト抑制を行う「デマンド監視装置」は設置されていましたが、現在は機能していませんでした。
加熱工程では、エネルギー効率の良いヒートポンプ給湯機で予熱し、加熱装置に給湯していました。
本事業所で使用しているエネルギーは電力(約72%)、A重油(約28%)、です。電力消費量の削減が主な省エネのターゲットになります。
診断の結果、空調設定温度の適正化や室内機のフィルター清掃のほか、冷蔵庫・冷凍庫内温度の適正化などを提案しました。提案事項の実施による予想削減金額は年間で90万4000円です。
◆省エネ診断による提案事項
運用改善
①空調設定温度の適正化
②室内機のフィルター清掃(室外機フィン洗浄含む)
③冷蔵庫・冷凍庫内温度の適正化
④排水処理設備の間欠運転・台数制御
設備投資による改善
⑤蒸気配管の保温をする設備の等級
提案事項の実施による予想電力削減量は24,298kWh/年、削減金額は90万4千円/年の見込み。
省エネ診断の補助事業(中小企業向け)
事業所のエネルギー使用状況を把握し、省エネできる項目の洗い出し、改善策について提案するのが省エネお助け隊による「省エネ診断」。中小企業は国の補助(地域プラットフォーム構築事業)により1割負担で診断を受けられる。診断は6640円~(税抜き)。詳細は「省エネお助け隊ポータル」で検索。
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執筆者
なか・みつお/NPO法人沖縄県環境管理技術センター理事長、エネルギー管理士、一級管工事施工管理技士。電話=098・853・3739
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1999号・2024年4月26日紙面から掲載